第10話 暴食反転
―― ランスの家 ――
「ふう、ただいまぁ。リルガちゃんも疲れたでしょ」
──ぼふんっ!
「……少しだけ」
「ごめんなさいね、貴族を追い込むためには結構準備が必要なのよね。
でもこれでリルガちゃんも本当に自由に出来るわね」
「……自由?」
「ええ、そうよ。リルガちゃん、腕に紋章があるでしょ」
「……これ?」
『ああ、奴隷紋を解除してあげるんですね』
(そうよ、明日、何かあればリルガちゃんを頼むわね)
『かしこまりました。マスター』
「うん、それは奴隷紋といってリルガちゃんが奴隷になっているって証なの。
本来、天狐族や龍族等の個体の少ない希少種は奴隷にしてはいけないって古の契約があるんだけど、残念ながら契約を反故している人族が少なからずいるのよ。
その一人がヘッチョンだったわけ」
「……古の契約?」
「神々のルール、同じ種族間でしか奴隷契約はしてはならないってのがあったんだけど、人族の頭の悪い学者が『同じ種族』には亜人(人の姿になれる種族)も入るんじゃね? 気づいた俺、頭良くね? って言い出して……それ以来、人族は都合の良い解釈をしているのよ。
神々も契約を破ったとしても罰則を与えるわけではないから学者が調子に乗っちゃって……、リルガちゃん、ごめんね」
「……大丈夫」
「それでね、奴隷紋は呪いみたいなもので、一度でも所有者を決められてしまうと特別な魔法がないと解除も出来ないし、所有者を変更することもできないの。
だけど、私の能力を使えばリルガちゃんを自由にできるのよ」
「……危険?」
「んー、大丈夫よ。おネエさんに任せなさい!」
「……お願い」
「……じゃあ、リルガちゃん、私の眼を見て。【節制眼】……」
ランスの瞳の色が黄色く染まり、リルガはその眼から視線を外せなくなった。
見つめあう二人。
「……、これはなかなか。うーん、可愛い食べちゃいたい♪」
『マスター、意味が変わってますよ』
(冗談よ、それにしても奴隷紋は喰いがいがあるわね。うっぷ!)
「……、ランス大丈夫じゃないよ!?」
奴隷紋が薄くなるにつれ、ランスがヘッチョンよりも膨れ上がっていく。
『ランス・デラックス!』
(ぜんぜん面白くないわよ、あんたもう少し頑張んなさいよ)
「ふぅ、ご馳走様でした。あー、白飯喰いたい。
あっ、リルガちゃん、ごめんねぇ、あたしちょっと夜の巷を徘徊してくるから先に寝ててちょうだい」
──ぐぅ~♪
「あー、腹へった……」
「……ありがとう、お休み」
「んもう、どうせこんなことぐらいしか出来ないんだからいいのよ」
黄色い髪の毛を団子にして、どすんどすんと歩くランスの足音を聞きながらリルガは眠りにつくのであった。
ちなみに、夜の巷にあったお店の食材は根こそぎランスが美味しく召し上がりました。




