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第五章 〜十二文字の問題〜

第五章です。新しい謎が出て来ます。また楽しんでください。

カーテンを開けるとこれからの暖かくなる季節を思わせる太陽が照っていた。降りた陽光は地面に反射し、アスファルトを黒々とさせていた。

ヒロは目を細めて机の方へ視線を落とし、例の宿題を鞄に詰めた。その後ジャージから制服に着替えて、荷物を持って階下のダイニングへ向かった。


食卓にはすでに朝ご飯が並んでいた。

父はすでに仕事場へ出ていた。リンは、高校より少し早く始まる小学校の為に、もう朝ご飯を食べ終えようとしていた。

ヒロが顔を洗って席へ着く頃には

「行ってきます。」

と家を出ていた。

ヒロはそれを横目に黙々とご飯を食べきり、「ごちそうさん」と呟いてそのまま外へ出た。


外は過ぎた冬を忘れさせるほどに暖かく、自然と気分も良くなっていた。正門に入るところで

「あ、獅子目くんじゃない。」

と声がした。そちらの方を向くと確かD組の吉井美紅が駆け寄ってきた。

「おはよう。いつもこの時間なの?」

「ああ、そうだね。だいたい変わらないよ。」

と、ヒロは言いながら気持ち距離を離した。

「あの、今日また放課後会おうね。」

と美紅は二つ隣の下駄箱へ向かって行った。

「おいおい、ありゃお前の彼女か。入学早々お盛んだな。」

と言って来たのは同じクラスの新堂(かける)であった。新堂はヒロと同じ中学の上がりで三年前から仲が良かった。

「ちげーよ。昨日部活体験でちょっと一緒になっただけだ。」

「へえ。ずいぶん可愛いな。あれ、そういやお前はどこの部活に行ったんだよ。てっきり文芸部かと思ってんだがな。そう言ってなかったっけ?」


実はヒロは最初、文芸部に入ろうと考えていた。推理が好きなヒロは自分も推理小説を書きたい、というのを表向きに、部活の時間も読書やクイズでもしてようと考えていたのだ。

しかしミステリーサークルがあったからには、それをこそこそする必要がなく、むしろ堂々とすべきこととなった。

「ああ、入学した時はどんな部活あるか知らんかったけどな。ミステリーサークルっていう同好会に入ったんだよ。」

「へえ、なんかお前らしいな。わけわかんないものが好きだな、全く。」

「お前はどこ行ったんだ。」

「そんなの野球部に決まってんだろ。他に行くところなんてないさ。」

「そういや、中学も野球してたもんな。」

運動好きはモテそうな部活は入れて羨ましいな、とヒロは思いながらも、美紅との出会いがあったことを思えばと悔しくは思わなかった。



授業。ひたすら長い。ヒロからしてみれば面倒な時間がひたすら流れているように感じた。

-はあ。まだ数学や理科は分かる。まあ国語も日本人として大切だ。英語もグローバル社会とやらには欠かせないだろうな。だがよ、社会ってなんだよ、マジで。


この日の一時限目の授業は現代社会。とは言っても実際は世界史的な要素が多く退屈の極みである。

パスカルがどうとかリヴァイアサンがどうとか、本当にどうでも良かった。ヒロはその時間、ひたすらパスカルの三角形をノートに書いて時間を潰した。

-はやく放課後こねえかなぁ。

ミステリーサークル半分吉井美紅半分にヒロは放課後を待ちくたびれていた。



あれからどれほどの時間が経っただろうか。

ノートを写し、計算をし、文を読み、作者の気持ちを考えたヒロは時計を見た。

どうやらこの時刻は昼休みのようだ。

「なあよ、ヒロ。クイズ出してやろうか。」

と新堂が近寄って来た。ヒロは弁当のちくわを咥えながら

「やってみろ。」

といった。

「おっしゃ。そいじゃ問題だぞ。たかしくんは1657円を持ってコンビニへ行きました。会計が521円の時、お釣りはいくらだったでしょうか。」

「んなもん1657円がバラバラなら1円も受け取らなくて済むだろう。全部最大ギリギリのお金なら30円だな。」

「はあ、お前ほんとつまらねーな。俺がどっち答えても間違えにできるその両方潰しやがって。性格悪いぞ。」

「悪いのはお前の頭だよ。」

と言って新堂の頭をコツンと叩いた。

「じゃ、俺から問題。20度の水1リットルがプラスチックのボウルに入っている。その横には沸騰しているお湯が1リットルある。20度の水を最も早く90度にするにはどうすればいいか。ただし、沸騰してるお湯と水を混ぜてはいけない。」

「うーん、そうだな。どうせあれだろ。引っ掛けだろ。わかったぞ。プラスチックのボウルからアルミのボウルに変えてから沸騰してる水に入れる。」

「はい残念。正解は沸騰してる水を鍋から出してその中にさっきの水を入れて温めるでした。」

「は?鍋なんか聞いてねえし、そもそも何で温めてるんだよ。」

「馬鹿だなあ。沸騰してるお湯があるってことは温めてるんだろ。そうじゃなきゃ沸騰しねーよ。それくらい世界を拡張しろ。」

「はあ、確かに沸騰してる状態が保たれてるなら温めてるわけか。なんかズルいな。」

「はいはい、お前は頭にデッドボール当たっても無事そうだな。」

「それ、頭が固いって言いたいのかよ!」

そんなこんなしてるうちにチャイムは鳴り、授業が始まろうとしていた。



あれからどれほどの時間が経っただろうか。

光合成させ、凝固点を下げたヒロはもう疲れ切っていた。

-だがこれからミステリーサークル!

そう思うと疲れは吹き飛び、すぐにでも走り出したかった。

ようやく長かったホームルームを終え、四階へ走り出そうとした。すると担任が「おい、獅子目、お前掃除当番だぞ。」と言ってきた。

忘れてたーっとヒロは教室に戻り、黒板を消し始めた。


たかが十数分の掃除ではあったが、ヒロには長かった。そしてようやく四階への切符を手にしたのだった。


視聴覚室の扉を開けると木坂と美紅がいた。

「あら、ヒロくん来てくれたのね。今年の一年生は優しいわ。」

と木坂がいった。

「先輩、宿題やっと解けたんですよ!昨日はこれに二時間ほど潰されて、大変でしたよ。」

と言った。すると美紅が

「ええ、あれ本当に解けたの?あの後先輩方と一緒に解いたんだけど、解けたの一人だったのよ。」

と言った。

「で、誰だったの?」

「コガマン先輩だったわ。」

「やっぱりあの人だったんだ。」

やはりすごいな、と思いつつ、逆に残りの二人を追い抜いた、とヒロは嬉しかった。

「で、答えは何かしら。」

「ほらこれ。171819でしょ。」

「よくできたわ。」

「でしょ。いや、それにしても木坂さん、こんな問題作れるなんてほんとすごいです!」

とヒロが感激すると

「ま、昨日の中では一番自信あったからね。」

と木坂は笑った。

「あら、そうだわ。二人共私たちのサークルのチャットに入ってくれないかしら。みんな入ってるのよ。」

と木坂がスマホを取り出したので、ヒロと美紅も取り出した。


グループに入ると昨日の先輩四人に加え、OBと思しき人が十人ほど入っていた。

「時々誰かが問題流すから、是非解いてあげてちょうだい。でも答えを言う時は必ず個人チャットよ。ネタバレになっちゃうから。」

と木坂は言った。

「あ、そしたら、先輩には友達登録依頼しときますね。」

と言ってヒロは四人に依頼を送った。ついでに美紅にもシレッと送った。

美紅は特に何の反応もせず

「そうしたら私も。」

と依頼を送るついでにヒロを登録した。

ヒロは寂しいようなラッキーなような気分でいた。


ヒロが時計を見ると、授業が終わってから三十分が経ったいた。しかし依然として三年生は来なかった。

「それにしても木坂さん、三年生が遅いですね。」

「うーん、そうね。なんか集会でもあるのかしら。まあ、すぐに来るでしょ。」

と言って机に座った。

「お菓子でも食べる?」

と昨日のクッキーを木坂が取り出したその時、ヒロの携帯に着信が来た。



fig.5 先輩の居場所

(画像加工はもじマルにて。URL

http://www.mojimaru.com/talk/create_line1v.php)

挿絵(By みてみん)



「先輩、早速変なの届きましたよ。」

とヒロはスマホを木坂に見せた。

「あの人たちは自分の居場所まで謎にするのね。本当に変人だわ。」

「先輩よく一人でいましたね。私なら一人じゃ無理かもしれません。」

と美紅が言った。ヒロは心の中で

-つまり、俺がいるから来てるのか。俺がいればいいんだな。これはもはや俺に会いに来てるだろ。

と翻訳し、一人で勝手に嬉々としていた。そんなことに気付かず、木坂は答えた。

「私は謎解きが大好きだからね。それにあの人たち…本当に面白いのよ。」

と笑った。ヒロはそれを見て

-お姉さんもいいかもな。

とハーレムを楽しんでいた。


「仕方ない、付き合ってあげましょうか。」

と木坂が言ったのでヒロは携帯机に置いた。三人は椅子を持って来てそれを丸く囲んだ。

ヒロは

-できれば先輩なんか見つからなくていいから、この時間をできるだけ堪能したいな。


と思いながらも謎を解くことにした。

記号を含め、わずか十二文字の謎を。

今回は謎は置いて行きます。

頭を悩ませるみなさんにヒント。

ヒントはある部活の場所を指しています。

それではまだ次章で。

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