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第四章 〜隠された六桁〜

前回の問題の答え合わせです。

皆さん解けましたか?もしまだ問題を知らない人は是非前章を読んでください。一応この章にも掲載しますが。それでは謎の扉よヒラケゴマ

ケーキを食べ終えたヒロは、パーティーの余韻も程々に部屋へ戻って机の上の紙を表に向けた。



fig3. 家に帰っても謎

挿絵(By みてみん)



「ほほう。リンが言っていたのはこういう事か。」

早速ヒロは謎解きに取り掛かった。まずは何としても、この数字の羅列から何か法則性を見つけなければならない。しかし、数字の大きさの差、商や余り、かけ算、あらゆる操作をするも、なにも共通点が見当たらない。

「こういう時は最大値からの推測かな。」


通常、値の小さい数字ばかりであれば、その最小値から関連性のあるものが見えてくる。例えば、十一や十二が最大値なら干支や何月など。七や六なら一週間。このような感じである。しかし、見ていけば最大値は九十五。三桁ではない、ということくらいしか共通点がない。しかもこの場合、百強が最大値であり、そこからの抜粋のために二桁や一桁ばかりになった可能性もある。

「ふーん、どうやらこの考え方も使えないみたいだな。」


桁数の違いもまた面倒なものだ。全て同じ桁数なら、右側と左側で違うもの示すのではなど予想もつくが、今回はそうでもない。

「てか、ちょっと待てよ。普通の法則問題なら、穴埋めじゃないか?この問題は穴埋めじゃない!そもそも六桁とはどこから来たのだろう。だめだ、全く見えない。」

木坂さんが今の自分を見たら相当喜ぶんだろうな、と思いながらも見えない答えを求めて頭は常に回り続けていた。


椅子から降りて床に大の字になったヒロは天井を見上げて、頭を一旦落ち着かせることにした。そうしてそのまま目を瞑ると気分が良くなっていき、果てにはそのまま眠りについてしまった。

この時の時刻は十時八分であった。



ドンドン、という扉を叩く音にヒロは目を覚ました。

「ちょっと、ヒロ〜。お風呂早く入っちゃいなさい。」

うーん、と唸りながら体を伸ばし、フアーッと大きく欠伸をした。喉の渇きと若干の気持ち悪さ、加えて体の痛みを少し感じながらヒロは立ち上がった。リビングに降りて水をグッと飲み、風呂場へ向かっていった。


服を脱いで洗濯機に入れ、さっさと風呂場へ入り、シャワーを流して暖かくなったのを確認し、頭から被った。ザーッと流れる水の音を聞きながらヒロは椅子に座り、頭を洗い始めた。それと同時に例の宿題をもう一度思い浮かべてみた。


-あの数字はどんな法則の元に並んでいるのだろうか。四則演算はした。そうすると累乗だろうか。下一桁?二桁?では、なぜ桁数は揃えなかったのか。つまり、そういうことではないのか。


巡り巡る考えを「これは違う。これも違う。」と、頭の上の泡と一緒にシャワーで流していった。


体をザザッと洗い、ドバッと風呂に入り、「フーッ」と声を上げながら湯に浸かった。その時ですら頭の中からあの数字の羅列が消えることは決してなかった。


風呂を上がって体を拭き、寝間着のジャージに着替えてリビングのソファーに寝そべった。腕を伸ばしてリモコンを取りテレビの電源を入れた。すると女性アイドルグループが美容体験をする、というバラエティーが流れていた。

すると後ろのリンが話しかけて来た。

「あ、バニークッキーじゃん。」

「ん?なにそれ。ダイエット食品か?」

「違うよ。このアイドルだよ。」

「随分美味しそうな名前だね。初めて聞いた。」

「そうだね。私も友達伝いで聞いてて初めてテレビで見た。」

「なんでわかったの?」

「上に書いてあるじゃない。」

と、よく見ると上にしっかりと「バニークッキーがもっと可愛くなる!」と書かれていた。

ヒロはホエーッと興味なさげな感嘆でテレビをボーッと見ていた。


テレビではバニークッキーとやらがキャーキャーと盛り上がっていた。

「これが今話題の水素水なんですね!」

「はい、そうなんです。これはその水素水を家で作ることができると話題なんですよ。」

「でも、水素水ってどんな仕組みで可愛くなれるんですか?」

「それはですねこのようなわけなのです。」

と家電芸人として有名な男がフリップをめくって、頭よさげな口調で語り始めた。

「体に水素が取り込まれますと体内にあるこれが…」

ヒロは相変わらず胡散臭いな、と思いながら半分見ながら、半分頭だけ寝かしながら見ていた。

芸人は「H2」と書かれた水素マークをフリップの上でクチャクチャと動かし、「抗酸化作用が云々…」と言いながら「O」のマークとくっつけたりしていた。

「ほら見てください。酸素のオーと水素のエイチがくっついて…ほら皆さんご覧の通り感嘆のOH〜となっていきます。」

テロップを見ながらヒロは

-こいつらを見ていると勉強の必要性がわかるな。なにがオーだよ。

と思いながら相変わらずボーッとしていた。


すると突然後ろからリンがリモコンを取った。リンは

「いっけなーい。カズキ様を見逃すところだったー。お兄ちゃん変えてよかった?」

といってヒロの回答を聞く前にもうチャンネルを変えていた。

ヒロは

「別にいいよ。見てなかったし。」

といってリビングを出ていった。カズキ様。いま話題の男性俳優だ。あんなものに夢中になってしょーもないな、と思いながらヒロは部屋へ帰ることにした。


「さて、もう一度考えるか。」

ヒロはもう一度紙を見つめた。

5、8、39…

-これらが別の数字が何か別のものを示していたとしたら…あ、あー!

ヒロは急いでカバンから化学の教科書を取り出し、巻末を覗いた。

-こ、これじゃないか?


元素周期表。物質を構成する基本単位である元素。それを陽子の数の順番で並べ、似た性質が縦列に来るように調節したメンデレーエフの力作である。


fig.4 元素の周期表(素材はExcelによる自作)

挿絵(By みてみん)


ヒロは先ほどの数字と周期表を見比べながら文字列を明らかにしていった。


B O Y S Be Am Bi Ti O U S

Boys be ambitious


「なるほど…」


生まれた文字列はかの有名な北海道大学の前身「札幌農学校」へ教頭として招かれたクラーク博士が残した名言

「少年よ、大志を抱け」である。

ちなみにこのクラーク博士は化学者であり、まさに周期表を用いる問題として適した人物であった。


ヒロはこの問題の完璧すぎる出来に唸りながら椅子の背もたれにグーっと倒れこんだ。

そしてこの時大切なことを思い出した。

「あれ、解答は六桁の数字だったよな…」


ヒロは再び迷宮に足を踏み入れることとなってしまった。

-少年よ大志を抱けが回答ではないのか。なぜ数字が答えになるんだ。もしやこの文字列が現れたのは偶然で全く違う解き方なのか。


ヒロはその天文学的な可能性の低さを考え、もう一度その答えをジッと見つめた。


-少年よ大志を抱け…これを言ったのはクラーク博士。クラーク?どこかで聞いたな有名人とかそんなのではなくて、まさに理科の授業で。中学で聞いたぞ。


ヒロは中学の頃の教科書を棚の奥の段ボールから引き出し「クラーク」の名を持つ化学者を探した。しかし一向にそのような人物は見当たらない。仕方なくインターネットで調べるが、出て来るのはクラーク博士だけであった。


-どこだ、どこで聞いた?クラークと化学、クラークと化学…今回の問題は周期表だったな…


「あ!」


ヒロは思い出したのだ。周期表を覚えるときのあの言葉を

「水兵リーベ僕の船七曲りシップスクラークか」

元素の頭文字を取って語呂にした有名な文。

-そうだ、クラークは人物名で出たんじゃない!語呂に出てきたんだ!


クラーク博士の「クラーク」のスペル。それは「Clark」そして、周期表にはそれと全く同じ文字列が現れる。元素番号17、18、19の部分。塩素の「Cl」、アルゴンの「Ar」、そしてカリウムの「K」。そのみっつを組み合わせればまさに「ClArK」の名が現れるのだ。


「つまり、六桁の数字はこれか!」

部屋で一人、ヒロはそう叫んで解答欄一杯に「171819」と書いた。


「お兄ちゃんどうしたのそんな大声出して。」

とリンが部屋を覗いた時には、頭の髄まで使い切ったヒロは既に眠りに落ちていた。

問題のレベル・質はどうでしょうか?いい謎解きが作れていればなと思いますので、みなさんの意見をお聞かせください。今後の問題作成の参考にします!


今回は思ったより章が長くなったので(気づけば原稿九枚分…)問題は置きません(ごめんね)!次回、再びみなさんの頭を悩ませる問題を載せます。乞うご期待!

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