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第一章 〜ローマからの張り紙〜

こんにちは。千同寺万里です。

どうしても、どうしても書きたかったので、思い切って書き始めます!ミステリー小説!


太陽が昇る時はその間お休みします。

ぜひ、謎解きを楽しんでいってください!

丘の上に立つ名門私立高校「明流学園 高等部」。


通うのは中等部上がりと難関受験を突破した猛者たち。その卒業者の多くが東大や京大、早稲田や慶応、医学部医学科など日本のトップレベルの大学へ進学する。


この学校のとある生徒。彼はいま教室を出るか出ないかの所で行ったり来たりを繰り返していた。


獅子目ヒロ。読み方はシシノメヒロ。彼もまた、激しい私立高校受験戦争を勝ち抜いた一人だった。

とは言っても、かなりギリギリの合格だった。点数開示をしてみれば毎年発表されるボーダーをしっかりと下回っていた。このことは親にもその後できるであろう友人にも秘密にしようとヒロは心に決めた。



入学式も済み、新入生は新たな高校生活の準備に取り掛かっていた。勉強準備はもちろんのこと、学校生活の華となる部活動の決定も大切なイベントである。

部活動は高校生活において、勉強以外の大半を占める。野球にサッカーのような花形スポーツから吹奏楽部や合唱部のような魅惑の文化系まで、様々な部活動がある。

教室の外では一人でも多くの有望な人間を獲得しようと、各部活動の部員たちが声を上げて勧誘していた。


件のヒロもまた、部活動選びに頭を抱えていた。中学の頃は友達と家で遊ぶばかりで運動部には入っていなかった。その為、今更入った所で迷惑かけるだけだろうし、第一動くことは余り好きでは無い。

結局どうしようか決めることはできず、廊下に出ることにした。張り出される各部活動が工夫を凝らした張り紙の数々。


無数にある張り紙の中から、ただ一つがヒロの目に留まった。


「うん?なんだこれは。」


その張り紙は色も背景も活動場所も、そもそもなんの部活動かすら書いていなかった。

ただ、紙の中央にこう書いてあった。



「nztufsz djsdmf jo bvejp wjtvbmsppn」



謎の文字列を見て少し頭を傾げたヒロはポケットからスマートフォンを取り出し何かを調べ始めた。

そして三分後、彼はその場を離れ階段を上っていった。



一年生の教室が並ぶのは二階。彼は最上階である四階を目指して歩いていった。


ヒロの足元は若干の興奮でプルプルと震えていた。

まさか、まさかこんな所にこんな部活動があったとは。

もし、自分が輝ける世界が高校にあるなら、それはここである。その確信があった。


新入生は、皆各部活動の見学へ行き、ただ一つを除いて特別教室を持たない四階へは誰も来ていなかった。ただ一人。ヒロは孤独を背負いながら、あるいは少しその自分の姿に酔いながら、一歩一歩と向かうべき所へ足を進めていた。



ガチャ



おそるおそる中を覗き込む。電気はついていた。何人かの人が不意に開いたドアに視線を向けたので、図らずともヒロは彼らと目があった。


「うおおおおお、新入生がきたぁぁぁぁぁぁ!!」


ヒロは少し顔を赤くしながら教室へと入っていった。

「よくここが分かったな。こいつは期待の新人だよ。」

「まさか来るとはね。マッツの張り紙じゃ絶対来ないって思ったのに。負けたわ。」

「ほらな。俺は今年は必ず天才が来ると予想してたんだよ。」

「ま、大したものでも無かったけどね。」


待ち受けていたのは四人の先輩であった。四人は我先にとヒロに近づき、おののくヒロを部屋に引きずり込んだ。

「初めまして。会長の松戸真司です。三年。入会嬉しいよ。ちなみに、あのポスター作ったの俺だからな。」

「私は木坂百合です。よろしくね。二年だよ。」

「俺は古賀満。この中で一番頭がいいんだ。」

「何言ってるんだ、三年連続で数学赤点ギリギリの癖して。あ、俺は近藤輝喜。古賀と同じクラスの三年だ。よろ。」

ヒロは「獅子目ヒロです…よ、よろしく。」と圧倒された。


松戸が机に座って足を組み、ヒロに話しかけた。

「な、もちろんあーいうの好きだから来たんだろ。どんくらいで解けた?」

「そうですね。五分弱くらいです。」

とヒロはバレない程度にニヤッと笑って自慢気に話した。

「五分!すごいじゃない!」

と、女の子に褒められて満更なしにヒロは答えた。

「シーザー暗号(*)ですからね。まあ基本でしょう。長文じゃないから見極めポイントはなかったけど、試しにやってみたら当たりました。一文字ズレですから。」



(*)シーザー暗号

最も単純な暗号である。初めて使ったのはその名の通り、ローマ帝国帝王のジュリアスシーザー、ローマ読みでユリウスカエサルであるとされる。アルファベットの文字数を決められた文字数ずつズラす事で解読ができる。

例えば、appleであれば、bqqmfのような感じ。これはそれぞれの文字を一つを後ろの文字に置き換えたもの。



「それで読めば『mystery circle in audio visualroom』になってました。まあ、ミステリーサークルが視聴覚室にあるというのはおかしなものですから、多分そのようなサークルみたいなのがあるのかと。」

「お見事だね。俺のいい後輩になる。」

と言いながら古賀はパチパチと手を鳴らした。

「なんでお前の後輩なんだよ。お前にゃもったいねーよ。」

と近藤がすかさずツッコんだ。

松戸が机から立ち上がりホワイトボードの前に立った。

「正確にはサークルはないから、同好会活動扱いなんだけどね。俺らの活動はみんなで暗号を作りあって解き合うって感じかな。頼む、折角だから入ってくれ。」

「そうそう、去年は私以外全員怖がっちゃって帰っちゃったものね。」

「うう、あれは本当に誤算だったよ。本当に残ってくれてありがとな百合。」

と松戸はわざとらしく悔しいそうな態度で下を向き、拳を握った。


「あの、俺は今まで問題作ったことはないんですけど、大丈夫ですかね。」

とヒロが問うと近藤が優しく寄って来た。

「心配すんな。作るどころか、解いたことないような人たちばかりだよ。」

「人たちって四人じゃないですか。」

とヒロが言うや否や、ドアが再び開いて一人の女が入ってきた。

「初めまして!あの、ポスターを見てきたんですけど…ダメ…でしたかね。」

と後ずさる彼女を松戸が「あやややややや、全然、全然だよ。」と言いながら慌てて引き止めていた。近藤がヒロの耳元で

「四人じゃなくてもう六人だな。」と言った。


先ほどヒロが経験したのと同じようなことがすぐに繰り返され、彼女が名乗った。

「あの、D組の吉井美紅です。あの、暗号作りが趣味でいつもやっていました。よろしくお願いします!」と彼女はメガネを揺さぶらしながら頭を下げた。

少し低めの身長で小学生と見紛うような童顔。ヒロの目は完全に奪われたのであった。


ボケーっとしてると

「こいつは獅子目って言ってな。今年一番期待の一年だぜ。」

と古賀が勝手に紹介を始めたので慌てて

「いや、今俺も来たばっかでして…」

とヒロは答え、それを見て古賀はキャッキャと笑い、近藤は救いのようのないバカを見る目で古賀に苦笑を送っていた。


「とりあえず、今日は新入会員二人を手に入れた記念だから、盛り上がろう!」

と松戸は言い、それに合わせて木坂が二人に紙を三枚ずつ渡した。


「なんすか、これは。」

「ちゃんと解くまで帰っちゃダメだよ。」

と木坂はいたずらっぽくいい、他の会員たちにも配った。

「私が一週間かけて作った謎解きでーす。みんな頑張ってね。ヨーイドン!」

と言うと、三人の三年生は何も言わず、突如として紙と向き合い始めた。ヒロと美紅は訳が分からないものの、すべき事を察して三人に倣って紙と向き合った。


fig.1 最初の課題

挿絵(By みてみん)



入部届けも書いてない新入生。

初めて配られた問題の第一問目。

ヒロは

-おいおい、これなのが一問目なら今日は帰れないぞ

と思いながら頭をポリポリと掻いた。

他の四人が運ぶ鉛筆の音に、ヒロは受験の日に似た、あるいはそれ以上の緊張を感じた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

謎解きのストックがあるので、切れるまで書き続けようと思います。

感想やレビューを書いていただけると幸いです。

高評価、低評価どんな評価もありがたく受け取ります!読んでいただいた足跡を残してくださると幸いです。


次回もまたお楽しみに。

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