第二十一章 〜ミニ説明会〜
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ヒロは一人、教室へと戻って行った。
「獅子目くん、おかえり。コガマンは?」
「ああ、先輩は買い忘れでコンビニに戻ったんで後から来ますよ。」
「あら、そうなの?」
「先輩に炭酸じゃなくて普通の買っちゃったからって。」
「コガマンは本当にダメね。せっかく頭はあれほど回るのに。きっと普通の人が使う部分があの回転に侵食されちゃってるのよね。哀れだわ」
と木坂は目を細めた。ヒロも苦笑いをしていると息を切らせた古賀が戻って来た。
「いやぁ、悪い悪い。買ってきてやったぞ。」
ヒロは炭酸のオレンジドリンクを渡した。
「ねえ古賀くん…これ持って走ってきたの?」
「おお。お前の為だぞ。」
胸を張る古賀に対して木坂は大きく溜息をした。
「あのさぁ、古賀くん開けてくれるかしら。」
古賀は不思議そうな顔をしながら
「おお。」
と言って、力一杯キャップを回した。
ヒロが「あ、待って!」というや否や、細い飲み口から噴水のごとくジュースが溢れ出した。
古賀とヒロは「オワーー」と慌て、古賀はそれ以上零さないようにと顔を突き出して飲んだ。
それを見た木坂は、今度は目を細めて大きく溜息をした。
「そりゃ炭酸を振り回したらそうなるわよ。どうしてそういう頭は回らないのかしら。」
「分かってるなら言ってくれよ!」
古賀がそういうと
「ミステリーサークルだから、謎解きを出してあげたまでよ。」
と言って木坂は解いていた会長の問題をヒラリと机に置いた。
「さあ、これで謎は解き終わったわ。お菓子でも食べましょう。」
と真ん中の方の机に移動した。
「は、はい!ちょっと待ってください。」
といってヒロは雑巾二枚を持って古賀のところへ駆けつけ、二人で床を拭いた。
雑巾を洗った二人は、再び教室に戻って木坂の周りの席へついた。
「じゃブレイクタイムにするか。」
と言って古賀はコンビニの袋からお菓子を取り出した。
最初にポテトチップスを開けて食べ始めた。
ヒロは食べながら二人に話しかけた。
「あの、『ズノウクエスト』についてもっと知りたいんですけど…」
「ああ、そうだな。なんせ謎解きマニアには欠かせない行事だからな。」
そう言って古賀はリュックからタブレット端末を取り出してズノウクエストのサイトを開いた。
「まず、おおまかなルール。人数は六人でチームになる。それ以上もそれ以下も禁止。とは言え、監視の目が行き渡らないからコッソリそれ以上の人数でも出来ちゃうけど、そうする人はいないかな。」
「なんでですか?」
「ゲームの範囲が広いんだよ。会場は東京23区内となってるんだ。」
「前に聞きました。あ、つまりスタッフもその間に合流とかがあってもわからないんですね。」
「全くもってその通り。 でも参加者は謎解き好きばかりだしね。そんなセコいことをしてまで勝とうという人は来ないんじゃないかな。」
「なるほど。でも七人集めるって結構大変ですよね。」
「そこでだ。」
古賀はパチンと指を鳴らして手を挙げた。
「こんなものがあるんだ。」
ファイルから宣伝のチラシを見せた。
「大会の二週間前の日曜日、交流会がある。場所は東京新宿区。イベント会館が貸し切られる。ちなみに参加費は千円。ルールではないけど慣例として参加者は一つのチームにつき一問謎解きを持っていくことになっている。」
「なるほど。謎解きを作るとなると敷居にそこそこの高さがでますもんね。」
「そうそう。それに参加できる年齢も二十五歳以下。結局五十チームほど三五〇人前後になるんだ。」
「へえ。で、どうすれば勝ちなんですかね。」
「まず初日に謎が渡される。それを解いていきながら指示に従って色々な場所へ向かう。そこで新たな謎解きをスタッフから貰う。」
さらに木坂が続けた。
「貰うって言ったって色々なのよ。行くだけで貰えたり、合言葉を言ったり。」
古賀はそうそうと頷いていた。
「で、最終的には?」
「最後は決められた場所へ到着したらクリアだったり、暗証番号を入力をしたら花火が上がってクリアだったり、クリアには色々な種類がある。それぞれ新しい謎をゲットできると記録が残されて、どれくらいの人がどこまで到達できたかが記録される。トップ十チームに関してはインターネットで公開される。どうにかして名前を残そうぜ。香坂先輩に会いに行くんだ!」
「やる気出てきました!」
ヒロは立ち上がってガッツポーズをして見せた。
「で、それはいつあるかと言うと…」
ヒロはそう言ってチラシを見た。
「大会は七月二十七日ですか。まだまだ先ですね。」
「意外とすぐ来ちゃうものよ。問題も早く作っておくといいわ。交流会だから、プレッシャー与えたい訳じゃないけど、クォリティーはしっかりさせておくべきだもの。一応確認会をミスサで開くけどね。」
「いつですか?」
「確認会は交流会の数日前ね。今から作って温めてもいいわ。」
「そうなんですか。」
と頷くヒロに木坂はさらに続けた。
「それと交流会には香坂先輩関係のスタッフが来るって噂だわ。」
「ええ、じゃあ張り切らなきゃですよ!」
といいながらクッキーを齧った。
「そういうこった。自信ある作品ができたら温めるのもいいかもな。この日の為によ。」
「そうなんですか…分かりました!考えてみます!」
とヒロはノートにメモを取った。
この日の夜、ヒロは美紅にメッセージを送った。
『今日先輩からズノウクエストのこと聞いたよ。』
比較的早めに返信が来た。
『ほんと?ききたい!』
『まず日程は』
『電話まずい?』
「オーホッホッホ!」
と訳の分からない声が、驚きのせいで出てきた。
ヒロは早速美紅に電話をした。
「もしもしヒロくん?」
「おうもしもし。こっちは大丈夫。」
「そう。よかったわ。どんなこと聞いたのかしら?」
「あー日程とかね。七月二十七日だってよ。本番が。で、交流会があってそれが…」
「ちょっと待って。メモするわ。」
スマホの向こう側からガサゴソと聞こえてきた。
「いいわ。」
「おう。本番が七月二十七日なんだよ。交流会があるんだよ。それは一週間前くらいの日曜日なんだ。」
「交流会か。どんなものなの?」
今度はカキカキとシャーペンが走る音がする。
「それがな、一人一問ずつ謎解き作るんだとよ。今後は一番自信ある問題あったら温めるのもいいって古賀先輩言ってたわ。」
「そうなんだ。分かったわ。」
「あと、それの確認会があるんだとよ。」
と言ったところで部屋の扉が少し開いてるのが見えた。向こうからはニヤニヤしたリンの姿が見えた。ヒロはシッシッと手で払う仕草をした。リンはますます面白がって部屋に入ってきた。
「ねえねえ、誰?ナゾナゾの女の子?美紅ちゃん?ねえねえねえねえ!」
ヒロは慌ててマイク部分を手で抑えて
「うるせえ。出てけって!」
と言ってリンを手で追いやった。
とうとうリンは
「ふぅん。よかったね!お兄ちゃん、彼女できて。」
と扉の方へ歩いて出ていった。
「ごめんごめん。ちょっと妹が来た。」
「そう。大丈夫なの?」
「もう全然関係ないし。」
「そう。それで確認会は何かしら?」
「それが交流会の数日前にあるんだよ。ここではミスサのみんなで交流会に適したものか確認しあうんだとよ。」
「分かったわ。なんだかもうワクワクして来ちゃったわ!」
「ああ、よくわかる。そういえば、今日先輩から問題貰ったけどいる?」
「ああ、いるいる!写真で送ってくれるかしら?」
と言うので、ヒロは写真を撮って送った。
「ほい。届いた?」
向こうからブルブルと聞こえる。
「届いたわ。じゃあこれは解くわね。そうそう、昨日のクラスでね…」
と世間話が始まった。
二人の話は二時間に及んだ。
その時間はあっという間に過ぎていった。
次回、初回シリーズ最終回とさせていただきます。
ここまでありがとうございました。
そのあとすぐに2ndシーズン始まるよ!




