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第十八章 ~二人の時間~

数日あけましたが。答えあわせと行きましょうか。

窓の外はまだそこそこの明るさを保っていた。

しかし、二人の謎解きの行方は明るいとは言えなかった。ヒロも美紅も、じっと問題を見つめたまま、何も浮かばずにいた。




fig14. 埋まらぬ空白

挿絵(By みてみん)



「ヒロくん、進んだ?」

「いいや、進まない。そっちは?」

「進んだら聞かないわ。」

「だよなあ。まずはこの表だよな。どうにかして数字を埋めなきゃならん。」

「でも数字を埋めるマス目の物なんていくらで…そうよ。ないわ。数字をマス目に入れるものなんてそんなにないわよ。」

「どう言うこと?」

「マス目に入れる条件とか何も書いてないでしょ?つまり、この表はすでに存在しているものなのよ。そう考えたら九マスの数字埋めなんて一つしかないわ。」

「数字埋め?」

「上には九つの数字が書いてあるわ。重複している文字もある。て言うことは、全部使うわけじゃない?」

「そうか、確かに全部使うわけじゃないなら数字ごとに別の文字を当てたいよな。」

「つまり九つの数字をすべてのマスに埋める。使えるのは一回ずつ。分からない?」

「ああ!なるほど。魔方陣(*)か!」



(*)魔方陣

正方形のマス目に、1〜(マスの数)までの数字を一回ずつ入れていく。ただしこの時、縦・横・斜めの数字の和は必ず一致するようにしなければならない。入れる数字がバラバラな数字であるものや、逆さから見ても数字になるものを使って逆から見ても魔方陣になるものなども存在する。



「多分そうだと思うわ。」

「ま、埋めてみようぜ。九マスの魔方陣は和が十五になればいいから…」

ヒロはガシガシと埋めた。

「こうか。」



fig15. 魔方の空白

挿絵(By みてみん)



「私も埋めたわ。ひらがなを当てはめると…『ざげうんのごげいん』…」

「横読みだな。」

ヒロは笑いかけた。

「気を取り直していくわ。『げんざいのげんごう』か。平成ね!」

「よし、これで正解だろう。」

「思ったより時間かかったわ。いま何時かしら。」

美紅が時計を見た。

「あら、もう四時ね。休日は五時までだからちょうどいいわ。」

「そうなのか?」

「あら知らなかったの?先生言ってたじゃない。」

「全然聞いてなかった。」

「そしたら私たちも帰ろう。」

「そうだな。そうだ、確か美紅ちゃんの家ショッピングモールの近くだよな?」

「そうよ。」

「今帰るのも面倒だし、俺ゲーセンいくわ。近くまで一緒に行かない?」

「そうね。一緒に。」

-作戦通り!

ヒロは完璧な頭脳戦の結果、一緒に帰る権利を手に入れた。

「そうだわ!すっかり忘れてた。ノート買いたいの忘れてたわ。中まで一緒についていってもいいかしら?」

-ええええええええ!

ヒロはまさかのデートの申し込み(ではない)に驚いてしまった。

「ヒロくん?」

「ああもちろんもちろん。全然いいよ。ゲーセンなんか暇潰しだし。マジで。」

「本当?じゃ行きましょう。」

「じゃ、俺鍵返してくるわ。玄関で落ち合おう。」

二人は荷物を持って部屋を出た。

そしてすぐ。ヒロはとりあえず現在の状況を一人で落ち着いて見直すため、鍵と荷物をを持って職員室へ駆けていった。


-出会って数日。早くもデートをすることに成功してしまった。やばい。これはマジで赤い糸で結ばれているんじゃないだろうか。

ヒロはすでに感動の告白までイメージをしていた。

鍵を返したヒロは少しでも美紅を待たせないようにしようと、階段は段を飛ばしながら、廊下は走りながらとにかく急いで玄関へ向かった。玄関に到着すると美紅は壁に寄りかかりながらスマホを触っていた。足音が聞こえたからか、美紅はヒロのほうを向いてニコリとした。

「ありがとう。」

「悪いな、待たせて。」

「全然。別に急いでないからね。」

「そうだね。どうやって行く?」

「うーん。わざわざバスに乗ることもないわ。歩いていきましょう。」

「そうか。ここから十五分くらいだもんな。のんびり行こうか。」

歩くということは自然と二人きりの時間が増える。いままで「リア充爆発」とか言っていたヒロであったが、今は緊張のしすぎで自ら爆発してしまいそうであった。


二人は目的地までの道のりを会話をしながらのんびりと過ごしていた。ヒロは身長の低い美紅の歩幅に合わせて、そして少しでもこの二人きりの時間を延ばすように普段よりもゆっくり、ゆっくりと歩みを進めた。

「ねえねえ。ヒロくんは謎解き以外に何か趣味はあるの?」

美紅がヒロに話しかけた。

「うーんそうだな…例えば暇なときはゲームしてるね。大体はネットゲームかな。」

「ふうん。どんなゲームがすきなの?」

「FPSとかかな。ああ、シューティングゲームね。あとはテトリスとか。」

「テトリスやるんだ。私も結構得意なのよ。」

「そうなの?俺もかなり得意だよ。俺が人に自慢できることは謎解きとテトリスぐらいだからな。」

「そんなことないでしょ。」

といいながら美紅はヒロを小突いた。

言うまでもなくヒロは興奮した。

「ヒロくんってクラスどこ?」

「俺はB組だよ。」

「そうすると担任の先生は岸原先生だったかしら。」

「そうそうよく覚えてるな。先輩失踪事件の時の部活動一覧といい、美紅ちゃんは本当にしっかりしてるな。」

「普通の人はしてるわよ。でも、担任の先生とかそういうのは結構ちゃんと覚えちゃうのよね。各クラスの担任はその日のうちに覚えたし。」

「そういうのをすぐに覚えれるなんて羨ましいな。俺は何にも覚えられねえ。中一の時なんか九月にはじめて名前覚えたやつがクラスにいたくらいだからな。」

「それはちょっとひどすぎるよ」

と美紅は笑った。その仕草がいちいち可愛らしいのでヒロは今にも抱きついてしまいそうだった。しかしそこはさすがに理性が勝って、実行するにはいたらなかった。


二十分くらいたった頃、目的地に到着した。

「ふう。着いたな。何が欲しいんだっけ?」

「ノートが欲しいのよ。教科が思ったより多くて趣味用のノートが残ってないのよ。それにノートを使い終わったときのためのストックもないし。」

「趣味用?絵でも書いてるの?」

「絵心は…まったくないわ。ほら、暗号作り用よ。ああいうのって、突然降ってくるのよ。そのとき書き留めなきゃすぐ忘れちゃうから。」

「ああ、いつも暗号作りしてるって言ってたもんね。ルーズリーフは使わないのか?」

「ノートの厚みが好きなのよ。それに残っている感じが今までの功績みたいでかっこいいじゃない。」

「なるほどね。」

「それと多分今後もミステリーサークルで学ぶことが出てくると思うわ。その時のためにも必要になるわ。」

「そうだな。俺も謎解き専用のノート買っておこうかな。」

「それがいいと思うわ。」

「よしゃ、それじゃあ文房具の場所にいくか。」

二人は四階へ向かってエスカレーターに乗った。


文房具屋は広々と場所をとっていた。シャーペンコーナーやボールペンコーナーはもちろんのこと、コンパスコーナーや万年筆コーナーもドンとした広さを設けるほど、なかなか凝った場所であった。

「ノートはどこかしら。」

「ああ、こっちのほうだね。」

ノート売り場にはざっと数十種類がギッシリと並べられていた。

「とりあえずこの大学ノートね。なにか謎解き作りにちょうどいいノートはあるかしら。」

美紅は並べられたノートを一つ一つ見ながら歩いていった。

ヒロもそれに倣って見比べていった。

「やっぱ謎解きには方眼を使いたいわね。」

「なんで?」

「表を書くにはちょうどいいじゃない。定規をわざわざ使うこともないし。」

「なるほどな。」

「それに文字の形を使った謎解きを作る時にも文字の大きさとか比較しやすいわ。あと、縦読みや斜め読みを使うときにも文字の大きさをそろえやすいから楽チンよ。」

「なるほどな。ほかにはいい条件とかあるのか?」

「そうね。私は大きいほうがいいわね。どこかで思いついたときはスマホのメモ帳機能を使ってキーワードだけちゃちゃっと書くわ。だからメモ帳の必要もないし。大きいほうがデッサンじゃないけど大まかなイメージを書くにはちょうどいいのよ。」

「なるほどね。じゃあ、俺これにしようかな。」

「うーん、私もこれにするわ。ちょうどいいわね。」

「だろ?」

「ヒロくんは何色にしたの?」

「俺はやっぱり赤だな。赤が好きなんだ。」

「そう。じゃあ私も赤にしよう。」

「お、おおそうかい。」

ヒロは特に気にしなかったかのような返事をしたが、心の中じゃあ自分と同じ色をわざわざ選んだ美紅に対してますます好意を持つのであった。


「せっかくだし何かペンでも買おうかしら。」

「そうか。じゃあ俺は万年筆見てくるわ。」

「あら、万年筆好きなの?」

「いや、別にそんなことはないけど、万年もつんだろ?一本ぐらい持っててもいいじゃないかなと思ってよ。」

「なるほど。確かに万年筆ってちょっとかっこいいわね。」

ヒロは万年筆売り場の方へ歩いた。美紅もまたその後ろをついていった。

「うーん、これはかっこいいな。」

「そうね。でも持ち歩くには無駄に高級感があるわ。私はむしろこれくらいカジュアルなほうが好きね。」

「そうか。ちょっと見た目からしてチープすぎる気がするんだよな。せっかく万年筆っていうあらかじめのかっこよさがあるんだから、それを下げちゃうのはもったいないような気がするんだよな。」

「いわれてみればそうね。これぐらいならどうかしら。値段的にも持ち歩くのに怖くならないわ。」

「そうだな。俺もそれいいと思う。」

「どうする?ヒロくんは買うの?」

「ああ。せっかくだし、今は懐もそこそこ暖かいからな。買おうかな。」

「そしたら同じの買いましょう。ミステリーサークル仲間の証代わりに。」

再びヒロは美紅と同じものを手にすることとなった。

-しかも万年と来た。これはもしや一万年と二千年の愛が…

相変わらずの調子のいい解釈も全力でヒロはレジへ持っていった。

美紅もまたレジへ向かっていった。

いつもはスマホで執筆していますが、今日に限ってはパソコンでやっております。

普段の倍程度のタイプスピードで非常に楽チンです。

家にパソコンがあればいいのに。。。

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