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第十四章 〜謎のレシピ〜

いつもご愛読ありがとうございます。

今回もお楽しみください。

就寝前、とは言え時刻は十一時。寝るのには早いので美紅にでも連絡をしようとチャットを開いた。


『先輩にもう聞いた?』


程なくして返信が来た


『うん。明日は来なくてもイイけど』

『イイけど?』

『来たければ来てイイって。明日は会長だけ来るらしい』

『おう。それなら俺暇だしいこうかな』

『私も多分行く。じゃ、明日会おうね٩( 'ω' )و』


ヒロは小さな声でヨッシャー、と言いながら小さなガッツポーズをした。

喜びはこれよりも大きいわけだが、隣の部屋のリンの存在を無意識のうちに感じとった。

明日も謎が解けること半分、そして何より美紅に会えること半分。もしかしたら八割かもしれない。ヒロはウキウキしていた。

そしてもう少しワガママをいうと、まだまだ美紅とは話し足りなかった。しかし心配無用。ヒロには部活友達という大義名分があった。惜しむことなくその特権を使うことにした。


『明日何時くらいに行く?』


あわよくば、視聴覚室に二人っきりも悪くないとの下心など露知らず美紅はしっかりと返信してきた。


『先輩がお昼過ぎって言ってたし、私も十二時くらいかな。』

『そうか。じゃ、俺も十二時にいくわ。』

『ひとりじゃ寂しすぎるもんね笑』

『ほんとほんと』


かくしてヒロは美来との視聴覚室ドキドキタイムを得ることができたのだった。もう謎も残っていない。ヒロは明日に備え、少し早すぎる気もしたが用はないので今日を終えることにした。



翌朝、時刻は九時。普段は十時過ぎくらいに起きるヒロにとっては早めの朝である。

服を着替え下に降りると、母親はいつもの通り起床済みで朝食の下準備をしていた。


「あら、ヒロおはよう。今日は早いね。」

「ああん。部活があってね。自主活動だけど何もすることないし。」

「そう。部活は何入ったの?お母さんまだ聞いてないよ?」

「ああ…」

いつかは知られるだろうし、わざわざ嘘をつく必要もない。

「謎解き同好会だよ。」

「へえ。変わったの入ってるんだね。それでリンがナゾナゾナゾナゾ言ってたんだ。今日もナゾナゾしてくるの?」

いい加減ナゾナゾを否定するのも面倒になったヒロは反論するのをやめ、適当に流すことにした。

「まあそんな感じ。」

「じゃ帰ってきたらナゾナゾ教えて。」

「ハハハ…」

朝食が並んだ。ヒロはさっさと食べて部屋へ戻り、今日の準備に取り掛かった。

「はいはい。あーあ、せっかく時間かけて作ってもこんなに早く食べちゃうと面倒に感じるわ。」

ヒロの母はガチャガチャと食器を洗った。


ヒロは小さな腰下げ鞄に何を詰めようか悩んでいた。とりあえずぎゅうぎゅうに筆箱を詰め、財布をいれ、最後に昨日の宿題を入れた。こんなものか、とヒロは家を出た。


時刻はまだ九時四十分であった。美紅が現れるにはまだ二時間近くも残っていた。しかしはやる気持ちを抑えることはできず、学校へと向かった。

グラウンドは正門から見ると校舎の向こう側にあるため、校舎に入るまでに誰にも会わなかった。

視聴覚室に向かう途中もわずかに体育館の方から掛け声が聞こえるに限った。どうやら文化系の部活はまだ休日活動に入っていないようだ。


三階に上るともう雑音はほとんど聞こえなかった。少し教室を除くと、ポツポツと自習する人がいるほどで、誰もいない部屋も多かった。四階もまた静かな空気が流れていた。視聴覚室の前に立ちノブを回した。しかしノブは途中で止まり開くことはなかった。二階の職員室まで戻り鍵を受け取り、今度こそ開いた。当然のごとくその部屋には誰もおらず、実に澄んだ空間のように映った。


部屋に入ったヒロはせっかくだから部活らしいことをやろうと、謎解きづくりをすることにした。スマホのメモ帳を開いて何か面白いことはないかと天井を見上げた。


何も思いつかない。


-何から考え始めればいいんだろうか。クイズの始まりってどんなのだったっけ。思い出せ思い出せ…

あれこれと今まで解いてきた謎は思い出せたが、新たな謎を作るのに繋げることはできない。ああでもないこうでもないと、真っ白なメモ帳のページを前に、ヒロは外から見れば頭の悪そうな顔をして考えていた。

十時を少し回った時、部屋の扉が開いた。


-美紅だ!

そう思ってヒロは大きな声で明るく

「よう!」

と言った。

残念ながら、先輩相手にこういう表現は不適切かもしれないが、正直に残念ながら松戸であった。

「おう、ヒロ。残念だったな、吉井じゃなくて。」

「え?」

ヒロにはなぜ残念だったことがバレたか分からなかった。しかしヒロが先輩相手に「よう」と声をかけるような人ではないことを知っている松戸にとっては、美紅を待っていたことなどバレバレだった。

あえて松戸は突っ込まず、そのことはそれで終わらせた。

「随分早いな。何してたんだ。」

「いや、謎解きを作ろうと思って。」

「なんかできたか?」

「まだ全然。思いつきもしないんですよ。」

「まあ、そのうちできるよ。思いつかないなら今はひたすら問題解くだけだね。」

「そうですね…そういえば、先輩って昼過ぎに来るんじゃなかったんですか?」

ヒロは一番気になることを聞いた。本当はこの後「昼過ぎならこっちは嬉しかったのによ!」と文句の一つも言いたかったが、さすがにやめた。


「いや、ホントはその予定だったんだけどね。午前中は塾に行く予定だったんだけどよ。勉強道具忘れたからこっち来たわ。」

松戸のウッカリを恨みつつも、一人ではなくなったことに若干の安心を覚えた。

「そうだ、ヒロはあれ解けたか?」

「ええもちろん。」

「ほう。答えは?」

「グリニッジ天文台ですよね。」

「おお、やるじゃねえか。もしかしてミスサ来てから全部正解してるんじゃね?」

思い返せば、いくらかヒントを受けたものもあったが、しっかりと答えを出して終わっていた。

「そうですね。ヒントを貰ったのもありましたけど。」

少しばかり自慢げに答えた。

「そうか。やっぱりあのポスター読んだだけあるよ。」

「ありがとうございます。あとは謎解きを作る側に回れればいいんすけどねえ。」

「仕方ねえ。少しだけ作る方法教えようか。」

「お、お願いします!」

松戸が席を立ち上がると同時に扉が開いたら。

「おはよう、ヒロくん!あれ?松戸先輩。」

「なんだ、二人に俺は邪魔だったか?」

美紅にはその意味はよく分からなかったので、聞かなかったことにした。

「何かするんですか?」

「ああ。ヒロが謎解きづくりをしたいっていうからな。ちょっと作り方を説明しようかと思って。」

「私も聞きたいです!」

美紅は手を上げてさっさと席に座って松戸の方を見た。

松戸はボードマーカーを手にとってクルクルと回して教師のように振る舞った。


「よしゃ。二人のために教えようか。」

「お願いします!」

二人は授業始めのように頭を下げた。


「まず、謎解きにはタイプがあることを知っとかなきゃいけない。苦手なタイプがあることを知れば対策にもなるから、作らないにしてもこれは知っとくべきだな。」

松戸はホワイトボードに書きながら説明した。

「まず、パスコードタイプ。数字を答える問題。数字の問題で多用されるのはこれ。まずデジタル表示。全く異なる数字に少ない手順で簡単に変えることができるから問題作りにはもってこい。次に法則。これは数字以外でもあるけど。法則系はいくらでも作れるからこれも簡単。あとは当てはめ系。これは原子番号とか五十音表とか画数とか、そういうものに当てはめる。法則系との合わせ技も時々あるな。これらがコードを見つけるのには役立つ。」

ボードには箇条書きがされていった。

「あ、そこの棚にコピー用紙あるから使っていいぞ。」

と言われたので

「はい。」

といってヒロは取りに行き、美紅にも渡した。

「ありがと。」

「おう。」

「んじゃ、続けるぞ。次はパスワードタイプ。特定の言葉を見つける問題。これにも種類がある。まずは日本ならではの変換。平仮名を片仮名とか、アルファベットとか。次に空白によるミスリード。特に英語で多いね。一つの単語と思ってたらそうじゃなかったみたいな。後はパズルタイプ。パズルを解いたりすると、特定の文字が残って、それが答えみたいな。これは他の謎解きとミックスで使えるからちょっとした大会みたいなイベントではオススメだね。パス系はこの二つがほとんど。」

「なるほど、何を作るかジャンルから決めれば目的がはっきりするから楽ですね…」

「その通り。さて、次は言葉遊び系。アナグラムとか、同音異義語、同音異義文とか。これは作るのがかなり大変。この問題をスイスイ作れる人はそうそういないと思うな。最後に暗号文だな。これを作るときは解答から考えるといい。」

「それは他のもそうじゃないんですか?」

美紅が不思議そうに聞いた。

「いやいやそんなことはない。それ以外では物理的にできる答えとできない答えがある。まあ作ってるうちにわかるけど。『あれ?この答えならいけんじゃね?』って感じだな。暗号文は暗号の手法より解答から考えて、それに合わせられるように暗号を考える。ぶっちゃけ暗号に関しては発想力次第だからな。数こなすしかない。」

「なるほど。大会とかで作る謎はどうすればいいかとかありますか?」

「確かにな。ヒロもそのうち作るかもだからな。終わった後のウケの良さを求めるならそれまでに使った問題や解答をもう一度使うのが喜ばれるな。伏線回収的な。小説だって伏線回収があれば気持ちいいだろ?」

確かに、と二人は頷いた。


「俺から教えれるのはこんなもんだな。そうだ、今日はせっかくだしみんなで謎解き作るか!今日一日で作って解きあおう。」

松戸の提案に不安を感じるヒロだったが

「物事やらなきゃ成長できねえぞ!」

という言葉に背中を押されて、実践することとした。


次回から三人がそれぞれ作った謎が登場します。

読者の皆さんはミステリーサークルに勝てるかな?


追記:最近文が長くなりました。簡単に十枚に達してしまった…

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