第十一章 〜天才を追って 〜
所用で投稿遅れました。実は新宿にできた「Mystery Circus」という謎解きイベントパークへ行ってきました!毎日開催してるようです。謎好きのみなさんも是非行ってみてください。一日中楽しめました。
リアル脱出ゲームは3戦2勝1敗。これからも謎を解くぞ!
「香坂さんはこのサークル、いや、謎解き界で半ば伝説のような人だった。」
近藤はゆっくりと顔を下げて思い起こしながら話し始めた。
「これは俺の二つ上、つまり香坂さんの先輩から聞いた話。香坂さんはサークルに入った時からすでにとんでもない天才だったという。先輩が用意してた問題をあっという間に解いてしまったらしい。どんなクソ問でも、どんな良問でも、すぐに解いてしまったという。頭の良さは謎解きにとどまらない。高校への入学はもちろん、行われるテストは常に全国一位。特に数学は凄まじい才能を見せたらしい。数学オリンピックの出場を何度も勧められた。先生じゃないぜ?全く外部の人。ぜひその場所で香坂さんの力を見たいって人たちが勧めるんだ。それくらい凄い人だった。この高校じゃ、少なくとも今の二年生までなら知らない人はいないよ。」
「そ、それは凄まじいですね。」
「そうよ。私のクラスでも知らない人いないわ。ヒロくんにもあって欲しかったわ。」
「この通りさ。でも、香坂さんは数学オリンピックには結局でなかった。それどころか検定モノは何一つ取らなかったんだ。その理由を聞いたらなんて言ったと思う?『俺は謎解き以外で熱くなれない。数学とか漢字とか物理とか、それらを勉強したのも詰まる所謎解きに有利だからってだけだよ。』だってさ。謙虚を通り越してバカだよな。あれほどの頭の良さを持つともう常識は通じないんだよ。」
「で、謎解きの方では何か活躍はなかったんですか?」
美紅は若干前のめりになりながら近藤に尋ねた。
「そりゃ、無いわけがない。それが一番君達にも話したかったことなんだ。」
近藤は
「ちょっと休憩!トイレ行きたくなっちまった。すぐ戻るよ。」
と言って部屋から出て行った。
視聴覚室ではヒロと美紅はもちろん、木坂、松戸、古賀の三人も息を呑んだまま近藤の帰りを待った。部屋はなんとも言えない空気に包まれていた。外の地上にいる野球部やサッカー部の声が響いてくるほど、澄んだ沈黙であった。
近藤輝樹が部屋へ戻り、教卓の上に座って話を戻した。
「テル〜おせーよ!」
古賀が待ちくたびれたようにいう。
「悪いな。じゃあ、始める。香坂さんが謎解き界で有名になったのはインターネットの力なんだ。」
「謎解きサイトでも始めたんですか?」
「まさにヒロの言う通り。香坂さんは高校に入学して一週間後、謎解きサイト『コウサカナゾノモリ』を立ち上げた。最初はポツポツと人が来る程度。しかしそれはSNSの力で一か月にして入場者は一日あたり百万人を達成した。毎月謎を追加するからそこそこ安定してたしな。さらに香坂さんの作った謎はレベルが絶妙だった。解けば解くほど難しいものに挑戦できるのだが、その到達人数が実に綺麗なピラミッドになる。それほど美しいレベル配置だったんだ。特に最終問題は超難問で毎回十人前後しかクリア出来ないんだ。そして、香坂さんはもう一つ面白い事を宣言した。それがアシスタント募集だ。やってみたいか?」
「もちろんです!できる事なら!」
とヒロは声を張り上げた。
「この募集の魅力は年齢、性別、学歴、職種、全く関係なし。しかも収入は月五十万。働く時間も僅かなんだ。」
「でも、そんな資金を香坂さんは持っていたんですか?」
ヒロが聞く。
「当然だ。なんたって入場者が毎日百万近いんだ。広告収入が半端じゃなかった。これは噂だけど、香坂は『奨学金を受け取れない』って冗談交じりで言ってたらしい。あいつの家は普通の家だから多分広告収入が原因なんじゃないかってね。真偽はともかく、確かに金はあったらしい。で、なんたって採用条件。これがアホみたいに無理なんだ。それが『最終問題に二回到達』だとよ。先着三人まで。しかし当然こんな条件クリア出来る人なんてそうそういなかった。ところが二年後、つまり香坂さんが三年生の時、一人の人間がこの条件を満たし、その下で働くことになった。それが、三橋紘平という人物。知ってる人いる?」
「おい、それマジかよ。」
そう言ったのは松戸だった。
「さすが会長。ご存知でらっしゃるか。」
「日本最高のクイズ作家じゃねえか。」
「ご名答。三橋紘平はそれをSNSで呟き、それはあっという間に謎解き界に広がった。なんと香坂さんは高校生の身で日本最高のクイズ作家と呼ばれた人間を配下に置いたんだよ。それほどまでにすごい人間なんだ。香坂さんは。」
五人は唖然としながら近藤の方を向いていた。
ヒロがその沈黙を破って近藤に聞いた。
「そのサイトってどこにあるんですか?」
「ふふ、実はな閉鎖しちゃったんだよ。」
「どうしてですか?」
ヒロはぐっと身を乗り出した。
近藤は落ち着いたように答えた。
「彼はインターネットでの配信をやめた。理由は『謎を解く人々を見れないから』だってさ。高校時代は時間もそうなかったから配信してたけど、大学に進んだ今、香坂さんは時間に余裕ができた。まあ噂じゃ、大学に行ってないらしいが。香坂さんは毎回色々なところで大会を開いているんだよ。しかしその大会ってのもまた不思議なんだよな…」
「というと?」
ヒロが聞くと落としていた顔をゆっくりとあげながら言った。
「どこで開催されているのか、謎を解かなきゃわからないんだよ。しかもその謎を受け取れるのもまた、香坂さんと三橋さんの選んだ人。つまり、なんらかの形で有名になれなきゃ香坂さんには会えないんだ。」
「近藤さんの力でなんとか…」
「俺はあれから連絡とってない。松戸なら今回問題を貰ったんだし知ってるんじゃないのか?」
近藤はそう聞いたが松戸は手を横にして首を振った。
「これはチャットで送られてきたんだ。メッセージも全部。実は会ってなかった。会えないかって言ったけど振られちゃったよ。それ以来既読すらつかない。そしてついさっき、香坂さんのチャットのプロ画像が無名になっちゃった。」
こう言った後、机をバンと叩いて立ち上がった。五人はビックリしてそちらを一斉に向いた。
「よっしゃお前ら。今年の目標は香坂さんに会うことにしよう。その前段階として謎解きで有名になろうじゃねえか!」
五人は
「そうだな!やろう!」
などと言ってから少ししんとした。
「で、何すればいいんだよ。」
古賀が冷静にいった。すると松戸が
「そうだ!」
と言いながらパンフレットを鞄から取り出した。
「これに行くぞ。」
木坂、古賀、近藤は「ああ」といった。
一年の二人は訳が分からず目を細めた。
「ズノウクエスト?なんですかこれ。」
ヒロがそう尋ねると松戸は答えた。
「夏に開かれるいわば謎解きイベントだ。舞台は東京。毎回どこかの区の全体を舞台にして謎解きが行われる大イベントさ。取り敢えずこれをクリアする。」
「でも、それだけで見てもらえるんですかね。」
「それだけ?甘く見るなよ!」
古賀がそういった。
「俺たちも去年参加した。参加は高校生以上二十五歳以下だからな。んでこれは六人で一組。競技時間は実に二日間まるまる。二十四時間チャレンジできる。俺らはこの四人に松戸の友達の三原って奴と飯島っていう別の高校の美人さんを加えて行った。ちなみに、松戸の彼女だ。」
「余計なことは言わんでいい。」
と、松戸は横槍を入れた。それを古賀は無視して続けた。
「だけどクリアは無理だった。参加したのは二五〇組を超えた。そんな中クリアしたのは三組。そのうちの一つには、もうわかるな?香坂さんの姿があった。」
「香坂さんスゲェ…」
ヒロの心からの声が漏れた。
「マジでスゲェだろ。これクリアしてやろうよ!今年こそ!ちょうど六人だし!」
この時六人は闘志に燃えた。
そして松戸は答えた。
「よし!そしたらそれまでの間に謎解きの力を溜めるぞ!」
そういって鞄から紙を取り出した。
「んじゃ、これ宿題。ちゃんと解いてこいよ。今日は解散!ああ疲れた。」
そういって松戸は紙を机に置くとさっさと部屋を出た。
「仕方ないわね。」
「ほんとほんと。」
「付き合ってやるか。」
と木坂、古賀、近藤は言って紙をとって帰宅してしまった。
部屋にはヒロと美紅が取り残された。
ヒロは気付いた。
-チャンスだ!
「ね、ねえ美紅…さん…」
「どうしたの?獅子目くん?」
「あの…さ…謎…」
「ああ、そうね!私たちも急がなきゃ!」
と言って美紅は紙をとってヒロにも渡した。
「あ、ありがと。」
「うん。じゃ私も家に帰ったらすぐに解くわ。獅子目くんも頑張って!」
と言って拳を胸の前で合わせた。
「お、おん…」
とヒロは見惚れた。
「じゃあね!」
美紅は手を振りながら部屋を出た。
一人になったヒロは美紅を思い出しながらボーッとした。
-これ、この紙を手渡した。ちょっとだけ手が触れた。やばい、やばすぎる!
胸を押さえながらイカンイカンと帰る準備を始めた。謎がチラッと見えた。
fig11. もういいかい?
「うげ、これまた短い問題だな。余白がもったいないや…」
そう独り言を言ってヒロもみんなの後を追って帰路につくことにした。
はてさて、ふと小説情報を見るといつの間にブクマ6件!みなさん、本当に本当にありがとうございます!
この6名の方、そして読んでくださる方、まだ出会っていない方、みなさんのために執筆頑張ります!
それでは今日の謎も解いて行ってくださいね。




