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君のいない世界を
眠っている彼女の顔を、僕はなでる。
氷のように冷たく、心が凍りそうになるが、いつも、触れていた柔らかい肌は変わらない。
その瞬間、時が止まったように感じた。
もう彼女は、この世にはいないことを実感したが、涙が出ない。
彼女を送り出し、火葬も終わり、家に帰る。
友達に、飯でもと誘われたが、ご飯ものどを通らない。
とにかく、疲れた。
自分の部屋に入り、ベッドに倒れこむとすぐに眠気が襲ってきた。
このまま自分もなんて考えながら、意識を手放した。
「起きて。綾人。」
声が聞こえる。
4年間聞いていた大好きな声。
夢か。そんなことを考えながら、もう一度意識を手離しそうになるが、
「起きてってば。帰るよ。」
さっきよりはっきりした声が僕の意識を覚醒させる。