第四話 初めての海
四日目です。
前回の移動で一日半使ってるので、漁は翌朝になりました。
早朝に桟橋まで行ったら、皆さん既に準備万端でした。
そうそう、昨日言った穴の件ですけど、
とりあえず全員乗れるだけの救命ボートは載せてあるそうです。
海も見た事ない人間が船無しで陸に帰れるわけがないですから、退路の確保は重要ですね。
穴が開いたら魔法で魔物をどうにかしながらボートで全力で逃げましょう。
ただ、出来れば氷系の攻撃魔法で応急処置をして欲しいとの事。
でも、本来攻撃魔法はそういう用途ではないから、まあ、出来ればって事で。
早速海へ出ます。
今回は戦力に不安があるのでそこまで遠出はしません。
小型の船で網を引き、それを陸で引っ張る地引網です。
魔物のいる海でそんなのやったら網が破れるんじゃないかと思いましたが、
この網は相当昔から伝わるとても丈夫な特別製の網。
きっと生成魔法か何かで作ったんでしょう。
丈夫な船もあればよかったんですが、残念ながらそれはありませんでした。
船なんて穴が開かなくてもひっくり返れば終わりですからね。
単に作らなかっただけかもしれませんが。
小型の船に同乗したのですが、思いの外何も起こりませんでした。
遠くに魔物っぽい影とかもありましたが、長居して船が沈んでも問題なので、無視してさっさと網を引きます。
友人は海上では役立たずなので陸で待機です。
網を引き終わり、これから皆で引っ張ります。
ですが、俺と船を操る船員だけは小型船に待機します。
網を引くのを見ていると、妙に網が重くなります。
急いで網の中を見に行くと、そこには案の定魔物の姿が。
網は丈夫だし、多少魚が傷ついても構わないとの事なので、魔物に向かって攻撃魔法を放ちます。
ひとまず凍らせてみましたが、そこまで応えているようには見えません。
けれど、暴れる力は弱まったので網が再び動き出しました。
他にも魔物を凍らせて回っていると、網の底が浅瀬までたどり着きました。
魔物も網に絡まっていますが、流石にこのまま近付くのは危険です。
ザバザバと海に入っていった友人が何度か剣で網ごと魔物を叩くと、上手い事魔物だけが倒せました。
……どんだけ丈夫なんだろうね、あの網。
その日獲れた魚をご馳走になった後、魚の干物を報酬として少し貰いました。
当面海はいいかなあ。