第二話 ちょっとそこまで
最初の目的地はすぐ隣の村。
一番最初に目指す場所として一般的なので、何となく俺らの村の事情を知っています。
門番にも気さくに声をかけられ、宿屋と簡単な依頼が掲示してある掲示板の位置も教えてくれました。
宿屋は南北に二つある門の周辺。掲示板は村の中央。
肩慣らしとして近所の森の薬草調達の依頼を受ける事にして、あとは街をぐるっと回って初日の今日は休みました。
二日目です。
肩慣らしと言いましたが、この依頼は挨拶を兼ねて最初に受けるお約束みたいなものです。
俺達の村の近くにも薬草の群生地があります。
しかも、こちらの森よりも安全な所によりたくさんあります。
戦闘訓練によってかなりの需要が生まれているので、他に売るほどはありませんが。
そうやって見慣れた物なので、薬草だけはまず間違える事はありません。
そして、こちらの森では薬草以外にもいろいろなものが採れます。
見習い勇者達に道案内をするついでに採れば、安全にたくさんとる事が出来ます。
そうやって利益を得る代わりに、ここの村人達は勇者達の良き相談役になります。
え、自分の村? 無理無理相談なんかできません厳しすぎます。
こっそり幼い時に年長者の力を借りてここまで来るのもよくある事です。
幼い足では行くだけで一日分の力を使い果たすので、滞在合わせて三日以上かかりますが、そこは不思議と黙認されているようです。
昨日は街を回りましたが、昔散々泣き言を言ったじいちゃんは今でも元気でした。
さて、今日俺達を案内してくれるのは、俺達と同じぐらいの年頃の少年とその妹さんです。
少年さんは妹がいつまでもべったりで自立しようとしてくれないと言っていますが、
ぱっと見た感じ妹さんの方がしっかりしていて、お兄さんをきっちり守っているようでした。
友人と一緒に、お兄ちゃん頑張れとだけ言っておきました。
少ないですが、これで当面の路銀が手に入りました。
いざとなったらサバイバル技術で野宿とかでどうにかするので、少なくても十分です。
初めての旅だと言うのに、一日分の宿代とサバイバル訓練だけとかどうなんでしょうね。
これで治癒魔法とか浄化魔法の使い手がいなかったら、薬代だけで全部飛んでましたよ。
ここで回復系魔法三種類について説明しておきましょう。
回復系魔法は大きく分けて、治癒魔法、浄化魔法、回復魔法があります。
治癒魔法は通常の切り傷や打撲、火傷などを治します。
対象の回復速度を速めているため、対象の体力を奪うので注意が必要です。
また、毒などの周りも早めてしまうので、あらかじめそこも確認しなければなりません。
怪我の種類や体の構造を知っていると効果を上げられるらしいです。
浄化魔法は毒や麻痺、睡眠などの状態異常を治します。
使えば何でも治ると言う訳ではなく、状態異常の性質を正確に理解する必要があります。
毒の種類まで知っていると効果が上がるとか。
こんなのを覚えているわけですから、友人も馬鹿ではないんですよ馬鹿では。
回復魔法は体力を回復させます。
通常は寝れば回復するようなものなのであまり必要はないんですが、
戦闘中などに使うと踏ん張りがきいたり、死にかけた人を持ちこたえさせたり、ここぞで効果を発揮する事もあるようです。
何故か他の魔法を使っている時に使うと、そちらの威力が上がる代わりに本来の回復効果がなくなります。
間違っても攻撃魔法や幻惑攻撃を受けている時に使ってはいけません。
さて、次は護衛依頼を受けつつ次の街を目指すとしますかね。