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システムナビゲーションと一緒!  作者: ハヤニイサン
第一章SYSTEM NAVIGATION
7/29

シスナビとの語らい Together forever

「よし!

 じゃあ、俺の【能力値】について訊いていきたいけど、

 単刀直入に〈Immortal〉ってどういう事なのかな?

 俺的には、不壊とか、不滅、不変って意味に思ってる。

 ただ、これだと【耐久値】と【初期装備】にしか

 効果としてはピンと来ないんだよね。」


『こちら側の次元の認識においては、

 ケンタロウ君の言葉が全てだと思います。

 もう一言付け加えるなら、

 高次元由来の(・・・・・・)エネルギー(・・・・・)を供給されている状態の事です。』


「高次元由来のエネルギー?

 それを供給されている状態が〈Immortal〉…

 その状態に因って、今俺は不死(・・)になっている…と。」


『そうなります。

 また、供給されているといっても

 過剰な供給や供給が不足するといった事は無く、

 過不足せずに間断なく供給されています…けど、

 〈Immortal〉についてはあまり深刻に考えなくてもいいですよ。』


「いや、俺としてはもう少し突っ込んで訊きたい。

 その供給とやらは、此方からは断つことは出来る?

 それと、俺なんかが高次元由来のエネルギーを拝借しちゃってて大丈夫かな?」


『供給は断つことは出来ません。

 〈Immortal〉自体が本来、

 【初期装備】にしか付与されないにも拘らず、

 全ての【能力値】に付与されている状況は、

 完全にイレギュラー(・・・・・・)なので、

 【システムナビゲーション】の機能を用いても出来ません。

 また、エネルギーを強制的に流入させている件ですけど、

 全く問題ありません。

 この場合、高次元由来のエネルギーの絶対量が問題になるわけですけど、

 この次元の感覚で言えば、

 宇宙規模の超エネルギー量が存在すると考えてもらえれば理解できるでしょうか。』



 身から出た錆…か。

 意図しないバグ(・・)で浮かれてたからなぁ。


 まぁ、シスターシャも高次元生命体だし、俺も同じ次元に依存しているとすれば、それはそれで怪我の功名だ。

 これに関して、シスターシャと良好な関係が築けそうな現在、

 俺はそこまで気にしていない(・・・・・・・)



「ありがとう、今まで懸念してた事が解ったよ。

 〈Immortal〉がエネルギーを供給されている状態だって解ったけど、

 更に疑問が湧いて来たんだ。

 要は、高次元からエネルギーを賄えている状態なんだから、

 この次元からはエネルギーを摂取しなくても大丈夫なのかな?」



 俺の言葉に少し考えながら、シスターシャは話し出す。



『……それについては、

 ケンタロウ君の場合は、食事等を何時も通りに摂取した方が良いと思います。

 …というのも

 ケンタロウ君は高次元由来のエネルギーを供給されているといっても

 高次元生命体ではありません。

 飽くまで、この次元の肉体に依存(・・・・・)していますので、

 肉体維持に必要でない物質は、高次元由来のエネルギーから生成されません。

 ……しかも、生成されませんので、段々と人らしさ(・・・・)を喪失して行くかもしれません。

 なので人間らしい活動(・・・・・・・)を望むなら、摂取した方が良いのです。

 因みに、私は元々、この次元に肉体が存在しない(・・・・・・・・)

 高次元生命体なので、問題ないですけど…』


「そっか、これは危なかったかも…

 俺の場合、検証と称して、

 食事を摂らなかった可能性は十分あり得るから。

 意識してなかったら、恐らくドンドンと人を辞める事になってた。

 本当に君の心添えは痛み入るよ、シスターシャ。

 なるべく緊急時以外は摂る様に心掛けるね。」


『…いえ、私も盲点でした。

 ケンタロウ君は〈Immortal〉について

 心配していた様子だったので、

 私はこの話題を早めに切り上げる事ばかりに気が行ってしまって…

 ケンタロウ君が深く掘り下げなければ私は……

 悔やんでも悔やみ切れなかったかもしれません…』



 そう言って、彼女は目に見えて落ち込んでしまった。表情を曇らせて俯いてしまったのだ。

 

 俺は、そんな陰った表情など見たくないので、あまり深く考えずに、少し勇気を振り絞って気障なセリフを言ってみることにした。



「シスターシャ、顔を上げておくれ。

 君には、笑っている顔が一番よく似合うよ。

 君は、俺が言及しなければ気付けなかった

 と思っているかもしれないけど、

 俺の方こそ、シスターシャが居てくれなかったら、

 と思うとゾッとする事ばかりだ。

 何より、君の心遣いが堪らなく嬉しいんだ。

 まだ出会って全然時間は経ってないけど、

 俺は君が傍に居ない世界なんて考えられなくなってるぐらいだよ。」



 うわーーーーーーー 言っちまった!

 

 なんて気障なセリフを…

 何が顔を上げておくれ。だ。

 何が笑っている顔が一番よく似合うよ。キリッ だ。

 何が君が傍に居ない世界は考えられない。キリリッ だ。


 ああー 言った自分が気持ち悪い。顔も気持ち悪いと来れば、下手したら言われた方は吐いちゃうレベルなんじゃないんですかね!?

 ヤバイなー 遠慮なければ近憂あり、とはよく言ったもので、これは気の迷いから出た言葉だ。

 ちょっと彼女が俺に対して好感触だからと言って調子に乗ってしまった…



『フフフッ

 ケンタロウ君、ありがとうございます♪

 ケンタロウ君の真摯な優しさが

 物凄く伝わってきましたよ。

 私もケンタロウ君と契約出来て良かったって

 心の底から思いました。』



 そう言って顔を上げた彼女はいつも通りの、いや、憂いの表情からのギャップ故か笑顔が輝いていた。


 痕はないが…もしかしたら、頬を濡らしていたからかもしれない。

 

 そうであるなら、俺は恥ずかしい思いをした甲斐があったというものだろう。

 そうであればこそ、悔やんでも悔やみ切れなかった出来事に発展していたかもしれないのだから。


 おしっ!今回は遠慮なければ近憂もなし。



「うん!

 やっぱり、シスターシャには笑顔が一番だ。

 もう大丈夫そうだね。」


『はい!

 ご心配をお掛けして、ごめんなさい。

 心機一転、

 張り切ってケンタロウ君の訊きたい事に答えていきますね!』


「その意気や良し!

 と言っても後訊きたい事は……

 あっ!そうだ。

 【魔力値】というか、魔法?魔術?はあるのかな?」


『…済みません。

 魔法や魔術といったモノはシステム外の事らしく、

 私には解りません。

 但し、魔力についてならこの世界のシステム範囲内なので説明できます。』


「いや、いいんだ。

 魔力って言葉から魔法とか魔術って連想しただけだから。

 それじゃあ、魔力について教えてくれるかな?」


『はい。

 まず、魔力は魔素と呼ばれる物質(・・)、から生成されるエネルギーです。

 といっても厳密には物質ではないんですけどね。

 魔素自体は、高次元のモノで、

 こちらの次元が物質…もっと言えば素粒子で構成されているように、

 高次元においては、物質では無く、魔素で構成されています。

 ここまではいいですか?』


「うん。

 高次元には、物質が存在しないんだね。

 その代わりに魔素が存在している、と。

 あれ?魔素が高次元のモノなら、

 〈Immortal〉に因って供給されているエネルギーは魔力とは違うの?」


『違います。

 端的に言えば、

 高次元由来のエネルギーは魔力の完全上位互換です。

 そもそも、高次元生命体は、魔力を用いません。

 主要エネルギーとして使うと様々な問題を生じさせますので…

 使う場合というのも嗜好エネルギーとしてだけですね。』



 うーん……

 〈Immortal〉状態で供給される、高次元由来のエネルギーを〈SE〉と呼べば、区別し易くなるかな?

 〈SE〉というのは、シスターシャエネルギーの略。システムエネルギーでも可。

 決して、システムエンジニアや効果音では無い、況してや妹エネルギーなどでは断じて有り得無い!……ちょびっといいと思ったのは秘密だ。



「これから、魔力では無い高次元エネルギーの事を〈SE〉

 って呼んでいくことにするね?

 …で、魔力は此方側の生物しか使ってないと。

 だけど、何故魔力…魔素が此方側にあるのかな?」


『〈SE〉ですね、解りました。

 魔素についてですけど、

 此方の次元と高次元を繋ぐ場所がこの世界の何処かに点在していて、

 その地点から、この世界へと魔素が流入しています。

 勿論、移動するのは高次元からだけです。 

 それで、この世界では、生物の体内で、

 魔素からエネルギーとして魔力が生成されます。』


「ふぅーん…

 まさか、高次元から魔素が流れ込むのは、

 高きから低きに流れるっていう真理が適用されているのかな…

 しかも、恐らく、その流出分ぐらいなら問題は生じないんだろうし。

 そんで、魔素を体内で魔力に変換か…

 …ちょっと待って、

 俺の場合はどうなんだろう?

 【魔力値】が〈Immortal〉で〈SE〉が供給されてるんだけど?」


『ケンタロウ君の場合は、

 〈SE〉が魔力の完全上位互換なので

 〈SE〉だけですね。魔力が入る余地はありません。

 この場合なら、何も問題は生じないので安心してくださいね。』


「うん、ありがとう。

 それで、ついでに訊きたいんだけどさ、

 〈SE〉って具体的にはどんなエネルギーなの?

 魔力は魔素を元にしたエネルギーって事は解ったけどさ。」


『難しい質問です。

 まず、〈SE〉はこの次元に存在していないので、

 概念として説明しにくいのです。

 説明するにしてもこれ以上の説明は出来そうにありません。

 対して、魔素の場合は、この次元にも存在しているので、

 比較的説明が容易なのです。』


「はぁー

 ホントに次元が違う話なわけね…

 ありがとう、よく解ったよ。

 …さて、当面の訊きたい事は訊き終わったけど、

 最後に…認知じゃない認識(・・)についてもう少し詳しく訊きたいな。」


『そうですね…

 ケンタロウ君は【器用値】について考えた事はありますか?』


「あぁ、あるよ。

 【器用値】のおかげ(・・・)で莫大な【筋力値】を制御できてると考えてたけど。

 違ったかな?」


『いえ、ある側面においてそれは正しいです。

 但し、制御しているわけではありません。

 ケンタロウ君の場合は、

 高すぎる【器用値】が逆に()となって、

 莫大な【筋力値】を上手く引き出せないのです。』


「えっ!?

 おかげじゃなくて、枷?

 もしかしたら、これが認識の問題なのかな?」


『はい、その通りです。

 この場合なら、認識ではなく

 ケンタロウ君のこれまでの常識(・・)や固定観念と言った方が解りやすいかもしれません。』



 なる程ね…

 確かに、俺は常識に囚われているのだろう。

 例えば、この加速空間において普通に動けたのは、普段通りに動けるのが当たり前(・・・・)だと思っていたからだ。

 この場合は、良い方に働いたが、これからも良い方向に働くとは限らない。



「つまり、この常識を改めなければ、

 十全に能力を発揮できないってことだね。

 正直、難しいような気がするな…

 この年になると、そう容易くは常識なんて覆せなくなるから。」


『ケンタロウ君…

 そうですねぇ……』



 そう彼女が呟いた後、何か考え始めてしまった。



 まぁ、シスターシャの事だから、俺に自信を持たせる為に何か考えているのだろうと察することは出来る。

 シスターシャの考えそうな事は、短い付き合いながら、多少解るようになったつもりである。


 そうなのだ。体感時間でも1、2時間ほどしか経っていないのではないだろうか。実際の時間なら、言わずもがな。

 そんな短い時間ではあったが、シスターシャが俺の前に現れてから今の今まで、どれ程俺に影響を与えてくれたか…俺は計り知れない。


 劇的だ。劇的に過ぎる。この出会いが俺にとっての薬であったとしても、その薬が劇薬であったのなら…

 可愛さ余って憎さ百倍。これだけ劇的であれば、感情の変転もまた劇的になるかもしれない。


 たとえそうだとしても、明日の事を言えば鬼が笑う、以前に俺が笑う。ちゃんちゃら可笑しい。

 

 そりゃあ今は、惚れた欲目が勝っているかもしれない。これから、様々な側面を見せてくれるだろうし、俺も見せてしまう。

 だからこそ、一瞬一瞬もまた大切にしていく事が求められる。この想いを大切に育んでいく必要がある。



『…そうです!

 ケンタロウ君の今掛けている眼鏡を外してみましょう!

 その際に、そのままの風景を想像しながら外せば、

 外したままでも視界が良好な筈です!

 コツとしては、

 信じる事…自分を信じて外せば、

 必ず出来るはずです!』


「なる程ね。

 外しても視界がボヤけなければ、

 俺は常識を打ち破った事になるワケか。

 よし!

 じゃあ、やってみるね。」


「ケンタロウ君!

 頑張ってくださいね!」



 であればこそ、今の俺は全身全霊をもってシスターシャの期待に応えなければならない。いや、応えたい。シスターシャを信じる。いや、信じ抜く。


 こんな眼鏡を外すだけの事でこれ程の決意がいるとは慮外の事ではある。


 だがしかし、この後、言わなければならない(・・・・・・・・・・)セリフの事を思えば何のその。


 これぐらいの常識は簡単に打ち破って…ブレイクスルーして、次のセリフに弾みを付けよう!


 次に繋げる為に、俺はシスターシャの顔を正面に、眼鏡を外したあと間髪を入れず、直視が出来る体勢を取り…

 眼鏡の蔓に手を掛け、外しつつ…



「シスターシャ。改めて聴いてもらいたい事がある。」


『はい。』




 俺は、シスターシャの輝くほどに整った(かんばせ)や透き通った肌理細やかな肌、煌きを放っている瞳の光彩を、己の漆黒の瞳に刻み付けながら…




「ナターシャ=シスターマ。

 これからも俺と共に歩み、導き、支え合って、ずっと(・・・)傍に居てください。」




 そう言ってのけた。




『ケンタロウ君…

 私も貴方に改めて伝えたい。

 私は高次元生命体です。この世の人為らざるモノです。

 それ故に、ずっと(・・・)、という言葉に憧れの様な畏敬の念を抱いています。

 ケンタロウ君は意図せずに使っていたかもしれませんけど、

 ケンタロウ君のずっと、にはこの上ない強い思いが感じられたのです。

 先程も…以前の時も…

 ケンタロウ君。

 私は、私自身がケンタロウ君と共に…一緒に居たいと心から思っています。

 だから、私からも言わせてもらいますね。


 ノボリバタケンタロウ君。

 これからも、ずっと貴方の傍に居させてください。』




 彼女は…シスターシャは、はにかみと畏れの感情が入り混じった何処かぎこちない、輝きではなく瞬きの様に儚げで、それでいて希望に染まった、今までで一番の笑顔をつくる。



 その笑顔は、まさしく俺の追い求めていた、星の瞬き(・・・・)そのものだ。



 そう認識に至った瞬間、俺の心は歓喜の渦に…光輝の渦に染まった。



 それ以上でもそれ以外でもない




「シスターシャ。ありがとう。

 そして、これからもよろしくお願いします。」


『ケンタロウ君。こちらこそありがとうございます。

 末永くよろしくお願いしますね♪』




 この俺と彼女の告白は、愛の告白めいているが、全く違う。鴛鴦の契りではないのだ。まぁ、俺の方には若干愛が混じっているし、比翼連理ではありたいのだが……


 やっぱり、シスターシャはシスターシャだ。高次元生命体といっても女の子。

 不安がったり…恥ずかしがったり…永遠というフレーズに憧れを持つ、いたってありふれた女性。

 俺の方こそ、彼女の高次元生命体という属性に対して畏怖の様なモノを感じていたのだろう。

 だからこそ、彼女へこの言葉を直接伝えることに恐れを抱いていた。けど……



 

 これで漸く歩き出せる、彼女と一緒に。


 内に煌めく星の瞬きと、彼女と永久(とわ)






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