聖女ちゃん登場
御者の男に連れられて来たのは、至極当然に馬車だった。
しかも、その馬車は今朝一番に擦れ違った箱馬車の様に思える。……何かそこはかとなく面倒事の気配が一層強まったぞ。
コン コン
「例の人物が見つかりました。
連れて参りましたので、ご指示をお願いします。」
おいおい、例の人物って誰だよ?俺だよ、健太郎だよ。……いや、此方ではケントか、いやそれも違う。有名になったのはゴブリン村でのイベントだけだろうから……先程の彼のセリフを考慮すれば、ゴブリン顔が何かに繋がってるっぽいぞ。
「解りました。
此方は整っています。
入って頂いてください。」
そう中から女性の様な声がして、御者の男に促され馬車の中へ。
中に入って馬車の大きさが解った。十平米弱に高さは屈まなければ入れないほど。しかし、木造りのベンチが素朴だが丁寧に前と後ろに対面式で設えてあり、四人程が定員のようだ。
その前方のベンチに一人の女性が腰かけていた。
ふと、後ろを振り返れば、先程の男はもういない。え?今馬車という密室に男と女、二人しかいないんだけれども?
まぁ、別に壁は薄いし、すぐ近くに人は待機しているだろうから安心だとは思うが、行き成りの初対面同士を二人きりにするか?普通、有り得ないだろう。
いや待てよ、ゴブリン村で噂を聞き付けたのなら、ゴブ子を襲わなかった事も聞き及んでいるのかもしれないな…
「行き成りの招待に応じて頂き
誠にありがとうございます。
些か強引な招待になったとお思いでしょうが、
寛大な御心でお許し頂ければ、と存じます。
さて、名乗るのが遅れてもいけません。
私は―――――と申します。
貴方様はケント様で宜しかったでしょうか?」
彼女はベンチから立ちながらそうおっしゃった。
彼女の顔は正に絶世の美女。整い過ぎている程に整っている。髪は所謂ストロベリーブロンドで、ブロンドに仄かな赤みが差している。髪の長さは肩までのボブカット。服装は純白のローブで恐らくはスレンダー。想起されるのは聖職者だが果たして……
ただ一つ重要なのは、十二、三歳の少女に見えるという事だ。俗に言うロリ。若干前言を翻して、彼女は絶世の美少女。
「はい。私はケントと申します。
私の様な卑しい輩に
その様に遜るのは些か問題があると
愚考する次第に存じますが…」
「フフッ
やはり、聞いていた通りですね。
貴方も私にその様に遜らなくてもいいですよ。
私も少々遜りましたが、
少し貴方を試す為でした。
その事についてはお詫びしなければならないでしょうけど。
どうぞ、椅子にお掛けくださいね。」
笑った顔は、花が咲いた様に可愛らしい。殆どの男性…その上、女性も見惚れるほどの可愛らしさだ。
中身は少し無邪気な印象を受ける。やはり、外見通りの少女らしさがあるな。にしても、こんな硬い椅子に座って馬車が走ろうものなら、尻が悲鳴を上げそうなもんだが、とベンチに座って考える。
「いえ、私もこのように試されるのは
あまりいい気はしませんが、
何か理由がおありなのでしょう。」
「むぅ!
もっと砕けた感じで構いませんよ?
もしかして、私の身分を気にしていますか?
それなら、大丈夫です。
こう見えて、
迷宮都市の孤児院の院長を拝命してまだ一年半ほど。
成人して二年程しか経ってない
約十七歳の青女房ですからね。」
年相応なのか?判らないが、体型は多分、一般的に見ても発育はしていない部類だろう。にしても、孤児院の院長は位が低いのか?
「そうで…そうか。
それなら、年下という事だし、
思いっきり見下しても構わないな。
…ふぅ、迷宮都市の官吏なら、
俺もこの馬車で送ってってくれないか?」
「フフッ
勿論構いませんよ。
但し道中、私の話を聴いてもらいますけど。」
ほらきた、案の定何か面倒事をこの少女は連れてきたようだ。まぁ、正直なところ俺は迷宮都市の場所を知らない。無論方角は合っているだろうが、さすがに枝分かれして行くであろう街道を正確に辿る自信は無い。道しるべの様な物はありそうだがな。
そういった事情も考慮すれば、好都合ではある。話を聞くぐらいなら聞いて損は無いだろう。シスターシャ二人だけだと気が狂ってしまいそうだった訳だし。
「……話を聞くぐらいなら。
もしかして、恋の相談かな?
それなら、
俺の顔で察してくれると有り難いんだが。」
「フフッ
恋の相談ではありませんよ。
でも、貴方の顔も含め
大局的に見れば、
決して的外れな相談内容でもありませんけどね。
…さぁ、詳細は明日、移動の最中にでもお話します。
今日は、先程いらした場所に戻って頂いて構いません。
あっ!
御飯がまだでしたら、先程の男に言って頂ければ
何か軽い物を渡せると思います。
では、以上でお開きにしますけど、
何か訊きたい事はありますか?」
「いや、無いよ…
あ、一つだけ。
日が昇るぐらいにこの馬車に来たらいいのかな?」
「そうですね…
いえ、迎えを寄越しますので、待機して頂ければ。」
「了解。じゃ、俺はお暇させてもらうよ。」
「では、明日からお願いします。」
俺は馬車から出て、先程の男に声を掛け、干し肉と薄いワインビネガーの様な酒を貰う。一応、先程の場所に戻る前に食べ終えようと、急いで掻き込んでコップを返す。後は、あの裏切り者の巣で夜を明かすだけだ。
先程の厩舎横にあるデッドスペースで俺は彼女の事を考える。
驚くべきことに、彼女は俺の顔を見ても何ら表情を変えることなく、寧ろ笑顔で接してくれた。
普通なら無表情を装うか作り笑顔。あからさまな態度をとってくる奴も中には居る程なのだ。
対する彼女は、気さくな態度で接してくれていたし、俺の傲岸な態度も笑って許してくれた。
聖職者然としている雰囲気も含めて、その様は正に聖女と言っても過言ではなかった。
無論、俺の顔を見て平気だった点がかなりのプラスに働いている事は言わずもがな。まぁ、何を考えているのか判らない点は大きくマイナスなのだが。
しかし、此処で問題になるのは、俺が彼女に抱いた聖女〈・・〉という彼女の第一印象だ。
俺が勝手に思う聖女や女神といった崇高な女性のイメージ像は、全てシスターシャに当て嵌めている。
それなのに、聖女というイメージを先程の少女に当て嵌めてしまったのは、どういった心情に依るモノなのか。
己の心情を嘘偽りなく慮るならば、彼女に恋をしてしまったのだろう。
いや、もっと正確に言うなら、仮にシスターシャに会っていなければ、恋をしてしまっていたのだろう。
俺はもうシスターシャという存在を知ってしまっている。認識してしまっている。
俺の心の内に彼女以外が存在するスペースは最早存在しないのだ。
要するに、彼女に対して親しみを覚えてしまったのだ。
それ程に、彼女の持つ崇高さは気高く思えた。
……まぁ、俺の顔を見て笑顔だっただけでそう思ってしまう程に、俺は異性関係が干上がってしまっていたのだという事で。しかも、まだ彼女が何を思い描いて俺に近づいてきたのか解らない現状で、そう言い切ってしまうのもどうかとは思うのだが。
然れども、現時点で俺の心情は、彼女に協力する気になっているのは明白だ。
『ケンタロウ君。
やっぱり、此処で夜を明かすことになりましたね。』
「あぁ、シスターシャ。
そうだね。
そこで君に頼みたい事がある。」
『何でしょうか?
あっ!
先程の女の子はどういった名前にしますか?
それに、馬車まで案内してくれた男性もですね。』
「…彼女は聖女…ちゃんにしようか。
男の方は…【御者爺】。
いや、それもあったけど、
……ここに居る奴らは、信用できない。
さっき俺を見捨てたからね。
だから、君に見張っててもらおうと思ってさ。」
『フフフッ
【聖女ちゃん】に【御者爺】ですね。
見張りの方も解りましたけど。
ケンタロウ君、
さっきと言ってる事が滅茶苦茶ですよ?
フフッ』
「いやー
此奴等の本心がさっきので解ったからね。
君には迷惑を掛けるけど宜しくね。」
『勿論ですよ。
では、睡眠を誘導しますね?』
そうして今日が終わる。
……
…
『おはようございます。
ケンタロウ君。
よく眠れましたか?
あの三人組ならもういませんよ。
不審な動きもしていませんでしたから。
こうやって、相手の動向を観察するのは
案外楽しかったです♪』
昨日に引き続き、今日も悪夢を見なかった。やはり、心の整理がつくと見なくなるモノなのだな。やっぱりシスターシャには感謝してもしきれない。
……ただ、今日のシスターシャは少し変だな。
ってちょっと待て、動向を観察?まさか…マズった!
「おはよう。
シスターシャ。
今日もスッキリ目覚められたよ。
……ところで
【思考減速】は発動させなかったの?」
『フフッ
倍率を細かく変動させながら発動はしていました。
彼らの行動を監視する為ですからね。
最初はちょっと調整が難しかったですけど、
今では上手く調節できるようになりましたから、
私の事を【思考減速】マスターって呼んでもいいんですよ?』
ヤバイ、シスターシャが徹夜明けみたいなテンションで喋ってる。
睡眠の必要が無い彼女に徹夜は問題ないと思うがしかし、それとこれとは話が別だ。
「シスターシャ、御免!
軽いノリで君に頼む事じゃなかった。君をぞんざいに扱ってしまったんじゃないかと気が気でない。本当に御免なさい!
…けどシスターシャ。
俺の為にありがとう。
俺は胸がはち切れんばかりの嬉しさを感じてる。
本当に感謝してもしきれないぐらいだ。」
『フフフッ
そんなに思い詰めなくても大丈夫ですよ。
…ただ、
そこまで私の事を考えてくれて
ありがとうございます。
貴方のその気持ちだけで
私も胸がはち切れんばかりの想いで一杯ですよ♪』
嗚呼 やっぱり俺の心の内にはシスターシャ以外入る余地が無い。
「あーっ 俺の真似したな?」
『フフッ
何の事でしょう?
フフフッ♪』
起き抜けから御馳走様です。本当に一杯一杯です。マジで限界が近いかもしんない。いや、こちとらもう臨界点を突破して天元突破の勢いですよ。
ただ、こうやって【思考加速】を発動させながら戯れていても御者爺は来ないので、解除して黙々と待つことにする。
周囲に人はおらず、俺的にはシスターシャと二人きりだ。そんな状況でも黙って待っているわけだが、沈黙が苦にならない。
それ以上に、胸の内が幸福感で溢れているのは何故なのだろうか。
彼女も同じなのか表情からは、先程の微笑みが絶える事は無い。
無論、俺もニヤニヤしながら先程の余韻を反芻している。
と、そこへ御者爺がやってきた。
流れからわかる通り、俺の顔を見て多少なりとも気後れしたのか、初対面の時とは違い、しかめっ面を滲ませながら声を掛けてきた。
「ケントさん、
朝食を持ってきましたので
食べながらでもついて来てください。」
昨晩と同じ献立の朝食を貰い、言葉通りに掻き込みながら付いて行く。
食べ終わるのと同時に馬車に着き、彼にコップを返し、そのままノックをして入るように言われた。
コン コン
「ケントです。」
「どうぞ」
「…失礼するよ。
お言葉に甘えさせてもらうから
迷宮都市まで連れて行ってくれ。」
「フフッ
ケントさんは気が早いですね。
勿論連れて行かせて頂きますけど、
私とゆっくりお話しでも如何ですか?
どうぞ、お掛けになってくださいまし。」
俺は腰かけながら返答する。
「話を聞く約束だったからな。
それぐらい、解ってるよ。」
「フフッ
そうですか。
其れなら此方としても問題ありません。
迷宮都市には三度の休憩を挟みながら、
今日中に着く予定ですので、
ご安心くださいね。」
と、益体もない遣り取りをしていたら、馬車が動き出した。
ドン、ドコドコドコ ドン、ドコドコドコ
かなり尻に負担が掛かっている。俺は別段、能力値のお蔭でそこまで気にはしないが、聖女ちゃんはどうなのだろうかと伺えば、素っ気なく座っている。うーむ、こういうのは慣れが必須なのだろうか?そう思っていると、クッションを取り出して敷いた。
…………勿論俺には何も渡されない
「それでは、
馬車も動き出したようですし、
お話を始めましょうか。」
「…あぁ。
面白い話だといいんだが。」
「では、私がなぜ貴方を招いたかについてをご説明します。
突然ですが私は、現在の娼館の状況を善く思っておりません。
詳細は長くなるので省いて簡単に言います。
現在の孤児の多くは、
節操なく娼館から孤児という建前で
多くの望まれない子供達が孤児院へ入院させられています。
別に私は、子供達を受け入れたくないのではありません。
正直に言って、孤児という建前が嫌なのです。
孤児という建前の元では、親がハッキリしていても
諸手を挙げて子供に会うことは出来ないからです。
これって可笑しくありませんか?
なぜ両親…母親は分かっているのに親子として扱われないのか。
そんなの、孤児という建前が障害になっているからですよね?
だから、私はこの孤児という建前をぶっ壊したいと思ってるんですよ!
ここまでは宜しいでしょうか?」
ちょっと最後の方、聖女ちゃん自身が壊れかけたみたいだけども…
うーん、娼館で望まれない子供は、孤児という扱いで孤児院へ。
この仕組みを変えたいのだろうけど、果たしてそう簡単な事であろうか?茨の道である事は間違いないと思われる。
そもそも、この件で俺が絡む要素が見当たらないのだが……
「えっーと
言いたい事は何となく判るよ。
子供の受け入れは歓迎するけど、
親と子の在り方を変えたいって事でしょ?
孤児院という施設そのものも変わってしまうと思うけど?」
「そうです!!
よく其の事に気付いてくれました!
孤児という名目が無くなれば、
孤児院には入院出来なくなります。
ですので、私は既に新たな施設を建設しました。
勿論密かにですよ。
といっても、現在ある院を改築・増築した建物ですが。
要するに、先手を取って、既成事実を作り上げながら
相手の咽元を食い千切る作戦なわけですよ!」
うっ……ちょっと、この子の本性が垣間見えて来ちゃってるけど、大丈夫なのかな?結構アグレッシブなオンナノコの様だ。
「ま、まぁ、其処ら辺はよく考えてるみたいだね。
そ、それよりも、
この件にどう俺が絡んでくるのかな?」
「フッフッフ
よくぞ訊いてくれました。
私は孤児という建前を無くしたいと言いましたね?
如何すればいいのかを私なりにですが必死に考えました。
結論としては、
娼館を行き摺りの場では無くせば良いと考えたのです。」
はぁ?この子は何言っちゃってんでしょうか?
娼館は行き摺りだから、気兼ねなく入れるのであって――無論俺は素人童貞では無く、真の童貞だから入ったことは無いがね――そうじゃなくなれば、それはもう娼館というモノじゃないぞ。
「おい、それってもう――」
「解ってますよ、言いたい事は。
娼館ではなくなる、と言いたいんですよね?
私としても微妙な線引きだと思うんですが、
私が考える施設では、
客も娼婦も皆、仮面の着用義務を設けるのです。
しかも、相性の良い者同士であれば、子作りも許可するのです。
規則で許可してしまえば、望まれない子供は存在し得ません。
その子供の受け皿として、孤児院に替わる施設へ歓迎する次第です。
そこでは、仮面を外し、全ての大人が全ての子供の親として接する。
産んだ本人であれば、解るかもしれません。
しかし、其処は各々暗黙の了解で済ませます。
これなら、誰もが幸せになるとは思いませんか?」
おいおいおいおいおいおい。茨の道どころじゃないぞ。
此方の世界の価値基準が解らないから、必ずしも間違っているとは言い切れないのが辛いが、
母親は納得しないだろう。いや、今でも母親として面と向かって会えていないのが現状なのか。
しかし、全ての大人が全ての子供の親になるってのはどうなんだろう。うーん、判らん。子の親になった事が無いから、判断が付かない。
あと、仮面…ねぇ。どの子供が自分の子供でも良い様に、男に夢を持たせるためか?
もし、子供が醜い顔だとしても、可能性としては消えない訳だから、全て自分の子供として扱わざる負えなくなる…のか。
それ以上に、行き摺りの側面も残したいのか。これも判断が付かない。
「悪い。
俺では其処まで行くと判断が付かない。」
「…ごめんなさい。
私も興奮し過ぎてしまいました。
こう言った細かい点については
ケントさんに理解してもらう必要はありません。
勿論、共感して頂けるのであれば申し分ありませんけどね。
…貴方にして頂きたい事は、
仮面を付けて、
私の姉に当たる奥女中に会って頂きたいのです。
理由としては、
如何に顔が不必要なモノかを姉に説くためです。
約定として、姉を説き伏せることが出来れば、
私の計画のパトロンになってもらう事が決まっています。」
「うーん。
娼館で仮面を付ける理由をもう少し聴いておきたい。」
「そうですねぇ。
仮面を付ける理由は、
単純に出生率を上げるためです。
知っていますか?
迷宮都市と言われ、魔晶石を採集して富が潤っている現状ですが、
富が潤うのと比例して、死亡者数も増えている事を。
その現状に対して、
対処療法的な手段は講じられている最中ではありますが、
大局的な手段は、未だに講じられてはいません。
其処に私は一石を投じたいのです。
貴方は自分の顔の所為で異性に素気無く扱われてはいませんか?
身体が貧相な所為で異性に呆れられたことはありませんか?
私は、顔だけは佳いと自負していますが、
身体もまた貧相な身形だとも自覚しています。
此処で、私が仮面を付けたら貴方はどう思いますか?
勿論、今の私の顔を知らない前提ですよ。
やっぱり、年端もいかない子供だとお思いになるでしょう。
貴方ならこの気持ちが解る筈です。」
聖女ちゃんなら、引く手数多な気がするけどな。無論、彼方の世界限定かもしれないが。そもそも、彼方の世界でも、美少女に欲情するのであって、幼児体型に欲情しているヤツは完全な変態だ、人非人だ。子供への親愛の情を恋愛の情と履き違えている輩が存在している事実が嘆かわしい。大人なら子供を愛おしいと思うのは当然のことであって、その愛情を欲情に転換する理屈は真面な頭を持っているなら有り得ないと判断が付く筈だ。
閑話休題。
だが其れなら、却って逆効果な気がする。俺の場合ならプラスに働くが、聖女ちゃんの場合は、マイナスにしかならないだろう。
「君の場合は逆効果になるんじゃないのか?」
「ケントさん、甘いですね。
私が狙っているのは、平均化です。
一極集中しても子供は増えませんよ。
均等に相手が出来る事に依って、
一定の出生率が保たれるのです。
顔が絶対の基準である事を取り去りたいだけですよ。」
あぁ、そういうことか。そりゃそうだ。一人に集中しても、妊娠期間があるのだから、溢れてしまう時期が存在する事になる。均一にカップルが成立していた方が、毎年の出生率という面において効率は良くなるのか。
ただ、それでも今度は違う部位が絶対の基準になる筈なのだけれども。
まぁ それでも彼女は、外面から内面へ移行させたいのだろうな。
「大体はわかった。
但し、
俺は仮面を付けて君のお姉さんに会うだけだ。
君の壮大な計画について否定はしないが、
全面的に協力も出来そうにない。
それでもいいなら、引く受けるよ。
まぁ、後は報酬かな。
君は俺に何をくれるのかな?」
「あっ!!
報酬……
考えていませんでした……」
「おいおい、
其れは致命的な手落ちだから。
…何だったら此方で考えてもいいぞ?」
「有難うございます。
申し訳ありませんが、其れで宜しくお願いします。
それに先程の問いについては、
私の計画に全面協力させるつもりは些かもありませんので。
貴方には貴方にしか出来ない事をやって頂きたいだけです。」
「まぁ、成功するにせよしないにせよ
君の計画は茨の道だ。
俺は俺に出来る事を精一杯やる事にするよ。」
丁度話に区切りが付いたのと同時に、最初の休憩場所に着いた。