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システムナビゲーションと一緒!  作者: ハヤニイサン
第二章ゴフリン村のゴブ子
13/29

認識




 いやー それにしても狩人君のようなイケメンが家庭を持っていなかったのには驚いたけど、両親が他界してるなら、この独り暮らしも何ら変ではないよね。……しかし両親か。

 …それ以上にまさか一方的な片思いの所為で独り身だったとは思いもしなかったな。

 狩人君は優秀な狩人たり得るが、恋に関してはタリラリラン、だったみたいだ。といってもこれ以上茶化す様な真似はしたくない。

 何処か雰囲気が変だし、何か拠所無い二人の事情もありそうだし、余り部外者が茶々を入れるべきでないだろう。


 しかも、村長と狩人君とのやり取りを思い返せば、そこはかとなく面倒事な気配がする。

 まぁ、俺がしっかりとしていればいいだけの話だ。誘惑に耐えるだけ……うん、耐えるだけの簡単なお仕事です。

 

 


 さて、俺の一番大切な人の為に、今は気持ちを切り替えてっと



「シスターシャ」


『はい。』


「今日は、お疲れ様。

 翻訳もそうだけど、

 他の人がいる場所だと

 あまりおおっぴらに話が出来なくてゴメンよ。」


『何も問題ないですよ。

 ケンタロウ君は疲れてないですか?』


「俺は大丈夫。

 君は?疲れてない?

 もし良かったら、

 今までの固有名詞を纏めたいんだけど…

 後はちょっと気になった事も訊いておきたいんだ。」


『私も大丈夫ですよ。

 …固有名詞というと、

 さっきの女性と、

 他には広場に居たと思われる

 高次元生命体さんですね。

 あっ、それとこの村の名前ですか。』


「うん。

 さっきの女の人は【ゴブ子】。

 この村は【ゴブリン村】

 高次元生命体は…【火の化身】でいいや。

 見えないから、特徴が掴めないんだよね。

 それと、村長は彼方さんが名乗る事があったら、

 【ゴブリン村の村長】って事で宜しくね。」


『火の化身さんは火を司っていると思いますけど、

 恐らく、此方の世界の火のイメージを

 明確に思い浮かべなければならないのでしょう。

 私も見えないので、

 どういったイメージをすれば良いかは解りかねますけど…』


「まぁ、今はその事は置いておこう。

 それよりも、

 俺の生理現象について訊いておきたくなったんだ。

 ちょっと下的な事に言及するね。

 俺は、此方の世界に来てから、用を足してないだけど、

 もしかして、これも〈Immortal〉の影響かな?

 食欲や睡眠欲、性欲に関しても

 何か影響があるような気がしてきたんだ。」


『そうですね…

 ケンタロウ君の排泄物に関しては、

 〈SE〉が上手く働いて

 ほぼ全てをエネルギーに変換しているみたいです。

 …三大欲求に関してですけど、

 食欲は、ケンタロウ君の任意で取れるようです。

 後の二つは、ある程度私の方で制御出来るみたいです…』


「排泄物に関しては、

 〈SE〉のエネルギー変換効率がいいから、それに乗っかってるのかな。

 食欲に関しては、俺も自覚があるからいいとして。

 他の二つを制御するってどういう事?

 三大欲求の内二つを君に握られてるって事かな?」



 ここにきてまさかの事実発覚!睡眠欲と性欲をシスターシャに握られている?これが事実だとすると大変じゃないか?…そう思い至った俺は…俺は………興奮が留まる事を知らないのだが…!いやいやいやいや。


 ……そう!居ても立っても居られなくなるではないか!これは忌々しき事ですぞ!!この二つを彼女に握られている俺は、徐々に彼女色に染められてゆき……って もう元から染められとるやないかい!


 うん?つまり、これは、最初から謀られていた事だと?シスターシャが俺を操るために惚れさせたという事か?


 それこそ、いやいやいや。そんな訳はあるまい。あの衝動は…あの時の激情は…そんな低俗なモノでは無かった。そう信じたいだけかもしれないが、俺はあの時の気持ちを信じる。



『…ケンタロウ君。

 制御出来るといっても、

 睡眠なら、眠気を誘導したり、覚醒を促したり。

 性欲なら、性的欲求を抑える事しかできません。』


「えーっと…

 もしかして、さっきゴブ子に迫られた時

 シスターシャが性衝動を抑えてくれたのかな?」


『す、すみません。

 勝手な事をしてしまいました。

 ケンタロウ君の邪魔をするつもりは無かったのですけど…

 何故か衝動的に…抑制してたみたいです…

 ごめんなさい…ごめんなさい…』



 シスターシャはそう言いながら落ち込んでしまった……

 これは、性的欲求の事だけについて謝っているわけじゃないな…


 しかしまさか、当てずっぽうで言った事が図星だったとは…

 別に抑制されてたって感じはしなかったんだけどな。うーん…意識出来ないってのは、さすがに拙いか?いやけど、自分の意思でハッキリ冷めたと、認識に至るプロセスがさっきの場合は解ってるからな…或いは、その程度の抑制レベルなのかもしれない。 


 何にせよ、落ち込む彼女を励ましたいという逸る気持ちを抑え、確認の為に一つ尋ねる事にする。



「シスターシャ。よく聴いておくれよ。

 ただ、事実を確認したいだけなんだけど、

 この三大欲求について、

 君は以前から把握していた。そうだね?」



 そう尋ねると、彼女は眼を見開き俺の事をマジマジと見つめてくる。…て 照れるじゃないか。



『!!

 気付いていたんですね。

 私がケンタロウ君の生体情報をモニターしていた事を。』


「いや、生体情報をモニターしてたことは初耳だよ。

 俺が言いたいのは、そんな具体的な話ではないんだ。

 それに、生体情報も情報引用の範囲内だろうし、

 そんなものいくらでもモニターしてくれて構わないよ。

 睡眠の誘導や覚醒、性欲の抑制が出来るのだって、

 俺の身体を健康に保つための管理機能なんだろうし。」


『…じゃあ、ケンタロウ君は私に何が言いたいんですか?』


「俺が言いたいのは、

 君が俺に遠慮してるって事。

 …君が俺に遠慮してることぐらい

 俺には直ぐに判るんだよ。

 昼間だって、

 【シスターシャブースト】の説明をする際、

 俺の感情を読み取っていなかっただろう?

 今だって、

 どうせ俺の感情を読み取るのを

 躊躇っているんじゃないかい?」


『ケンタロウ君…

 どうして私の気持ちがわかるんですか?それでいて何でそんなに平気そうなんですか?

 …下手をしたら、私に操られるって思わないんですか?』



 目尻に涙を溜めているのか、瞳は潤みを帯びている。そんな顔をしないでおくれよ。シスターシャ。



「シスターシャ。俺は君を信じてるって言っただろ?

 別に盲目的に信じてるんじゃないんだよ。

 これまで…

 俺がシスターシャから与えてもらった

 想いの全てを合わせた上で言ってるんだ。

 この君に対する俺の信じる気持ちは

 たといシスターシャといえども

 疑ってもらいたくはないね。

 これだけ言っても疑うのなら、

 其れこそ感情を読んでみたらいいよ。」


『そんなこと!!

 そんなことしなくてもケンタロウ君の気持ちは…

 直向きな気持ちは痛いほど伝わってきます…

 痛くて…涙が出るくらいに』



 彼女はそう言って、一度深く瞼を瞬かせた。


 あぁ 初めて涙を流させてしまった…いや、二度目か…

 そんな事よりも、泣かせてしまったという事実が無性に忍びない。耐え難い。


 涙を流したといっても、一筋…宝石の様な一雫だけだ。だが俺は、この雫が流れ星でない事を祈りたい気持ちでいっぱいだ。だから…



「シスターシャ。

 君に触れられないことが今、無性に腹立たしいよ。

 だって触れられたなら、

 その流れ星の様な涙の一雫を救って宙へ還してあげられたのに。」


『ケンタロウ君……』



 ……うん?俺、何かやらかしてしまう率が徐々に増えて来てるな。行きつく先は、こっちがメインになっちゃったりなんかして…… やー 流石にそれはないよな?しかし、そろそろ俺的にも不味いと感じ始めてきたぞ…

 ただ是だけは確かだ。俺は…完全、完璧、完全無欠に、彼女にイカレちまった!!


 少々自分自身の言動に悶えている間に、シスターシャは平常通りに戻ったようだ。…やはり、俺の彼女への言動は控える必要は無いようだな。うんうん。



『フフフフッ

 ケンタロウ君はやっぱり凄いです…

 私なんかじゃ到底及びません♪』


「ま、まぁ 俺だからね。

 そ、そうだ。

 睡眠誘導をしてもらう事になるけど、

 その前に俺、今日の事を色々整理したいから

 少し時間をくれるかな?

 えーっと…

 一人で考える時間をもらえたらいいなぁと…」


『勿論いいに決まってますよ。

 私の事はお構いなく…

 私も整理したい事はありますしね。』


「あぁ もしかして、

 昼間のマッピングとかデータ整理かな?

 それなら、本当に申し訳ないよ。シスターシャ。」


『フフッ

 勿論それもありますけど、

 私にも色々あるんですよ?ケンタロウ君♪』



 そういって微笑んだ彼女は、楽しげだが、少し角度を変えれば、妙に艶やかで…何かを夢見る乙女の様な…そんな微笑みを浮かべていた。


 俺は、妙に彼女の色っぽい…艶っぽい雰囲気に耐えられなくなり、思考の海に飛び込む選択をした。



「じゃ、じゃあそういう事で…」



 …そこっ!この場の雰囲気に身を委ねればいい、とか勝手なこと言わないでくれ。こちとら、委ねる身はあるが、彼方さんには無いんだからね?そこんところ間違ってもらっちゃあ困るってもんだ。

 

 ……ヘタレ、万歳!!




 よしっ…浮わついた気持ちを落ち着かせて今日の事を整理しよう。



 ……

 …



 今日ほど認識の重要性を垣間見た日は無い。

 システム機能の認識に始まり、器用値、翻訳に関する固有名詞、他の高次元生命体。


 固有名詞が完全に聞き取れなかったのは、そのワードに対しての認識が甘い所為だろう。

 他にも高次元生命体はそれぞれ司る事象を高度に認識しなければ知覚出来ないとは…てか、火を司ってるってなんだよ。火は化学反応の産物で、燃焼や酸化現象だろう。で、そう考えてみても知覚出来ないと来た。

 だから少し思索に耽る事に…


 物事がある。それを知る過程が認知。結果として知識となり、普遍に至れば常識となる。認識とは知る働きの事。


 俺は、今の己の立場を改めて認識しなければならない。


 俺は常識の異なる二つの世界を認識してしまった。それが意味するのは、混乱をもたらす以外にあり得ないであろう。何故ならば、現在俺の常識は一つの世界のモノしかない。しかも今居る世界のモノではないのだ。

 俺の現状は彼方の世界の常識に凝り固まってしまっている。それを打破する適応能力が必要不可欠である筈だ。


 常識から食み出した存在は、大多数を占める人と同じ生き物と見做されない。それが世の常。


 それは、世界が彼方と此方で異なっていても同じことだ。だが、此方の常識は彼方とは違うのだから、俺は培ってきた常識を一度崩さねばならない。

 此方の世界の人間からしてみれば、俺はどのように見えているのであろうか?世間知らずな田舎者。酔狂な旅人を騙る変人。得てして先程の嵐の主の様に…況してや狂人だとさえ思われたかもしれない。

 俺は、挙動不審では無かったか?本当に襤褸を出さずに遣り過ごせたか?

 少しの可笑しさから…顔の相似性からゴブリンと間違えられ続けたのかもしれないが。人とは隔絶した(・・・・・・・)常識を持つ生き物(・・・・・・・・)。そこに共通性を見出していないとは言い切れない。



 とどのつまり、俺はこの世界で己の常識を打破し続ける必要がある。ブレイクスルーの連続体験をしなければならないのだ。



 〈Immortal〉に因る人間性の喪失。この世界の常識が解らないことから来る、認識不足に因る挙動不審な行動。

 俺一人ならこれ等の事に対してどう思い考えたのだろうか。考えに至らなかっただろうか。考える必要が無い程、狂っていたのだろうか。

 だがしかし、俺は今、一人では無い。彼女が…シスターシャが居る。傍に居てくれる。

 そんな幸せを胸に秘め、詰まらない想念を振り払うため、大切な人に声を掛ける。



「シスターシャ。

 色々と考えてはみたけど、

 俺は今まで以上に

 常識を疑ってかからなきゃいけないと

 改めて実感したよ。

 ありがとう、時間をくれて。」


『はい。

 こうやってケンタロウ君一人で考えるのも

 精神の安定に繋がりますから。

 私は、ケンタロウ君が悩んでいる時でも

 考え込んでいる時でも

 何時でも傍に居ますら。

 もし、私とお話しがしたくなったら

 呼んで下さいね。

 それまでは、

 先程の様に…

 黙ってケンタロウ君を見守っていますから。』


「うん。ありがとう。

 …そういえば、

 シスターシャは睡眠を取らなくても大丈夫なのかな?」


『はい、必要ありません。

 その…その事で提案なんですけど、

 ケンタロウ君が寝入ってから

 【思考減速】を使ってもいいですか?』


「あぁ…そういう事か。

 いいよ。いいに決まってる。

 シスターシャが寝る必要が無いのなら、

 俺も意識がない事だし、

 【思考減速】を使ってもらわなきゃ

 返って俺の気が休まらなくなっちゃうよ。」


『ありがとうございます。

 では、睡眠誘導してから発動させます。

 起床は、朝日が昇り始める時間でしたね。

 準備は良いですか?』



 その言葉と共に俺は寝床に横たわる。寝床は、藁敷きの敷布団と綿の様な掛布団だった。

 寝心地はお世辞にも良いとは言えないが、横になって初めて自分が今まで緊張していた事に気付いた。それは則ち、精神的な心地好さといえるのではなかろうか。


 俺は慎重に一息吐き、これまで己の内で張り詰めていた塊の様なモノを空気と共に外へ追い出しながら



「シスターシャ。

 今日は君と出会えて俺の人生、

 最良の幸せの日になったよ。

 明日からも、君の世話になってしまうと思うけど、

 また頼みます。

 おやすみなさい。」


『フフッ

 ケンタロウ君。私も幸せですよ。

 明日からもドンドン頼ってくださいね?

 …それでは、おやすみなさい。』



 その後、直ぐに意識が薄らいでゆき―――――






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