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システムナビゲーションと一緒!  作者: ハヤニイサン
第二章ゴフリン村のゴブ子
11/29

ゴブリン村




「なんだ?

 そのシスターシャ、というのは?」



 あ、やっべ。そういえば、【思考加速】をシスターシャが発動する前に、彼女の名前を此奴の目前で言ってたんだっけか。そうだな…



「あぁ、俺が信じる女神の名だ。

 物事が好転した時とか、

 好転するのを願う時なんかに

 つい口に出してしまう癖があるんだ。

 何か気に障ったかな?」


「聞いたことが無い名前だな。

 …いや、それなら問題ない。

 オレも狩りの時似た様な事はするからな。

 …それで、アンタは旅人か?」


「まぁ、そんなところだ。

 水と食料を今朝切らしたところでな。

 もう少しで集落に辿り着く筈なんだが、

 あんたは知っているか?

 …申し遅れて済まないが、

 俺はケンタロウという者だ。」


「オレは―――――。

 ケンタォゥ…ケントゥ…

 少し言い辛いな。

 もしかして遠方からの旅人か?

 糧食が無いなら、

 この川を下った先に開拓村がある。

 矢を射った詫びも兼ねて

 今晩ぐらいはオレが持て成そう。」


「…俺の事は、ケントでいい。

 じゃあ、詫びも兼ねるという事だから

 盛大に持て成してもらおうかな。

 それで今回の件は水に流そう。」


「よし。

 今から出られるか?

 日が暮れ始める前に帰り着きたい。

 オレの獲物はもう少し下流のほうにあるから、

 ついでに運ぶのを手伝ってくれ。」


「了解だ。」



 詫びを兼ねて持て成す と言ってるが、怪しげな俺に対する、体のよい見張りだろうな。俺の見た目はひ弱そうだが、必中であった矢を避けた俺を警戒していない筈がないのだ。

 ぶっちゃけ俺としてはどう展開しようがどうとでもなると思っている。折角意思疎通の出来る人種に会えたのだから、一応、話の流れに乗ってはみたが、果たしてどうなる事やら…


 ……

 ……

 …


 途中、森の中で見た鹿のような獣の四肢を縄で縛り、木で担げるようにしてあったので、交代で担ぎながら、件の村へ同道した。

 会話の様なものは無く、互いに辺りの気配を探りながらの道のりであった。そこで気付いたが、狩人君は気配…音をさせずに歩くのが上手い。対する俺は、そんな彼の真似をしてみるが、これは器用値云々では無く、経験に因る技術であろう事を痛感した。



 カァァン…カァァン…カァン…―――――


 カンカンカンカンカンカン…



 何やら、木を叩く様な…切っている様な、そんな木材加工の音が聞こえてきた。


 音が段々大きくなってくると、それに伴い村の入り口も見えてくる。俺たちは森側から村に入る事になるが、その森側は俺の倍ほどの高さで木塀が設けられている。太さが杉並の丸太が連なっており、塀の一箇所、出入り出来る門扉がある。そこから中に入るようだ。また、塀付近は広場にもなっているみたいだ。



「彼処から村に入れるのか?」


「あぁ。

 あの門扉を使うのは木こりやオレみたいな狩人だけだな。

 農作業や行商人は反対側の出入り口しか使わないだろう。

 ただ、此方側の見張りの方が厳重ではあるのだがな。」


「へぇ。

 村の男衆の持ち回りで担当しているのか?

 それとも専任の自警団でもいるのか?」


「ハハッ

 自警…ね。

 その自警団みたいなもんだ。

 男衆は、オレみたいな奴もいるが、ほぼ全員木こりだ。

 有事の際はその男衆全員が事にあたるからな。

 …勿論見張りは持ち回りだ。」



 そういったやり取りをしながら、森側の唯一の出入り口から中に入るべく門扉に向かうが、途中、木が綺麗に切り倒されて整地されている、木材の加工場とも呼べるサッカー場程はあろう広場に寄った。



「済まないが、

 今日の獲物を引き渡さねばならないからな。

 少し待っていてくれ。」


「おいおい。

 狩人君じゃないか。

 何でゴブリンなんか引き連れてるんだ?」


「いや、ケントは人だ。

 彼をオレの家に招待するのでな。」


「はぁー

 まぁ、何でもいいが、

 狩人君、お前ここんとこ調子いいんじゃねぇか?

 ここ最近毎日獲物を狩って来てるじゃないか。

 狩人の仲間連中は僻んでやしねぇのかい?」


「狩れる日も狩れない日もある。

 お互いに持ちつ持たれつだと解っているからな。

 心配は無用だ。」


「まぁ、何でもいいか。

 おし、確認は終わったから、

 また頼むぞ。」



 こっちが、おいおいって言いたいよ。何でもいいなら訊くんじゃねぇよ。マジで。しかも、翻訳の範囲外でも未だに言われてるようで…些か外野が煩いが、一応俺が人だという事は伝播されて行っているようだから安心だけれども。



「よし、用件はこれだけだから

 さっさとここから離れてしまおう。」


「それもそうだな。」



 それ相応に狩人君は気を遣ってくれてるみたいだな。当然だが。俺は矢を撃たれましたからね。


 今度こそ、村の出入り口の門扉に向かう。案の定そこでも見張りが…



「おい!狩人君!

 お前、ゴブリンなんて村に連れてくるんじゃねぇよ!

 テメェの様な一流の狩人がそんなヘマするワケが…

 て人か!?」



 見張り番が、そんな事を宣った。


 おいおいおい そりゃあ、似てるかもしれんがな。こう何度もゴブリンと間違えられると段々と堪忍袋の緒が切れそうになって来るんですが……!!



「…その件でちょっと矢を射かけてしまってな。

 その詫びも兼ねて此方の旅人…ケントを持て成すことにした。

 オレが責任を持つから、入れてくれ。」


「お、おう。

 悪かったな。旅のお方よ。」


「いや、よく間違えられるからな。

 いきなり矢を撃たれなければ、俺は許すよ。

 なぁ、狩人君。」


「ハッハッ

 狩人君。精々持て成して歓待するこったな!」


「……それでは、行こうか」



 少し溜飲が下がったので、村の中を歩きながら狩人君に尋ねてみる事にした。



「この村は、こう…活気に溢れてるな。

 活力みたいなモノを感じる。

 家々は、藁葺きの急拵えの様に見えるが、

 規格が統一されて上手い具合に区画整理されてもいる。

 …相当頭の良い御仁が先導した開拓村なのだろうな。」


「あぁ、ここは今は開拓村の最前線だな。

 森を切り開き、木材加工しながら

 交易をしている村だ。

 村の名前は開拓当時リーダーを務めていた人物の名から取って

 ―――――村と呼ばれ……」


「ゴブリン!!

 ゴブリンがまた村の中に入って来やがった!!」



 ……おい。

 もうこんな村【ゴブリン村】で十分だろ。



 ……

 …


 

 村の外の広場の時と同じように、俺の事は伝播されて沈静化しているようだが、どうにも遣る瀬無い。



「済まないな、ケント。

 この村の住人が

 ゴブリンに過敏に反応するのは訳があるのだが…

 その辺は今夜にでも話そう。

 ケントに悪い思いばかりさせているからな。

 知る権利はあるだろうと思う。」


「…まぁ、深刻になり過ぎなければ、

 聴かせてもらおうかな。

 思い出したくない話題のようだし、

 無理はしなくてもいいからな。」


「あぁ。

 ところでケント。

 家に帰る前に、お前をこの開拓村の代表役…

 そうだな…村長に会わせる。

 それで、お前の事も村中に伝えられるだろう。」


「了解した。

 流石に何度もゴブリン呼ばわりされるのはキツイからな。

 事前に村長に会って、

 周知徹底してもらえるなら助かる。」


「……お前の容姿云々以前に、

 何処の村でも、

 外からの者は、村長と顔合わせはするんだろうがな。」


「あー俺の場合は特に重要だな。

 うん。」


「……まぁいい。

 村長の家は、集会場も兼ねている。

 だから、村の中央広場が目印だな。

 っと、あの祭壇が見えるだろう?

 利用しやすいように祭壇も広場付近に設置されたのだ。」 



 へぇー 祭壇ねぇ。信仰関係は厄介だから、変なこと言わないように細心の注意を払わないとな。


 少し歩いて祭壇の全体像が見えてくる。祭壇は、十平米程の石造りの四阿で中央に火が灯っていた。


 …利用しやすいようにってのはどういう意味合いだろう?種火として使うって意味か?そうでなくとも、あれは公共の物の可能性が高い筈。よし。



「あの火は誰が管理しているんだ?」


「……ケント、本気で言っているのか?

 あの火は

 火の高次元生命体の―――――様が

 管理しているというか…

 あの火と共に御戯れになっているではないか。」



 やべー、一応気を付けていたんだけどなー フラグになってしまったか。


 だが、これは予想外だ。ここで高次元生命体の名前が出てくるとは…聞き取れないのは、その高次元生命体の名前なのだろう。それに彼の口から高次元生命体という語句が出てくるのは翻訳の関係上仕方がないとしても。

 そもそも、高次元生命体はその司る事象を高度に認識していれば、見える筈だ。その筈…俺はシスターシャしか事例を知らないから、そうなのだとしか言えないが…

 しかし現に、そこに居るっぽい。俺には知覚し得ない存在が其処に居る。


 知覚出来ない事実。つまり俺は、火についての認識が足りないというのか?

 火とは、燃焼・酸化といった化学反応の結果だろう。これ以上の認識がいるのか?いや、こう言っちゃあ悪いが、これ以上の事を狩人君達この村の住人が知っているとは考えにくい。

 じゃあ……



「おい、ケント。

 行き成り考え込んでどうした?

 ここが村長宅だ。」


「…あぁ、他の所との違いについて考えてた。

 っと、ここが目的地か。

 広場に隣接している以外に他の建物とあんまり変わらないな。

 2階建て…二回り程大きいだけかな?」


「そうだな。

 村長宅は、徴税官や国の官吏を

 村に招く際に滞在して頂く迎賓館の役目もあるからな。

 …それより、

 中に入ってから少し待ってもらう事になるだろう。」



 玄関から侵入するが、入って直は玄関ホールになっており、そこで面会を取り付ける段取りらしい。

 やはり、木材加工で交易を担っている為だろう、家の主材は木だ。木の温もりと角張っていない、丸みを帯びた木材のラインは俺を歓迎しているようにも感じられて気分がいい。もしかしたら、そこまで計算して作られているのかもしれない。

 絨毯は無いが、足を伝わってくる木の感触もまたいい……あ!そういえば、俺は靴下だけだったな。


 そんな事をツラツラ観察していると、アポが取れたみたいだ。だが、案内はされないようで、狩人君が俺の付き添いでそのまま案内するらしい。


 どうやら、面会場所は一階にあり、ホールに見えた階段を登らずに廊下を進む。目的の部屋に向かう際に中庭のようなスペースが窓から伺えた。見た目以上に広い敷地を持つ屋敷のようだ。



 コン コン


「入れ。」



 狩人君を先頭に部屋に入る。中は、執務を行っているようには見えないが、ソファーやテーブルと言った、客を持て成す部屋の模様では無く、飽くまでこの部屋の主の為の机と椅子があるだけの執務室のようだ。

 そんなこの部屋の主は、髪は白髪、顔に刻まれた年輪の様な皺は苦労を忍ばせている。背丈は椅子に座ったままなので判らないが、低くはないであろう。



「狩人君。どうした?

 身を固める決心でもついたのか?」


「いえ、そのことではなく、

 私の家に滞在させようと思っている客人を連れて来ました。」


「…其方がお前が招待した客人かな?」


「はい、此方ケントという旅人だそうです。

 ケント、彼方がこの村の代表を務めているお方だ。」


「初めまして、ケントと申します。

 今回はお忙しい中面会に応じて頂き誠にありがとうございます。

 先程お話に挙がった様に、

 狩人君の家で少しばかり厄介になりたいと思いますので、

 どうぞ、この村に滞在させて頂きたく存じます。」


「…ほう。村の滞在の件、あいわかった。

 さて、ケント殿は旅人という事だが、

 何方から旅をなさって来られたのかな?

 目的地は迷宮都市であろうか?」



 ほら来た。あんまそういった設定は考え付かなかったんだよなぁ。迷宮都市とか…固有名詞では無いんだな。てかさ、この世界の常識が判らないんじゃあ、どうしようもないよね?



「私などはしがない旅人です。

 当ても無く、気の向くまま風向くまま、旅する身でして…

 この村の場所を聞き及んだ後に

 森にふらりと入ったのは良いのですがね。

 情けない事に迷ってしまい、糧食も尽き果て

 あわや遭難か、と思いました所、

 幸運にも川を発見しまして。

 いやー私の場合こういった事は旅をしていれば

 茶飯事でしてね。それ程慌てても居なかったのですが…

 そこに何と何と、私に矢が放たれたではありませんか!

 流石に風来坊の私でさえ、これは茶飯事とはいきません。

 命辛々矢を避け、はたと下手人を見れば…

 何とそこにはこの狩人君が居たんですね。

 それで、何やかんやと彼の家に招待されたわけです。」



 うわー 饒舌に喋り過ぎちまった。…これは嘘を言ってます、と自分で言ってるようなもんじゃないか?



「ハッハッ

 これはこれは。ケント殿の話は興味深い。

 誠、自由気ままな旅をなさっているようですな。

 他の旅の逸話なども聞き及んでみたいものだが、

 ……どうであろう、

 ケント殿さえ良ければ、

 暫しこの村に滞在してゆかれては如何か?

 滞在の折には、この狩人君に

 詫びも込めて相応の持て成しをさせるのでな。」


「…はぁ それは願ってもない事です。

 当てもない旅故、どうぞよろしくお願い致します。」


「では、そのように。

 ……それと狩人君。

 いい機会ではないか。

 お前もそろそろ身を固める潮時なのではないか?」


「……彼女と引き合わす、と?」


「それは、一番お前が解っている事であろう。

 儂の口から直接…」


「いえ、客人の手前、これ以上はご勘弁を。」


「…では、これにて面会は終了だ。

 ケント殿、ごゆるりと滞在して下され。

 …狩人君、見張り番は当分やらんでいい。

 客人を抜かりなく歓待しなさい。」



 彼はそう狩人君に釘を刺すような口調で言い切り、面会は終了した。





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