第2話 神崎ゆりあの秘密。
頭より先に体が動いた。
あたしは全速力で(人ごみだが)神崎ゆりあと思われる生命体に向かって走っていた。
「神崎ゆりあさんッ!大ファンです〜!!」
蒼く深い瞳、白く整った顔、深めにかぶった帽子の下に見える短い黒髪、パーカにジーンズのボーイッシュな格好・・・
あれ?
短い?黒髪?ボーイッシュ!?
「おわっ!?」
意外とトーンの低い声・・・・・・!?
「あの、あたしっ、神崎ゆりあさん凄い大好きで!よかったら、あの、saサササインとかっ」
自分で何言ってるか分かんない。
生・神崎ゆりあを目の前に倒れそうなくらい興奮していた。
「あ、ちょ・・・・・・っと静かなとこ行きましょ?」
神崎ゆりあはあきらかに引いてますよねな口調で言いながら周りをちらりと見た。
あたしの絶叫効果でいつのまにか周りには人だかりが出来ていた。
「なんでもありません。あたしたちはただの友達です」
神崎ゆりあは完璧な笑顔でそう言い、そしてあたしの手をとって猛スピードで走りだした。
「えっ!?なにっ」
「いいから走れ!」
野次馬は「絶対ただの友達じゃないよねキミら」とかわいそうな人を見る目で走り行く不思議な美少女と普通の女子高生合計2人を見送っていた。
わあ、速いよ、速いよゆりあ様。
綺麗な上に俊足だなんて素敵すぎるよゆりあ様!
そんな素敵なゆりあ様に似合わない路地裏であたしたちは止まった。
「今のこと記憶から抹消できる?」
「できません」
「即答?でもまあそりゃそうだよね、じゃあ話してあげるけど、キミ名前は?」
「門倉奈那です!16歳の高1、あとみずがめ座のO型ですがっ・・・」
「+αでいろんなことありがとう。長くなるけど、時間ある?」
あたしはケータイのバイブくらい小刻みに頷いた。
ゆりあ様は綺麗な顔で軽くため息をつき、またもや完璧な笑顔をつくった。
「神崎ゆりあ、実は男なんだよね」