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斜陽と猫  作者: 矰繳
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斜陽 0

思いつきで書いてますんでもしかすると話の筋がガバガバだったりするかもしれませんが目を瞑って下さい。

 後ろから吹く風が少し寒い。右手をズボンのポケットに突っ込み、独りで開放型の廊下を歩きながらそれに合わせて揺れる目の前の影を見ていると、ふと「斜陽」という小説が頭に浮かんだ。以前、小林多喜二の「蟹工船」を読みたくて図書室に行ったとき、それと同じ本棚にあった本だ。その棚の本は長らく手に取られていないのだろう、どれもその上部に幽かな埃を積もらせていて、普通の中学生は、所謂文学作品というものには興味がないのだろうな、と思ったのを覚えている。

 誰もいない教室を幾つか通り過ぎた。本来なら終業後、学級長が施錠するのだが、無施錠の教室が二つほど見受けられた。あまり掃除が行き届いていない階段を下り始める。美化委員の長崎がかなり前に描いた掃除を呼び掛けるポスターが踊り場に貼られていたが、他に何もない寂しい壁を必死に飾ろうとしているようで憐れに思えた。 無施錠の教室といいこの階段といい、この学校の委員会は結構だらしがない。

 遠くから運動部の掛け声と吹奏楽部の演奏が聞こえる。掛け声と言えば聞こえはいいが、実際は柄の悪い生徒が多いサッカー部が騒ぎ合っているのだろう。吹奏楽部の方は時折演奏が止まる。先生が何か指示を出しているようだ。

 四月初めにサッカー部の誰かがシャーペンの芯を使ってショートさせたというコンセントがある最後の踊り場を過ぎて、やっと一階に下りた。

 そのまま真っ直ぐ進み、辿り着いた下駄箱を開ける。しかし、入っているのは見慣れた僕の靴ではない。そもそもこの「築本翔也」と記名されたシールの貼ってある下駄箱は僕のものではない。この学校には、もう僕の下駄箱は存在しない。

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