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七話 皇太子とケンカをするロリババア

 ここはセリウス帝国。

 ガイア大陸の中で最大の領土を持つ軍事大国だ。

 幾つもの小国を攻め滅ぼしたのは過去の話で、軍閥派に属していた皇帝が崩御してしまい、皇帝の継承権も持つ後継者達との内乱が勃発する。

 戦争で敗北し、支配されていた国もこの内乱が起こっている隙に、独立宣言をする国まで発生してしまい、国内は徐々に疲弊してしまった。

 後継者争いに勝利し、ユーラス皇帝は疲弊した帝国をいち早く立て直す為に、国内の内政と隣国との外交を重点にしていた為、隣国へ侵略する事はすっかりと無くなっていたが、そんなセリウス帝国には、ある問題が抱えている。

 それはユーラス皇帝閣下の息子であるジーニアス。

 幼い頃から恐ろしいほどに巨大な魔力を秘めていた皇太子であるジーニアスは、たびたび引き起こされる魔力の暴走に浴びられてしまい、召使いやメイドが、失神してしまうほどに危険な問題児だった。

 いまでは自分の魔力もある程度はコントロールできるようになり、独力で魔術を詠唱するほどの才能を持っていたが、皇族としての帝王学は全く学ぶきがゼロで、すっかりと天狗になっているのだ。

 そして、ユーラス皇帝は後継者争いの内乱をまた引き起こさせないように子どもを多く作りたくなかったので皇帝は側室を廃止して、たった一人の皇妃だけとしか子作りをず、皇太子と皇女の二人しか生まれていなかった。

 講師も皇帝に即位するのが確実な皇太子には頭が上がらず、だれも躾ける事が出来ずにいる有様である。

 そんな天狗になっていた皇太子を抑える為にある国に白羽の矢を定める。

 それは、聖女として拝められているパラミア王国のエリー王女。

 少女の活躍はこの帝国にも響き渡り、大きな話題となっていた。

 彼女ならば、暴走する皇太子を押さえつけて更生出来る可能性が高いと確信していた。

 そして、パルミア王国に使者を派遣して、クーデターの影響で疲弊していた王国に支援を差し出す条件に、この帝国へ聖女を招き入れる事に成功させる。



 わしはセリウス帝国との親睦を深める為にわざわざ遠い地にある帝国の帝都まで訪れていた。

 流石は大陸で最大の勢力を誇る帝国じゃな。

 帝都のレンガや石造りの町並みはかなりの鮮やかで、王都と比べて、かなり発展しておる。

 特に人盛りの多さは驚きを隠せない。

 帝都も内乱が収まってから、それほどの長い時が経っていないと言うのに

 既にその傷跡は消え失せていた。

 ……まあ、王都は例のグレンの反乱によって、すっかりと寂れてしまったがのう。

 そんな、王都の復興がまだ終わっていない現状で、皇帝はクーデターによる内乱で疲弊している王国に支援を出すと約束してくれたのじゃ。

 なんて太っ腹なのじゃろう。

 わしが旅をしていた頃は隣国とよく戦争をしていて、かなり物騒な国じゃったんだがのう……

 もちろん、上手い話には裏もあるわけで、わしはとある皇太子と交流しなければならない。


「とうとう危惧されていた事態がきてしまったのじゃ……」


 そう、どう考えても縁談である。

 今では聖女と名乗られるまでに拝められてしまったわしは、かなりの良い物件に違いない。

 帝国はそんなわしを見逃す筈もなく、将来は皇太子と婚約をさせようとしているのであろうな。

 そうはさせぬぞ!

 わしは男なんぞと付き合いとうないわ! 最後まで抗ってみせる!

 そう決意したわしだった。

 

 セリウス帝国の宮殿に招待されたわしらは、その豪華な食卓に驚いていた。

 明らかにわしらの国とは質も量も違いすぎる。

 これが大国と小国との格差か……酷いものじゃな。

 コルキス王もすっかり政治モードで、ユーラス皇帝と会話をしていた。

 わしは、見た目は子どものお蔭で、護衛騎士であるライネスを一人引き連れながら、自由に行動できる。

大人の政治に興味のないわしは、ひたすらおいしい食べ物をライネスと一緒に食べていた。

 その時、ふと強い魔力を感じた。


「むっ……!」


 わしが最後までとっておいた、おいしいデザートが消えてしまっていた。

 そして、その唖然としたわしの表情にあざ笑うかのように、小さな金髪の子どもがわしのデザートを食べていた。


「聖女とか言われていても所詮はこの程度か、俺の敵ではないね。」


 なんじゃ? こやつは……

 わしのデザートを盗むとはなんと罰あたりな!


「ほほう、わしを怒らしてもいいのかのう?外交問題に発展するぞい」


 わしは権力の力を使った。

 ふふふ……頭の悪い餓鬼が相手ならこれだけで怖気づくじゃろうな。


「小国と縁を切っても痛くも痒くもないね。それに俺はお前よりも偉い皇太子様だぜ!」


 よほど皇太子が偉いのだと自慢したいらしく、仁王立ちしながら自信に満ちた表情で語っていた。

 なんじゃ……この生意気な餓鬼が皇太子じゃったのか。

 まったく教養がなっておらんではないか!

 

 ふふふ……まあ良い、このまま仲が悪ければ、この皇太子との縁談もご破算になるじゃろうな。

 食べ物の恨みを晴らさせてもらうぞ!


「なるほどのう……だからなんなのじゃ?皇太子とは偉いのか? 所詮は皇帝の継

承権を持つだけのひよっこではないか」


 すると皇太子の餓鬼はわしに向かって威圧するほどの魔力をわしにぶつけた。

 その魔力は凄まじく、わしの周りに居た使用人や貴族はバタバタと倒れて失神してしまい。

 ライネスまでも膝をつくほどに怯んでいた。

 そして、突然に倒れてしまった人達が大勢いた為、かなりの大騒ぎになってしまった。


「てめえ……さっさと倒れやがれ!?」


 どうやらわしを失神させるために、ありったけの魔力をわしにぶつけたようじゃな。

 ふふん、甘いのお……いくら魔力が強くても、周りへ拡散してしまうような魔力では、わしを怯ませる事なんぞ、到底できまい。


「わしは、これでも聖女と呼ばれているのじゃ。その程度の魔力がわしに効くとでも思ったか?」


 そしてわしはここぞとばかりに、ドヤ顔をかました。


「これで勝ったと思うなよ!」


 生意気な皇太子は顔を真っ赤にして、定番の捨てセリフを吐きながら走り去って行った。

 勝ったな。わしにケンカを売るのなら100年は早いわ!

 そして、皇太子が立ち去った後、わしは周りが倒れている人らが散乱する食卓で、気にせずに食べ続けていた。

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