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六話 聖女にジョブチェンジした元爺

 わしはそのまま元の世界に落とされて地上へ着地した。


「さて、元の世界に戻ったはいいのじゃが、この状況はかなり危険じゃのお」


 神殿長ギルスは既に倒れ、剣聖のライネスは……爪の攻撃を剣で見事に防いでおるが、黒い竜がそのまま勢いよく腕を振り回した影響で、遠くへ投げ飛ばされてしまった。

 ライネスも、流石にあの巨大な竜は受け止めきれなかったようじゃな。

 わしも肉体強化魔術で極限まで高めていたとしても、あの竜との力比べはご遠慮したい。

 そもそも体格差が反則じみとるわ!

 巨大な竜はわしにターゲットを変更したようで、竜が雄叫びを浴びながら、翼を広げ、吹き飛ばされたライネスを無視して、空を飛びながらわしへ突撃しだした。

巨大な体長なら動きが遅いと油断してたのじゃが

 そんな重量を感じさせない程に、かなりの速度でわしに迫ってきおる。

 直撃を受けたらひとたまりもないので、わしは空間転移で華麗に突撃を回避した。

 テレキネスの魔術で空に浮いたわしは、攻撃が空回りした竜の隙を見逃さずに、すぐに発動出来る魔術を唱え、巨大な渦巻く風の刃を複数作りあげた。

 そして、わしはその風の刃を竜に向かって発射させる。

 魔物や岩も簡単に切断できるほどの切れ味を誇る風の刃が

 かなりの轟音と共に巨大な竜へ直撃した。

 だが、風の刃は竜の鱗に少しだけ傷がついた程度であまり効いていない。

 そして何事もなかったのかのように、こちらへ振り向いた。

 いくらなんでも堅すぎるじゃろ……

 やはり、もっと強力な魔術を発動させる為に時間稼ぎが必要じゃな。

 じゃが、安易式の空間転移では、あまり遠くへ逃げる事は出来ないし、肉体にも負担が掛かるので空間転移の多用も出来ない。

 それにじゃ……あの巨大な竜ならば、わしが逃げ出しても、直ぐに追いついて行ける速度があるのが問題なのじゃ。


「さて、どうやって時間を稼ごうかのう……」


 そして黒い竜は空に浮いたわしに向かって口から何かを吐き出そうとしておる。

なにをする気じゃろうか?


「嫌な予感がするのう……空間転移で回避じゃ!」


 空間転移をして、わしがさっきまで居た場所には、真っ赤な炎が空一面に広がっていた。

 空に広がった炎はそのまま地上にも降り注ぎ、辺りはすっかりと炎が燃え広がってしまった。

 その燃え広がった場所から離れておるのじゃが、ここからでも熱さを感じさせるほどに、灼熱地獄と化している。

 ヤバイのじゃ……あれを食らったら死ぬ。


「しかし、女神の加護とはなんだったのじゃ!あの巨大な黒い竜を倒すほどの力は全然湧いて来ないのじゃが……」

「そんなの当然でしょ!女神の加護は私をこの世界に来れるようにする為に必要な儀式だったんだから。」

「えっ? 」


 わしの隣にはドヤ顔をしている女神ルビアが居た。

 

「私は支援がメインで戦闘は嫌いなのよねー。まあ、か弱い人間より超強いけど、流石にあの竜は私だけじゃ倒せないのよ。」


 そんなわしの驚きを無視するが如く

 女神ルビアはとある石を創造していた。

 良く見ると、その石はわしが見たことのある石へと変わっている。


「はい。聖石が出来たわよ。」

「それをどうするのじゃ? まさか、また封印させる気なのか?」


 ルビアはそんなわしの予想をあざ笑うかのように、ヤレヤレと、残念そうな表情を浮かべていいた。


「まだまだ考えが甘いわね。出来立てで新品の聖石は古い聖石よりも数百倍も魔力を持つ優れた石なのよ。これさえあれば、貴女でも島を消せる威力を発揮できわ!この聖石を貴女にあげるからがんばってね!」


 かなり物騒な事を言いおったぞ……

 それに、聖石をあげるって……ここまでしでかして他人任せかい!


「御免ねー私は攻撃するのが許可されてないから、戦闘の補助ぐらいしか出来ないのよー」


 そう言って、ルビスがペラペラとしゃべっていたが、黒い竜がこちらに気づいたらしく、口からまた炎のブレスをわしらに吐いた。


「ヤバイのじゃ!さっさとその手を放すのじゃ!このままじゃ焼かれ死ぬ!」


 わしの手を離さずに、余裕の表情でルビアはわしが見たことも無い魔術を唱えた。


「私が特別に貴女を守ってあげるわ! だから、その隙にあの竜を倒せる魔術を唱えなさい!」


 女神ルビアはその炎のブレスを大規模な水のベールに囲まれた障壁を作りだして、なんとか炎から防ぐ事に成功した。周りは地獄絵図じゃがな……

 もう何も言うまい……わしはさっさとこの聖石を使ってとある戦略級の大規模な魔術を発動させた。

 予想どおり、普段ならば数分から数十分はであろう大規模な魔術が聖石の力の影響で素早く魔法陣を完成させた。

 凄い効力じゃな……若返りの秘術の材料になるのも頷ける性能じゃ。


「さて……どれほどの威力か試させて貰うぞ!」


 わしが唱えた魔術……光と闇が合わさった混合魔術。光属性の魔術が使えるようになった今だからこそ使える魔術じゃ。シャイニングダークと名付けようかの。

 闇の影が竜の周りに出現し、竜の全てを覆い隠し動きを封じた。そして聖石の力で何倍にも威力が増幅していた光線が竜に襲い掛かった。

 竜はそれに抗う事も出来ずに倒れる。

 ふむ、凄まじい威力じゃな。普段よりもかなり強化されておるわい。

 そんな様子を見たルビアはすっかり目を輝かせていた。


「流石は私が認めた聖女だわ!これからも私の信仰を集める為に頑張るのよ!後、ピンチになったら、私を呼んでね!」


 そういいながら、わしにビシっと指を射しながら、ルビアは消え失せた。


「聖女か……聖女!?」


 しまった!わしは聖女にはなりたくなかったのじゃぞ!

 それがどうしてこうなったのじゃーーーーー!


 かくして……封印から解かれた暗黒の竜は

 聖女へと覚醒したエリー王女に滅ぼされる事で

 この騒動は終幕した。

 そして、この出来事はルビア神殿から永遠に語り継がれるように歴史へ記録に残されたのであった。

 神殿の名も、ルビア・エリー神殿へ改名された。


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