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四話 神殿へ出向くロリババア

 ルビア神殿――ここはかつて、聖女ルビアが太古の昔に女神が創造させたと云われる聖石を、女神の加護を授かった聖女ルビアが聖石を創造する事に成功し、異界から現れた凶悪な暗黒の竜を3つの聖石で封じた場所として祀られている。

 しかし、この神殿にはとある問題が抱えていた。

 数十年前……厳重に警備されていた筈の神殿に何者かが侵入し、聖石を一つだけ盗まれてしまったのだ。

 聖女ルビアで封じられた聖石の力が一つ欠けてしまった事で、封印の効力が大幅に弱体化が侵攻。

 そして……今では封印が破られる危険性が高まるほどに悪化の一途を辿っているのである。

 失脚を恐れた当時の神殿長は

 その出来事を各国へ公表せずに、失った聖石の代用品として、動力源に魔力結晶を使っていたが……封印の効力は弱まる一方で焼け石に水であった。

 新しく就任した神殿長はなんとかこの危機的な状況から打開する為に聖石を創造できる聖女候補を世界各地から探し求めたが、光属性の魔術が使える女性が殆どで、女神の加護を授けられるほどの真の聖女は、まだ見つかっていない。


「このままでは封印が破られるのは時間の問題だ……」


 神殿長のギルスはそう嘆き、深いため息を吐いた。

 だが、そんな暗雲が立ち込める中、かすかな希望の光降り注いでいた。

 パラミア王国で封じられていた魔剣ジラート。

 この魔剣も暗黒竜と同様に、聖女ルビアが邪悪な魔族を魔剣ジラートに封印させる事を成功させた。

 だが、クーデターを引き起こしたグレンは魔剣の力を行使し、王族達や関係者を殺害させて、魂と魔力を魔剣に吸収していた。その報告を聞いた神殿の上層部は、封印されていた魔族が解かされるのではないか……と、危惧されていた。

 そして、その危機から救ったのは国王の娘であるエリー王女。

 幼少の頃から光属性とかなりの相性が良かった彼女は逆賊グレンを討つどころか、魔剣ジラートもエリー王女が行使した奇跡の魔術を発動させて、魔剣を空間の彼方へと封じられたと伝われている。

 その知らせを聞いた神殿長ギルスは急いで使者を送り、最有力となる聖女候補としてこのルビア神殿へ招き入れる事に成功させた。


 


「何故わしが神殿に出向かないといけないのじゃ……」


 よりにもよってルビア神殿からの使者。

 わしが、聖女候補の最有力者になったらしく、ルビア神殿に向かわねばならなくなったのじゃ。

 パルミア王国はかつて聖女ルビアに救われた歴史を持つ理由から、女神教は国教となっている。

 そのため、女神教からの要望は、ある程度に支援を出しているそうなのじゃ。


「そんな嫌な顔をなさならいで下さい。綺麗な顔が台無しですよ?」


 わしの機嫌を直そうとしているのはライネス伯爵……

 王城に突入するも、ライネスを残して全滅してしまった使えない騎士である。

 命を救われた彼は領主の統治を弟に譲り、わし専属の護衛騎士に志願したそうじゃ。

 グレン程度に倒される腕では、足手まといになりそうじゃが、パラミア王国では剣聖の異名をもつほどの実力者じゃ。


「嫌なものは嫌じゃ!」


 そもそも、なぜ誰もわしに違和感を覚えないのじゃろうか?

 いくらわしが……認めたくはないがエリー王女の身体だったとしても

 エリー王女と老人だったわしでは行動も言葉にも不自然がでる筈じゃろうし、わしの魔術にも疑問を抱く所か感激すらされてしまった……。


「やはり、まだまだ子供ですね。大丈夫です。もうすぐで着きますから、それまでの辛抱です。」


 100年以上は生きたわしを子ども扱いするとか……

 わしって、そんなに子供っぽかったかのう? 

 確かに今の姿は子どもの姿じゃし、問題はないが……

 もう気にしたら負けじゃ、さっさと神殿へ向かおうかの。


 そして、ルビア神殿へ辿り着いたわしらは、神殿長から歓迎され、温かく出迎えられた。

 わしらの一団は、明日の聖女になる儀式の為に客室で休息中じゃ。

 聖女ルビアの聖地だけあってか、かなりの信仰者がおったの。

 それにしてもこの神殿……何処かで見たことがあるのう?

 まあ、気にするほどの事ほどではないか。

 考え事をやめて、わしはさっさと旅の疲れを癒す為に寝室に寝転んで熟睡した。



「ここは何処じゃ?」


 意識を取り戻したわしは驚愕した。

 まわりは床もまわりも空も白い空間に囲まれて何も無い。

 おかしい……わしは、寝室で寝ていた筈じゃ……

 まさか、ここが女神の信託を授かる場所なのかのう?

 だとすれば冗談じゃないぞ! 既にわしは王女となってしまい、王族は国王を残して皆殺しにされ、唯一……王族の血を引いているわし。

 将来は王族の後継者となってしまい、有力な貴族と婚約されてしまう危険性が高い。

 そんな貞操を失ってしまう危機的な状況で聖女まで祀られてしまっては、もはや女性と生きていかねばならぬ。

 そんな不安を感じておったわしをあざ笑うかのように閃光が光り、にっこりとほほ笑む銀髪の少女が現れた。


「なん……じゃと……!?」


 現れた少女は王女となったわしの姿と形もそっくりじゃった。

 まさか、ドッペルゲンガーの仕業なのかのう?


『こうして話し合うのは初めてじゃな。わしはエリー第二王女じゃ。』

「なん……じゃと……!?」


 あまりの衝撃に二度も驚いてしまったわい。



『驚くのも無理はないのじゃ。まさか、グレンに殺されたわしが、魂ごと他人の魂と同化される秘術なんぞ初めての体験じゃったわい。』


 どうやら、エリー王女の魂はわしの魂の中で生きているようじゃ。

 それよりも、言葉遣いがここまでそっくりじゃったとは……


『お父様をお救い下さって……本当にありがとうなのじゃ!』

「礼を筋合う気はないのう。結局わしは、おぬしの肉体を偶然に手に入れて、偶然


 にも逆賊グレンを退治しただけなのじゃから。」

 そうじゃ。全ては偶然なのじゃ。決してわしの意思で王女を乗っ取ったりする気はしなかったし、グレンを退治する気もなかった。

 結果的に、王女となってしまったのは致命的じゃったがの……。


「それよりもここは何処じゃ? まさかおぬしが女神と云うのではなかろうな?」

『ここは、冥界の入口。死後の世界と生の世界の境界線じゃ……女神は残念ながら居ないのう。』


 女神が居ない? ならば、わしはまだ聖女になってなかったってことじゃな! 危ないところじゃったわい。


「なるほどのう……成仏できなくなった原因はわしか。」

『そうじゃ。お蔭でおぬしを王女にさせる事に成功させたのじゃ。』


 なぬ!?今の話は、聞き間違いじゃろうか?


「ま……まさか、王城から逃げられなくなったのは……」

そして、わしそっくりのエリー王女はにっこりと笑顔をうかべ……

『わしの影響じゃな!』


 ……とドヤ顔で言いおった。

 王女になってしまった事、その後も転移すれば簡単に逃亡は可能な筈じゃったはのに、ワシが逃げられない原因……ワシはエリー王女の魂に強く影響を受けるほどに同化してしまったのじゃ。


「おのれえ……!さっさと成仏するのじゃ!!」

『もう無理じゃ。わしらは同化してしまったのじゃから。』


 これは本格的に不味い。

 王城から逃亡する退路はとんでもない疫病神のせいですっかりと塞がれておるではないか……


 おや? 周りの景色が揺らいできておるのう


『どうやら時間切れのようじゃ。また機会があればこうしてお話したいのじゃ!』


 そんな別れを惜しむかのような表情を浮かべるエリー王女じゃが

わしははっきり言ってゴメンじゃ!


『それと……この神殿は女神だけではなく、なにかとてつもない存在が出現しようとしておる……気を付けるのじゃぞ!』


 エリー王女が最後にとんでもない爆弾発言を残して

 わしの意識は深い睡眠から目覚めた。

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