三話 王城に転移してしまった元爺
「ふむ……どうやら転移は成功したようじゃが……なんじゃ! この惨状は!」
無事に転移は成功しおったが、転移した場所が問題じゃった。
よりにもよって、王城の王座の間で、しかも漆黒の鎧で図体のデカいこやつはどう考えても逆賊グレンじゃな。
もう一人の騎士は座り込んでいて虫の息になっておるし
両手手足を縛られておる人物は王冠を被っていて、わしを見つめておるな。あれが王様の可能性がたかそうじゃ。
そしてグレンは騎士に留めを刺すのをやめて、こちらを驚きの表情で見つめておる。
「おかしいな……確かエリー第二王女は殺した筈なんだがなぁ」
こやつ、わしをエリー王女と勘違いしておるな。
「エリー王女? 人違いではないか?」
「実物を拝見していた俺様が人を見間違える筈がねえ! まあ、俺が殺した奴が影武者でお前が本物って事か。」
まったく、いくらなんでも勘違いしすぎじゃろ、おぬしの目が節穴すぎて困るわい。
ふむ、予定は狂ったが、王様の恩を売るのも悪くないの。
ここでわしが退治してやれば
立ち入り禁止だった図書館の入室も許可させて貰える可能性も高そうじゃ!
うむ! 実に良い案じゃ!
「人違いだと言うのが聞こえんのかの? まあ、ここで死ぬおぬしには、何を言っても無駄じゃ」
そう言ってわしは、さっさと邪魔ものを片付ける事にした。
「ほう、箱入り王女だったお前が大口をほざけるとは恐れ入ったぜ!」
そう薄気味笑いを浮かべるグレンが黒い魔力を身に包み、わしに向かって、どす黒い剣で切り付けた。わしも切られるのは御免なので、空間転移で避ける。
グレンが突然の消失に驚いている隙に、マジックポケットからわしのお気に入りである光輝く魔剣を取り出し、両手で柄をしっかりと握り締めながら背後から鎧ごと一刀両断した。
「ふむ、あっけないのう……国に反旗を翻した人物がこの程度とは拍子抜けじゃわい」
とは言っても肉体強化魔術の制御に失敗しまい。極限まで身体能力を高めたおかげで、わしの小さな肉体は悲鳴を上げている。
「グ……オノレェ……オレをなめるな!!!」
狂気じみた表情を浮かべるグレンは両手で黒い剣を強く握り、そのまま胸を鎧ごと突き刺した。
「ククク……いい事をおしえてやる……この魔剣は生きている……そして俺の魔力を吸い取れガ!!!」
嫌な予感がしたので、わしはさっさと瀕死になっているグレンの首を切断させる。
その予感は的中した。グレンの亡骸が剣に吸い取られるが如く消え失せおった。
そして黒い魔剣はみるみると黒い影を広げながら巨大化してるので、わしは、ありったけの魔力を注ぎ込んで、巨大な魔法陣を形成させた。
そんな作業をしている途中に、どうやら黒い魔剣は形を変えつつある
「おおおお!!!!ついに我の封印がっ!」
「マジックポケット!」
封印とかどうたら言っておった魔剣は、かなりの厄介な呪いのアイテムたったので
わしの危険物専用マジックポケットに閉じ込めた。
この特注品のマジックポケットなら、爆発する危険性があるアイテムだったとしても、異空間に閉じ込められているので、わしには影響がない。
「ふう、危ないところじゃったわい。」
これで王国の危機は救われた。
とりあえず、手足も口も塞がられておった傷だらけの国王を開放させないといかんな。
ふふふ……資金の底が尽きかけておった所じゃし、報酬金もたんまりと頂こうかのう
じゃが――この国を救ってしまった事が思わぬ事態を招く事になるとは
知る由もなかった。
「王女様。今日はライネス伯爵様との面会です。」
そう、わしは王女となってしまった。
簡単に説明すると、わしはエリー王女じゃないと突っぱねたのじゃが、国王からのお願いに何故か拒否できずにそのまま王女になってしまった。
本来の目的から脱線し、恥ずかしくなるようなかわいらしい白いドレスまで着せられてしまったわし。
どうしてこうなったのじゃ……