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一話 ロリババアの旅立ち

室内の中にひっそりと研究をする老人

彼には、どうしても完成させねばならない魔術を研究していた。

若返りの秘術……

古代の遺跡で発見した彼は、その秘術に必要な材料を世界中でかき集めた。

数十年も旅をした結果もあり、後は、新鮮な遺体を入手するだけであった。


「ふむ……人を殺すのが手っ取り早いが

流石にこの隠れ家までは遠すぎて新鮮じゃなくなっておるの」


そこで彼はもっとも簡単な解決法を思いつく。


「フフフ……新鮮な遺体を召喚すればよいではないか!」


老人の莫大な魔力があれば、魔法陣を展開して、この世界で死亡した

新鮮な若い遺体を指定して召喚する事は容易く行う事が出来る。

さっそく魔法陣を展開した彼は、召喚する準備を開始した。

彼の唱えた魔術によって、魔法陣の中に胸に血が湧いている銀髪の若い女性の遺体が出現した。


「胸の心臓に刺されて即死と言った所か……」


身体の体温もまだ冷めておらず

たった数分前までは生きていたのだろうと老人は思考した。


「少女よ、悪く思うなよ……遺体はわしが有効に活用してやるからの」


彼にとっては罪の意識はまるでない。

直接殺した訳でもなく、何者かに殺された遺体

己の研究を遂行させる為の糧となる駒でしかない。


「ふふふ……ついに、材料は揃った!この秘術が成功すればついに念願の若返りが叶う!一世一代の大勝負じゃ!」


この秘術の不安要素は実験を全くしていない事だ。

1000年に一度に実る世界樹の種を命がけで採取した事や

厳重な警備で固められた神殿に保管してある聖石を盗みを行うなど

限られた素材で実験を行えば生前では二度と秘術を発動する事が出来なくなってしまう。

彼の寿命が尽きかけている今、彼はこの秘術が空想の産物で失敗するリスクがあるとしても、若返りのリターンを渇望していた。


「さて、わしも魔法陣の中に入ろうかの」


カツカツと歩き、よぼよぼの老人が魔法陣の中心の中に入り

テレキネスの魔術を使い

新鮮な遺体は魔法陣の外円へ

秘術に必要な素材も遺体の周りに置いた。


「準備は整った、さらば!老体よ!」


彼の莫大な魔力を使い

若返りの秘術を発動させる。

閃光の光が周りを包み込み

彼は意識を失った。



むむむ……ここは何処じゃ

周りが真っ暗ではないか!

秘術の発動はまだ続いておるのかの?

おっ! あんな所に鏡があるではないか!

全盛期のワシはかなりのイケメンじゃったからな

久しぶりに顔を拝ませて貰おうかの

どれどれ・・・・・・・


そこに写し出されていたのは

醜いオークじゃった……


「ぎゃあああああああああ!!!!!!!!!!!」


 あまりの出来事に驚き、思わず悲鳴を上げて目を覚ませてしまった。


「な、なんじゃ……夢か、脅かせおって」


あれ? なんでこんなに声が高いのじゃ?

いくら若返ったと言ってもここまで高くはなかったぞい?

起き上がった場所は魔法陣の円陣から離れ、少女の遺体だった場所に居る

自分の身体を見てみると何故か遺体だった少女の衣装

嫌な予感がしてきたわい……

恐る恐る胸と下半身を触ってみると


「なん……じゃと……!?」


ワシの相棒が消えていた

ある筈の相棒が喪失し、胸も僅かに膨らんでおった。

思わずワシは鏡の置いておる場所へ駆け上がり

顔をのぞかせてみるとそこに写っておったのは

銀髪の遺体だった少女じゃった。


あまりの衝撃に目の前が真っ暗になってしまった。



「どうやら秘術は成功したようじゃの……」


一世一代の大勝負であった若返りの秘術は成功させたが

まさか、若返るのではなく、新鮮な遺体に乗り移るのがこの秘術の目的だったとは……

あの時に、新鮮な若い男性が召喚されていれば……

遺体に乗り移るのが目的の秘術だと気付いていれば……

やめよう、もう過去には戻れないのだ

この現状を素直に受け入れるしかないわい





「今日は快晴。旅に出るのにもってこいじゃな!」


今のわしは、目立つ服装だった少女のドレスを脱ぎ捨てて

子供サイズの黒の服装と黒のロープを身に包んだ服を着ている。

かなり目立ってしまうが、あの恥ずかしいドレスよりはマシじゃ。

目的地はガイラー魔術図書館

関係者以外は立ち入り禁止であるが

様々な魔術に関する辞書が保存されておる。

その中には性転換に関する辞書もあるはずじゃ!

そう願って、わしは当面の目標である、男性に戻る為に必要な情報が眠っておると考えた。

旅はいたって順調であった。

途中で盗賊や魔物も襲撃する事があったが

わしの魔術の前では赤子も同然よ

何故ならわしの魔力はこの少女に受け継いでおるどころか、生前の時よりも増幅しておったわい。

どうやら少女の魔力も失わずに継承しおる。わしには発動する事が出来ない光属性の魔術である障壁結界。これは野宿する時に突然頭の中に湧いて発動する事が出来た魔術じゃ。

術者の許可が下りていない生物は決して侵入が出来なくなる優れもの。まあ、最上級の魔物には効果が無いようじゃのう。

じゃが、この地帯の魔物なら問題なく守る事が可能で、これがあるお蔭で野宿が生前の時と比べてかなり楽になったわい。

持ち物もマジックポケットに入れるサイズなら何度でも出入り可能な便利アイテム。これは、わしが独自に開発したわし専用の魔道具じゃ。

これのお蔭で身軽な荷物で旅をする事が可能である。

 2日かけてグラート都市にたどり着いた。

 この都市に立ち寄る理由は情報収集じゃ

 数十年間も研究の為に引き籠っておったからのう・・・・・・

 わしは魔術師ギルドに向かい、最近の情報を調べる事にした。

 魔術師ギルドは全国の主要な町に拠点としている

 魔術師の資格を得る為の試験や依頼の情報、魔術師だけが得られる特許など

様々な利点がある施設じゃ。

 一般向けには情報屋や依頼の受付も開いておって、わしも昔は金稼ぎの為によく利用したのぅ……

 まあ、今は王都の情報が欲しい。

 さっそくわしは情報屋に出向くことにした。



「王都に行かないほうがいいです。グレン騎士がクーデターを起こした情報が届いていて、今王都は大変な事になっているわよ。」


 話によると、王都では複数の騎士が王城に反旗を翻して

 王族や城の者たちは皆殺しにして立てこもっておるようじゃ

 王族が根絶やしにされたのが本当なら

 かなりヤバイ状態じゃないではないか……


「ガイラー魔術図書館は無事なのか?」

「無事かどうかの情報はまだ分かりません。」


そこまでの情報はまだ無いのか、使えぬ奴じゃ。


「ですが、ライネス剣聖様が兵士と魔術師を引き連れて、逆賊であるグレン騎士の

討伐に向かっています。数日になれば鎮圧される筈です。」


 剣聖殿か、かなりの実力をもってそうじゃの。

 いや、待てよ?

 王都が無法地帯になっておるなら

 ガイラー魔術図書館も簡単に入館出来そうじゃな。

 それに、このまま時間が経過してしまえば

 魔術図書館も無事で済む保障もない

 ならば、さっさと急いで王都に向かうかの。


「なるほどの、鎮圧するまで待つしかないと言う事か情報提供感謝するぞい」

そして情報屋はニッコリと笑顔を出して

「では、300ゼニーとなります。」

「うむ」


 これで、魔術師ギルドに用は無くなったの

 クーデターか…

 そして王族が皆殺しにあった情報が正しければ

 この国の情勢はかなり不安定になってしまうの


「まあ、わしには関係の無い話じゃの」


 しかし、運がいい。

 わしには、転移の術式が遥か昔に王都でこっそりと登録しておったのじゃ。

 今もその術式が無事ならば王都へ一瞬で向かう事が出来る。

 さっそく、わしは、この町で王都と接続させていた転移の術式を発動させた。


「待っておれよ、魔術師図書館よ!」


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