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リリーファンタジー  作者: 佐藤謙羊
聖剣ぶらり旅
223/315

53

 変顔をしている間に、いつの間にか雨はやんでいた。

 みんなの笑顔が太陽みたいにまぶしかったので、雨雲も退散してしまったのかもしれない。


 夕方までお茶をしたあと外に出て、調理場でパンを作った。


 4人ずつの5チームに分かれ、パン食い競争の最終競技で他チームが作ったパンを、ありもので再現してみた。

 私はルサンドマンさん役になり、実況をやった。


 ショコラパンはカエルチョコレートを溶かして生地に混ぜこみ、ポットパンは野菜シチューを詰めていた。

 ニンニクがあったのでガーリックトーストは問題なく作れたようなんだけど、武器みたいに鋭くする必要はないと思ったのか、普通にカリカリに焼いていた。


 トップバーガーは肉がないのでさすがに無理かと思ってたんだけど、シロちゃんが大豆を使って肉モドキを作り、それを挟んでいた。


 このアイデアにはみんな舌を巻いた。

 いつもは引っ込み思案なシロちゃんだけど、料理となると水の都に引っ越してきた人魚みたいになる。

 貝殻の水着なんて絶対に着そうもない恥ずかしがり屋の人魚たち。

 忙しそうにぱたぱたと、でも楽しそうに背中の翼を揺らしながら、調理場という名の海を縦横無尽に泳ぎまわっていた。


 あ……そうそう、我らがコッペパンも作ったんだった。

 生地をこねるときは例の歌を唄うのもモチロン忘れなかった。21人で唄うとさすがに賑やかで、コンクールで合唱してるみたいになった。


 焼きあがったパンはみんなで食べた。


 トップバーガーは件の肉モドキがいい仕事をしていた。

 ツヤのあるふっくらパンと対比するように噛みごたえがあって、ガブリと頬張るとこってりしたソースの味わいが広がる……本当にハンバーガーを食べてるみたいだった。


 ポットパンは私が一番期待していたやつだ。

 パリパリに焼いたクロワッサンの器に詰まった野菜シチュー。

 まずは蓋がわりのパンを浸して食べると、とろりとした食感のあと、パイ生地みたいなさっくりした歯ごたえ。

 シチューの甘さとバターのコクがあわさって……ほっとひと息つけるような、やさしい味だった。


 ガーリックトーストは細長く切ったフランスパンにガーリックソースを塗ってカリカリに焼いたもの。

 鋭さはないけど、ショートソードみたいに長い。ひとり一本は多いので、ふたりで一本食べた。

 私はイヴちゃんとペアになったんだけど、普通に半分こしても面白くなかったので、両端から同時に食べ始めることにした。

 早く食べ進めたほうがいっぱい食べられるんだけど、途中で勝負っぽくなってイヴちゃんはムキになってバリバリムシャムシャと食べていた。

 唇が触れるくらいまで顔が近づいたんだけど、寸前で我に返ったイヴちゃんから押し返されてしまった。


 そして仕上げのオヤツとしてショコラパンを食べた。

 固めに焼いたそのパンはパウンドケーキみたいでおいしかった。

 イヴちゃんの要望によりチョコのほろ苦さよりも甘さが全面に出ていたけど、これはこれでアリだった。


 各種パンを食べる合間に、コッペパンを食べた。

 シンプルなコッペパンは口直しに食べるのにちょうどよく、しかもこんなに美味しいコッペパンで口直しできるなんて……なんだか貴族にでもなった気分だ。


 本物は食べたことがないのでわからなかったけど、どれもすごく美味しかった。

 でも……大きめのパンを5個も食べてしまったので、ちょっと苦しくなってしまった。


 みんな動けずに、食卓でぐったりまったりしていると、


「みてみてリリーちゃん、おなかいっぱーい」


 ミントちゃんが服の裾をまくりあげておへそを見せてきたので、膝に抱っこしてお腹をさすってあげた。


「ミントちゃんのお腹、ぽんぽこりんだ……これじゃミントちゃんじゃなくてタヌキちゃんだ」


「ミント、ぽんぽこタヌキちゃん!?」


「そうだよタヌちゃん。……そうそう、タヌキになったら『た』はしゃべっちゃダメなんだよ」


「ほんとに!?」


「だって、『た』抜きだからね。もし『た』をしゃべっちゃったらこちょこちょの刑にあうんだよ」


「こちょこちょ、いやっ!」


「じゃあ『た』をしゃべんないようにしなくちゃ」


「うん!」


 私はテーブルのスプーンを取ると、拡声棒っぽくミントちゃんの口元に差し出した。


「ではタヌちゃんにお伺いします。今日のごはんはいかがでしたか?」


「おいしかっ……おいしいー!」


 めいっぱい片手を挙げ、元気いっぱいに答えるミントちゃん。

 ポニーテールがピンと立ち、私の顔を撫でた。


「そうですか。ではタヌちゃんが大会のときに味見したパンってどんな味でしたか?」


「んーとねぇ……よくおぼえてないや」


 ポニーテールがしおれる。


「そうですか。うーん……それでは、今日食べたパンと味見したパン、どっちがおいしかったですか?」


「えーっとねぇ……ぽんぽこになったから、きょうのパンのほうがおいしかった~!」


 案の定、二択を考えるのに意識を奪われていたミントちゃんはあっさりと『た』を口にした。


「あっ、『た』をしゃべった! それも2回も! こちょこちょこちょ~!」


「きゃあーっ!? きゃははははははははははは!!」


 私はミントちゃんのお腹をさすってたんだけど、そのまま服の中に手を突っ込んで、素肌くすぐりに移行した。



 ……腹ごなしのスキンシップもすんだところで、私はみんなに、せっかくだから一番を決めようと提案した。

 最下位のパンを作ったチームは後片付けの罰ゲーム付きで。


 美味しかったと思うパンを投票してもらったんだけど、それぞれ4票づつが入って同数になってしまった。

 パンは5種類で21人いるから普通に考えたら同数にはならないんだけど、私がお腹をさすってあげたミントちゃんが「ぽんぽこ」に投票してしまったので6種の争いになってしまったのだ。


 結局、投票者によるじゃんけんで決めることにした。

 勝ち抜き式のじゃんけんで勝利したのは、完全なるダークホース「ぽんぽこ」に投票したミントちゃんだった。


 優勝チームを胴上げしようとしたんだけど、ぽんぽこチームはなかったので投票者のミントちゃんを胴上げした。

 ちょっと物足りなかったので準優勝チームも胴上げした。

 準優勝チームのイヴちゃんは例によって嫌がったんだけど、他チームのイヴちゃんたちが協力して、なかばムリヤリ胴上げした。

 みんなが入り乱れてごちゃ混ぜになり、途中で誰を胴上げしたかわからなくなったので、参加者全員を胴上げした。

 結局、後片付けもみんなでやった。

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