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就職活動(彼視点)

まだ、主人公と彼が大学生だったころのお話です。これで『ご褒美は誰のもの?』は完結します。今までありがとうございました。

大学からの推薦状をもらって推薦を受ける会社に面接にいった時のことだった

人事部の人に名前を呼ばれた人から個別に会議室に入っていく

自分の名前を呼ばれたとき

そばにいた人がおれの名前をつぶやく

そちらを見るとその人は中学の時の先輩だった

驚いた顔をした先輩を見ながらおれは頭を下げた

そのまま会議室に入る


面接が終わって外に出ると用事を済ませたのか先ほどは手にしていなかった書類を抱えた先輩に再び出会う

「もう帰るの?そこまで一緒に行っていいかな」

そういいながらビルの出口のほうに歩いていく



「・・・随分と成長したのね・・・すっかり男らしくなっちゃって・・・」

近所のおばさんみたいなことを言う。

中学の時のおれはチビで顔も中性的だったから女と間違えられることがあった

だから久しぶりに会った人は大抵そう言う



相変わらず、さっぱりしていて、でも笑顔のやさしそうな人だ。



「彼女は元気にしてるの?前に会ったときは今でも部仲間だって彼女言ってたけど」


あいつに彼氏がいた時のことだ


急に胸をぎゅっとつかまれた気がした

未だに、当時のことを思いだすと苦しくなる



先輩と本屋で会ったって言ってたな

その時の会話を聞かれたのが原因でその彼氏と別れたんだっけ?

でもどうしてそうなったんだろう・・・そこまで聞いてなかったな・・・


「部活動は辞めました、大学は同じですけど・・・最近忙しくて僕はあんまり人に会ったりしてなくて・・・」


「そう・・・あなた達、そのうちつきあうのかと思ってたけど、私の勘違いだったのね」



おれとあいつが中2でこの先輩が中3の時

あいつは放課後にこの先輩に呼び出されて、告白されてキスされた

部活の先輩だったから周りに迷惑がかかったらってあいつは気にしてたからおれ以外の誰にもそのことが相談できなかったし、自分でどうしようもできなくて参ってた

相手が同姓だったし、で可愛がってもらっていたからあいつも純粋に慕っていたから、かなりショックだったと言っていた

だからおれが変わりに先輩に会って断ったんだ


その時はなんかしんどかった

女子部の先輩とはいえ、一応同じ部活の先輩だから

言葉遣いも態度もめっちゃ気を使ったし

内容も内容だし

悪い印象のなかった人だったからできるだけ傷つけたくなかった

すべてを話した後、この先輩に



「あなたは男だからあの娘を好きでも問題がない、私は同じ土俵にたてないから悔しい」


「彼女を大切にしないと許さないから」


とか涙ながらに責めるように言われて

あいつをそういう風には見ていなかったから、戸惑ったものの

同情したおれは、自分が女で先輩が男なら良かったのに、と真剣に考えたりした。


今考えたらちゃんちゃらおかしい話だ

『男』であったからってそれだけじゃどうしようもない

未だにあいつはおれを友人としか見ておらず

しかも、一時期は避けられてたんだから・・・


先輩に見送られてビルを出た


「4月から宜しくね」

来年の話をする先輩の目は言葉とうらはらに昔を懐かしんでいるようだった



今どうしてるのかな

・・・おれ何やってるんだろう


大学2年の終わり、半年留学していたイギリスでの最後の夜

親代わりの役目はもう終わりだと

ずっとホームシックで弱っていたあいつにいいよった


「日本に帰ったら・・・大学が3年になったら・・・よそと違って、うちの学部は途端に忙しくなる、多分泊まりこみも多いし、今までみたいにずっと一緒にいられることはない・・・でも、もし・・・」



でも、もし大学を卒業して、何もかもが落ち着いたら、今みたいにずっと一緒にいたい


そういいかけたんだ

でもあんとき邪魔が入って最後まで言えなかった。

今は最後まで言えなかったことが、結果として残念なことだったのか、そうでもなかったのか、今になってみるとなんともいえない


日本帰ったら、会えなくなるし、イギリスであいつがおれにくっついてたのはホームシックからくるものだったのもわかってたし・・・


日本に帰ってきて大学生活が始まると思ったとおり俺は実験に夢中になった。

高校のときからずっとやりたいって思ってたことだったから

自分がやっとその位置に立てたのも嬉しかったし、

1人で考えてきたことをそこではみんなと共通の話題として話し合ったり教えてもらったりできる。

まるで夢のようだった。

だから、他のことまで考えられなくて、この一年の間に彼女と自然と距離ができた


このまま就職したらもっと彼女との距離は開く

それはまずい・・・

あいつ、就職活動してんのかな?

あいつの弟に電話してさぐりをいれてみるか・・・

もしまだ決まってなかったら・・・できるだけ自分に近いところにいさせたい

それくらいなら、なんとかできるかもしれない・・・

頭の中で、知り合いがいる会社の中であいつの好きそうな仕事ができるところをいくつかピックアップする


就職先が別でも、できるだけそばにいないと、この先はどうなるかわからない

もう学生じゃなくなるし、社会人の年頃の男性と付き合い始めたら、結婚ということもあるかもしれない

他の男とそうなって手が打てなくなる前に自分に振り向かせたい

今度は強引に奪うんじゃなく

ちゃんとあいつの気持ちを確かめて距離をつめていこう


勝負は卒論が終わってからと思ってたけど・・・一時的に始めるか・・・

そう思いながら最寄駅の入り口に入っていった



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