表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

彼女の友達

「やっぱり、あいつがファーストキスの相手なわけ?」


キッチンでがさごそしている男をあごで指しながら、私は中学からの親友に質問した


「えっ?」


「私見たんだよね、高校の時さ、部活の友達が足折ってみんなで病院にお見舞いに行っ後、河原でキスしてたの」


もうこういう話してもいいよね

めでたく2人はカップルになったんだし・・・


キッチンからやってきた、そのキスの相手がトレイに乗せていたコーヒーが入ったカップをテーブルにおく

続けてナッツとチョコとクッキーが乗せられたお皿も一緒におきながら、とんでもないことを口にした


「こいつ、こう見えて結構すごいからさ、ファーストなんてもう中2で済ましてるよ、しかもおれじゃなくてひとつ上の先輩とさ」


「ちょっ・・・」


「ええええ!」


私と友達の声がかぶる

彼がいたずらっこのような顔をしてにやりと笑う

今まで親友だと思っていた娘に今、思いっきり裏切られたような気分になる



「誰それ?どういうこと?どうしてそいつは知ってて、私は知らないわけ?中2ってもちろん私達すでに知り合ってたよね」


「ちなみにおれのファーストの相手はこいつだから」


私は彼ではなく・・・私の怒りに震えて縮こまっている友達を睨んだ

ダメだ、おびえすぎてまともに話を聞けそうもない


再び彼のほうを見る


「・・・ちょっと待って・・・あんたは高校入ったときすぐできた彼女とが初めてじゃないの?じゃあそれより前にあんたとこの娘はキスしてたってこと?河原でキスした時はあんたは最初の彼女と別れた後だし・・・まさかあんたのファーストも中学でやったってことないよね」


「やったよ、な?」


「・・・うん」

そういった彼女の声は小さくて震えているようだった


「なんなの!中学のときに年上とファーストを済ましたどころかこいつのファーストまで奪ってるって事?」



「いや、ちょっとなんか悪い風に想像してない?」


「想像じゃなくて事実でしょう!」



少し緊迫した私と彼女の間を楽しむように彼がふふって笑う声がする



「・・・ごゆっくり、おれもうちょっと仕事するわ」


そういいながら私達に爆弾を落とした彼は片手にコーヒーの入ったマグカップを持って寝室に入っていった




ここは彼と私の親友(と私が今まで勘違いしていた)が一緒に住んでいるNYのアパートで

私は会社の年末年始の休みを利用して観光がてら2人の顔をみにきたのだった


このカップルと私は中学のときからのつきあいで学校も部活も塾も、続いて進学した高校や大学までずっと一緒だった


知り合った当初からこのカップルはもう誰も入り込めないくらい仲良かったんだけど

あくまでも友達の枠を超えてはいないし、そういう風に周りにからかわれたくない、と

きっぱり彼女が言い切っていたので、彼との恋の進展があるのか、なんて質問はタブーだった

だから2人の様子がおかしいなって思ったときも、彼女が口を開くまでは何も聞かず黙っていたんだけど・・・


でも、別に他の人との恋話は言ってくれたっていいじゃないか

私は結構なんでも正直に話してたのに・・・あんまりだ・・・


しんと静まり返ったリビング


「違うの・・・弁解させて」


「何?」


「実は、中2のとき仲良くしてた先輩いたでしょう」


彼女がいった名前は中学の部活の先輩で・・・女なんだけど・・・


「引継ぎが終わってから一度私部活終わってから呼び出されたの、覚えてる?」


「なんかあったな・・・そういえば」


「その時・・・されたの」


「はっ?」


「先輩だから私がこのことを部活の関係者に話して部全体の雰囲気を壊すのも怖かったし、女の子同士っていうのもなんか部外でもいろいろ噂になったら大変だし、と思うと言えなくて・・・」


今、理解した・・・この娘は要はレズっけのある先輩に呼び出されてキスされたってことか・・・

確かにあの先輩には気に入られてたけど、まさかそんな風に見られてたなんて私も気づかなかったわ・・・

部の雰囲気を壊したくない・・・それもわかる、あの時はみんな県大会に向けて結束を固めていた時期だったからだ


「・・・で、それが中2あんたのファーストね、で、彼とはなんでそうなってんのよ、あんたは私には彼とは純粋な友達っていってたじゃないの」


「うん・・・それは変わらないんだけど・・・」


彼女の顔が真っ赤になる


今まで私に黙ってたんだからちゃんと申し開きをしてよ、もう


・・・しかしながら、だまされたよなぁ・・・みんな・・・


河原で2人がキスしてたのは買出しから戻ってきたあの時のメンバー全員が見てしまったことで


でも他の女に振られてかなり落ち込んでる彼には、誰もそれを見たって言い出せなくてそのままになっていた


そのメンバーの共通認識としては

私達の中では彼のファーストは付き合ってた彼女で

この娘のファーストはこの河原での彼が相手なんだろうって思ってた


だから彼が最初に予約した彼女には他の男は手を出さない・・・そんな不文律が本人に知らされないまま、部員の間でささやかれてきたというのに・・・


なのに事実は反対で

この娘のファーストは別の人で・・・

彼のファーストの相手はこの娘だったんだ・・・


なんかおかしい


別にこの娘が彼を手玉に取ってるとか、みんなを欺いていたとかでは全然無いんだけど・・・


どう説明しようかとあたふたしている友達を見ながら


実は彼女はやり手なの?って思っていたさっきまでの自分に笑えてくる



「時間はたっぷりあるから、いくらでも説明は聞くわよ」


クッキーを一枚口の中で砕きながら

相当に焦っている彼女を顔をみてにっこりと笑った


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ