再び
「あの、商品イベントの件で宝田社長にお会いしたいのですが・・・」
私は男性にアポイントをとっているか確認し、社長秘書に内線でその旨を伝える。
私は大手衣料メーカーの受付窓口の仕事をしている。
会社の顔となるこの仕事に誇りを持ってはいるけど、私このままで良いのかなぁ。毎日繰り返される同じような日常を想い、時々こんな風に考えてしまう。
時計の針は18時を指そうとしている。もうすぐ勤務終了時間だ。
プルルル
あっ、企画営業部から内線だ。
「はい。受付窓口佐藤です。」
「あっお疲れ様です。今から10分後くらいに海外イベント会社の影山社長が来られるので、5階の応接室までご案内お願いします。」
内線は、企画営業部の坂本さんからだった。彼はルックスも良くその上仕事も出来ると評判の男性だ。
「はい、わかりました。」
私はそう返事をして、電話を切った。
今日は、ちょっと遅くなりそうだね。引き継ぎ事項を書いていると、前に車が止まった。
えっ!!
車のドアが開き、自動ドアから入ってきた男性を見て、一瞬思考が停止した。
彼だ。
でも、スーツ姿のせいか雰囲気がまるで違う。
「こんにちは、海外イベント会社の影山と申します。企画営業部の坂本さんにお会いしたいのですが。」
彼はまるで私のことなんて知らないようなそぶりで話かけてくる。
彼・・だよね。
「こんにちは。坂本から聞いております。ご案内させて頂きます。」
戸惑いながらも丁寧にお辞儀し、笑顔で受け答えをした。
「どうぞこちらへ」
私はエレベーターに向かい、上へ上がるボタンを押した。