重なるメロディー
時間は夜の20時過ぎ。公園にはもう人影はない。
一目惚れ・・・ってこういうことなのか。
白いシャツにジーンズ姿。ベンチに座りギターを弾く彼の姿から目が離せない。年は20代後半くらいかな。音色が心地好い。心が満たされてゆく。
このままずっと聞いていたい。あっ、きれいな指・・
「あのさ、、」
突然音が止む。
「そんなに見つめられたら照れるんだけど」彼は少しうつむきぎみに、片手で髪を触る。
「! ごめんなさい、そうですよね」
恥ずかしい~!私は彼に言われるまで自分のその行為に気付かなかった。ほんとに無意識だったのだ。
一瞬の沈黙。
破ったのは彼だった。「まぁ、別にいいけど、、この曲歌える?」
私は思わず笑顔になった。
「はい、歌えます!!」
嬉しかった。心のどこかで思っていた。この音色に合わせて歌ってみたいって。
「よし。じゃあ最初からな」
彼は満足気に笑い、ギターに手を添える。
私の大好きな最初の伴奏がはじまる。耳を澄まし、息を吸った。
最初の第一声。私の声がギターの音と交差し、糸を紡ぐように、ハーモニーが生まれる。その音が耳に流れる。心地好い。やばい、気持ちいい。楽しい!
最後のメロディーを歌い終え、私は何とも言えない満足感に包まれていた。
彼と目が合った。彼は少し驚いた様子で私を見た後、にやっと笑い意地悪な表情を浮かべる。
「ありがとう。あんたの声良いね。すごく気持ち良かった。」
その声色が何だか色っぽくて、少しドキドキした。