着信音
大好きな音色が聞こえる。
優しい音色。
あれ。朝?
2度寝の誘惑を振り切り、携帯を開けるとメールがきていた。
今何時・・
えっ!!
もうこんな時間!
時計を見るといっきに目が覚めた。
早く用意しないと。
私は急いで家を出た。
良かった。
何とか間に合いそう。
そういえば、メールきてたな。
あっ、坂本さんから。
(昨日はありがとう。楽しかったよ。二日酔いとか大丈夫?今日も仕事頑張ろう。)
そうだ。昨日アドレス交換したんだった。
返信を何て返そうか考えていると、後ろから声が聞こえた。
「おはよ」
相変わらず笑顔がさわやかだな。
「坂本さん、おはようございます。昨日はありがとうございました。メールありがとうございます。すみません、今見ました。」
「こちらこそありがと。俺も楽しかったよ。今見たの。笑 もしかして、寝坊した?」
「・・・はい。」
2人で話しながら会社に向かう。昨日の食事でなんだか距離が縮まったみたい。
「今日は例のイベントの会議が一日中あるんだ。」
「1日中ですか!?大変ですね!」
イベントの・・そっかぁ。ということは、影山社長もくるのかな。
「どうしたの?」
坂本さんが不思議そうに顔を覗きこむ。
やばい。私また影山社長のこと考えて・・。
「いえっ。すみません。何かぼーっとしてました。では、また。会議頑張って下さい。」
受付に着いたので、軽くお辞儀をして坂本さんと別れた。
午前10時過ぎ。予想は的中した。
影山社長だ。
「こんにちは。海外イベントの件で伺いました。A会議室に行きたいのですが。」
真っ直ぐ向けられた視線に何だか落ち着かない気持ちになる。
「こんにちは。ご案内させて頂きます。」
私は平静を装い笑顔で答えた。
「ありがとうございます。」
彼は相変わらずの他人行儀。
エレベーターに乗ると、突然着信音が鳴った。
しまった!マナーモードにしてたはずなのに。
「申し訳ありません!」
私は慌てて携帯をポケットから取り出す。
あれっ?何もきてない。
「申し訳ない。俺の携帯だ。マナーモードにするの忘れてた。会議の前に気付いてよかった。」
影山社長は慌てて携帯を取り出し、少し恥ずかしそうに笑った。
「いいえ。大丈夫ですよ。」
私は嬉しくてつい顔がゆるむ。何だか彼の素顔が見れた気がする。
私の携帯じゃなくて良かったぁ。
あれっ?てことは、、、
あの曲、私といっしょだ!!
「おはようございます!」
会議室前に坂本さんがいた。
「影山社長、本日はお忙しい中ありがとうございます。どうぞ中へ。」
坂本さん、緊張しているみたい。
会議室には、たくさんの人が集まっていた。
「では。失礼します。」
私は2人に頭を下げ、受付へ戻った。
びっくりした。
着信音。影山社長が公園でひいてた曲だ。
私の大好きな、思い出の曲。
彼にとっても何か特別な曲なのかな。
なんとなくそんな気がした。