表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

といれにいきたい

作者: じぱんぐ

 事の始まりは何気ない日常からだった。

 いつものように朝が訪れ、身支度をし、もう飽きてきたであろう風景を眺めながら学校の通学路を進む。

 いつものように授業を受け、そして何事もなく帰るはずだった。

 突然のように、悪魔が訪れたのは授業中の2限目、開始10分という微妙という言葉が当てはまるであろう時間帯である。

 その時、俺は暖かな太陽光に包まれながらも、全身から冷や汗が吹き出ていた。

 ある人ならば、出会うこともないし、またある人ならばもはや装備品にも近いであろう

――腹痛という悪魔が俺の元へとやってきた。



 さて、どうしたもんかと頭をひねってみる。

 普通の人ならば、挙手をして腹痛を訴えれば万事解決なのだが、俺はそうはいかない。

 なぜなら、俺が生粋のシャイ・ボーイだからである。

 ましてや、挙手をしようものなら、確実に後で他の連中に嘲笑されてしまう。

 そんなことに、俺はおびえていた。


――随分前のこと、俺はいじめられていた。些細なネタがあれば、イジリという名の暴力を受け続け、仕舞にゃ人間不信にさえ陥ったものだ。

 だからこそ、出来ない。

 そうなんとか自分を甘やかすことしか今の俺には出来なかった。

 そんな俺の腹の事情をおかまいなしに、授業は進んでいく。

 脱走しよう、そう思ったのは実に時計の秒針が腹痛を催してから一回転した頃である。

 幸い、俺の席は最後方。立って目立つような場所ではなかった。

「よしっ」

 小声で自分に活を入れると、腰を浮かし、椅子を持ち上げながら後ろに引いた。

 この方法なら、床に引きずる音がたつ心配がないからである。

 次に、目だけを動かし、周りの状況を確認する。

 幸い俺の方に目を向けているような生徒はいないようである。

 ほっ、と少しだけ溜息を落とすと俺は床にうつ伏せになる。

 ざっとほふく前進の勢いで前へと進む。

 どうも、腹加減で動きが抑制されるようだが一応は前へと進めるようだ。

焦る腕を必死に動かし、前へと進んでいく。

 気分は戦場ごっこであろうか。

 扉まであともう少し、そう気が緩んだ瞬間だった。

 ふと頭に何かが当たる感触がした。

 その感触の元が気になり、ふと視線を左右に動かしてみる。

 そこには、なんとまぁ懐かしのロケット鉛筆が。

 たぶん、もう流行遅れをたどっているであろうものが俺の頭上に落ちてきていたのである。

(てか、まずいだろっ!?)

 懐かしみの後に、一瞬遅れて緊張が走る。


 誰かが物を落とす→当然、それを拾う


 完全に1パターンしかない行動が俺を苦しめる羽目になるとは。

 なんせ、こちらはほふく前進をしている。一般の方には変態だと思われても仕方ない格好だ。

 叫ばれるのがオチだろう、そう諦めがついたのだが。

 少し時間が経っても、その悲鳴は聞こえてこなかった。

 チラリと、上へと視線を動かすと、ロケット鉛筆の主と目が合う。

 その時の俺の動悸は、少しだけ早まった。

 目鼻立ちが整い、清純な印象を受けさせる少女が目の前にいたのだ。

 動悸が早まったのは、美少女なる人物と目を交錯させるのもそうかもしれないが、

 理由はそれだけでもない。

「グーテンモルゲン」

 美少女なる輩に、鈴のような声をかけられる。

「ちなみに今はまだ午前だからな」

「その国の時間帯を考えればいいと思うの」

 彼女は表情を変えずに、言葉を紡ぐ。

 まぁ、美少女とお話をするのは気分としてはいいのだがそれより優先すべきことが、俺にはある。

「そうか、それじゃあな」

「待って、まだ私のターンだけど?」

 彼女が、椅子を動かし進行方向をふさいできやがった。

「会話にターン制なんてあるか。だから俺は拒否権を使用する」

「だがしかしこうかはないようだ」

 ぐぅ、強情な。

 そんな俺の事情を知らずか、強烈なビッグウェーブがおなかを襲い始めてきていた。

「頼む、そこをどいてくれ」

「ならば、勧進帳を読んでみろ」

「どこの弁慶だよ!?」

「Sorry.I don't know Japanese well.」

「さっきバリバリ日本語喋ってたじゃねぇか!?」

 腹筋を使うせいで、ますます腹痛がエスカレートしていく。

「もういい、強行突破してやる」

「椅子に乗られるって結構痛いんだよね~」

「……。なら金やるから譲歩してくれ」

「お金で買えない価値がある」

 がくりと、頭を落とす。

 何も言っても通じない。思考能力の乏しい俺にはこれが限界だ。

 諦めの感情が俺の心を蝕んでくる。

 張り詰めていた感情がどんどんほどけていく。

「?」

 急に俺の言葉が止まったので、彼女は疑問符が浮かびそうな顔をしていた。

「もう諦めた」

「諦めたら、そこで試合終了だよ?」

「そもそも試合なんて始まってすらいねぇよ。

 つか、お前は諦めさせた側じゃねぇか」

「人間、一貫性がないものです」

 彼女の言葉に少しだけ笑うと、俺は身体の方向を180度回転させた。

「リタイヤですか?」

 彼女がそう言葉を投げかけてくるけど、俺はもう言葉を返さなかった。

 諦めで気が抜けたのか急に痛みが襲ってきた。

 そして、視界がうっすらと白くなっていく。

 だんだん、何にも考えられなくなって、俺の意識は飛んで行った。




 さて、あの後俺は気がつくと消毒液の香りがするはずの保健室のベッドの上に寝かされていた。

 保健教諭の話によると、授業が終わり誰かが俺を見て死体発見時ばりの悲鳴が上げ、それに気がついた授業担当の教師が、俺をここまで運んできたとのこと。

 どうやら、あの美少女放置プレイがお好きなようである。

 それと腹痛の方だが、寝ている間に随分と良くなっていたようで、痛みの方はさほど気にならない程度になっていた。

 時計の方に目を動かすと、昼休みにもう突入しているところであった。

「腹減った」

 言葉にするつもりはなかったのだが、寝ぼけていてそう言葉を漏らしてしまう。

「お弁当にする?」

「俺は購買派だからな」

「んじゃあ分けてしんぜよう」

「ありがたい……って、え?」

 つい最近聞いたことのある声の方に顔を向ける。

「まぁ退屈な授業の暇つぶしのお礼ってことで」

 そこには彼女がいて、少しだけ笑っていた。



 腹痛は甘いもんじゃない。

 本当に神に祈るレベルの問題にも発展するくらいだ。

 だから、こんなことがあっても、いいんじゃないだろうか?

いや、本当に稚拙すぎて涙が出てくる。

文章も設定も。


深夜のテンションって恐ろしいよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ