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独裁者の姫君  作者: 夢想花
30/35

30.戦闘

 次の日の朝、艦隊は出陣を開始した。

 メレッサはブリッジの中央の椅子に座っていた。大きな窓からたくさんの宇宙船が飛んで行くのが見える。

 隊列表を見ながらメレッサは彼女の艦隊の順番がくるのを待っていた。隣の第8旅団が動き出したから次だ。セラブ提督を見ると彼は頷いてくれた。いよいよだ。

「出発!!」

 メレッサはできるだけ威厳を持って号令をかけた。

 宇宙船が動き出した、彼女が乗っている宇宙船だけではない、彼女の艦隊全部の宇宙船が動き始めた。

 立体スクリーンにはたくさんの宇宙船が雲のように写っている。惑星セダイヤワが動き始めスクリーンからはみ出ていく。

「西側に展開して」

 メレッサの守備位置だ。方向を現すのに銀河系内の向きを東西南北で呼んでいて、銀河系の中心から地球がある方向が東だった。銀河系の薄い方向は上下と呼んでいた。

「了解です」

 セラブ提督が答える。

 窓からははるか向こう、見えなくなるほど遠くまで宇宙船が見える。これだけの大艦隊が飛ぶのはまさに壮観だった。

 艦隊はどんどん広がっていく、差し渡し10光年の広さに展開して進むのだ。

「巡航速度です」

 艦長が報告する。これで、安定状態になったのでメレッサがブリッジにいる必要はなくなった。

「セラブ提督、お願いします」

 メレッサもずいぶんと馴れてきた。航海が始まったので誰が指揮権を持っているか常にはっきりさせておかなければならない、指揮権をセラブ提督に譲ればもう安心できる。


 自分の部屋に戻ってきた。まだ、どこに何があるかまったく分かっていない。スケートリンクがあるのか知りたかった。

「ミルシー、スケートリンクはどこ?」

「こちらです」

 ミルシーが案内してくれる。

 侍女も戦争についてくるのだ。私は親の仕事が戦争だから、親について戦争に行くのはしかたないが、侍女は大変だと思った。

 艦長はスケートリンクを作っていてくれていた。ルシールのよりはかなり小ぶりだが綺麗なリンクだった。

 ここで毎日練習しよう。ルシールの所でまったく滑れなかったことが悔しくてたまらなかった。



 航海中、メレッサはコリンスに戦争のやり方を教えてもらっていた。戦争に行くのに戦争の事を何にも知らないのは不安だった。


 航海を始めて8日ほどが過ぎ、艦隊はいよいよ敵地に侵入した。ここからはいつ敵に攻撃されるかわからない。

 艦隊の中央は父の主力部隊がいて、メレッサの艦隊はそこから西に5光年ほどの所に展開して進んでいた。

 最初の攻撃目標、スラドニスはあと1日の距離に迫っていて、敵が迎え撃つつもりならもうそろそろ攻撃がある位置だ。しかも、戦艦の総数ではこちらが圧倒的に優勢だからミラルス王は奇襲攻撃をかけてくると思われた。

 メレッサもできるだけブリッジにいた。敵襲があれば彼女がいても何の役にもたたないことは分かっていたが、それでも不安な気持ちで過ごすよりブリッジにいた方が安心できた。

 メレッサは立体スクリーンを見ていた。たくさんの宇宙船が雲のように写っている。立体スクリーンには味方の船は写っているが、敵の船はその位置が分かった船だけがうつる。敵が潜んでいても敵の存在がわかっていなければ写らないから、敵がすぐ近くに待ち伏せしていても、敵が動き出すまでわからない。


「敵襲!」

 誰かが叫んだ。ブリッジに緊張がはしる。

 メレッサはあわててスクリーンを見た。ちょうどルシールの艦隊の真後ろに敵が現れた。ルシールの艦隊に奇襲攻撃をかけている。

 父が応戦の命令を出していて、付近の艦隊がルシールの方に向かい始めた。ルシールは後ろの方が安全だと言っていたのに……。

 メレッサの艦隊には特に命令はない。何かしなければと思ってセラブ提督を見たが、彼は首を振った。ここに待機する以外にないのだ。

 スクリーン上の敵の数が急激に多くなってきた。ルシールの艦隊をはるかに上回る。

「敵の規模は5旅団ぐらいです」

 情報担当者が報告する。

「敵の全兵力だな」

 セラブ提督がつぶやいた。

 ミラルス王は全兵力で奇襲をかけてきたのだ。

 ルシールの艦隊は完全に蹴散らされて、ばらばらになっている。ルシールの艦隊よりはるかに大規模な艦隊に後ろから奇襲をかけられたのだ、防げるはずがない。

 スクリーン上では赤い色に変わる船が続出している、破損して機能喪失に陥っているのだ。ルシールは攻撃されたら逃げると言っていたが、彼女の船は果敢に戦っていた。

 敵の艦隊はルシールの艦隊を突っ切ると、父の背後に襲いかかっている。敵の目的は父だったのだ。

「応援に行きますか?」

 セラブ提督が聞く。

 しかし、メレッサには応援は無駄に思えた。中央付近には味方の大艦隊が展開しているのだから、こんな遠くから助けに行っても何にもならない。

 メレッサは何か自分に出来る事はないかと考えた。敵は戦力ではるかに劣るから奇襲をかけて打撃を与えたらすぐに逃げる作戦だと思った。逃げるなら要塞がある星に向かうだろう。

「コリンス。こっち側で敵の要塞がある星はどこ?」

「スサミスです」

 素早くスクリーンに星に位置が表示された。もし、敵がこちら方面に逃げるならスサミスに向かうだろう。メレッサにアイデアが浮かんだ。

「提督。スサミスへのコース上で待ち伏せします。艦隊をコース上に移動させて!」

 メレッサは興奮して叫んだ。

 敵が逃げてくるコース上に潜んでいて近づいてきたら奇襲をかける作戦だ。敵の位置はもうわかってしまったが、こちらの位置はまだ敵に分かっていないから奇襲攻撃をかけることができる。

「いい考えです」

 提督が頷く。

「メレッサ艦隊、進路145。全速」

 提督が命令すると、艦隊が進路を変え始めた。

 敵は必ずしもスミサスへ向かうとは限らないが、私は私のこの位置で出来る事をしなければならない。



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