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独裁者の姫君  作者: 夢想花
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28.継承順位

 会議室は大勢の人達が集まっていた。この艦隊の将軍や提督など主だった人達だった。メレッサ達兄弟は最前列に座った。

 やがて父が会議室に入ってきた。これから作戦の説明があるのだ。

 参謀部の人が大きなスクリーンを使って作戦を説明をしている。ジョルは話を熱心に聞いているがルシールはすぐに飽きてメレッサに話しかけてきた。

「あんたのスリナビって、私が乗っていたことがあるのよ」

「聞きました。室内プールがあるんですね」

「ほんとはスケートリンクが欲しかったんだけど、だめだって」

 そう言えば、あの艦長スケートリンクを作ってくれたんだろうか。

「だから、今の私の船には最初からスケートリンクを作ったの。それもかなり広いやつ」

 ルシールは戦争にはまったく関心がない。これから戦争に行くのに、これだけ達観できるのはそれなりの才能だろう。

「ねえ、遊びにこない?」

 ルシールとスケートをするのは楽しそうだった。

「スケート、滑ったことがないの」

「教えてあげるわ、これが終わったらおいで」

 ルシールはうれしそうだ。

 やがて、参謀の作戦の説明が終わり。父が正面に出てきた。父はおしゃべりをしていた二人をきつく睨む。そして、おもむろに口を開いた。

「万が一を考え、指揮権の継承順位を言っておく。継承順1位がメレッサ、次がジョル、以後は階級、先任の順とする」

 会場にどよめきが起きた。拍手する者もいる。

 メレッサは自分が理解した意味に自信がなかった。

「どういう意味?」

 ルシールに聞いたが、彼女は頭を抱えている。冷たくメレッサを見ると。

「あんたがお気に入りって事。父さんが戦死したら、全軍をあんたが指揮するって事よ」

 驚きだった。私が全軍を指揮するなんて信じられなかった。

 あわててジョルを見た。ジョルはショックで蒼白な顔をしている。私が彼より上になったのに驚いているのだ。ジョルはルシールの向こうに座っているので直接声をかけることができなかった。

 頭が混乱していた。このままでは兄弟達に嫌われてしまう。

「姉さん。あたしが兄さんより上だなんて無理よ、そんなの間違っている」

 夢中でルシールに話したが、ルシールは冷たい目をしている。

「じゃあ、辞退したら」

「もちろんよ」

 そう、辞退しよう。それがいい。

「わたし、辞退する」

 そう言ったが、ルシールは怪しそうな目でメレッサを見ていた。

 質問の時間があって、将軍達が簡潔に質問していたが、しばらくして会議は終わった。


 父は壇上から降りると兄弟の方に手を伸ばして来いと合図する、4人はあわてて立ち上がると、父について控え室に入った。

「ルシール、メレッサ!」

 いきなり怖い声で怒鳴られた。

「話を聞いていたのか!」

 てっきり継承順位の説明があると思っていたのに、おしゃべりをしていたことを怒られた。

「いえ……」

 メレッサは答えた。おしゃべりに夢中で作戦の話は何も聞いていなかった。

「大事な作戦だぞ、わかっていなくてどうする!」

 まったく、その通りだった。

「すみません……」

 メレッサは小さな声で答えた。ルシールはブスッとしている。

「作戦の概要をまとめたレポートを書いて俺の所に持ってこい。今日中だ」

 父はすごい剣幕で怒る。しかたなかった、ルシールの所へスケートに行こうと思っていたのに。

 父はしばらく二人を睨んでいたが、座れと合図する。

 4人が座ると、父は椅子の背に立ったまま腰を乗せた。

「ジョル、我慢しろ。メレッサを先にする」

 ジョルに諭すように言う。

「父上、私は辞退します。ジョル兄さんの方が優秀だと思います」

 メレッサは父の言葉を遮って夢中で言った。しかし、父はメレッサを無視した。

「ジョル。作戦の指揮能力はメレッサが上だ」

「父上、私は辞退します。全軍の指揮なんてできません」

 必死で言ったが。

「お前はだまってろ! 後で話す」

 厳しく一括された。

「メレッサのためなら死んでもいいと言うやつが大勢いる。だから、メレッサを上にする。いいな」

「わかってます、父上」

 ジョルは悟ったような顔をしている。

「万が一の時は、メレッサの指揮下で戦います」

 ジョルがそう言うと、父はめずらしく微笑む。

「よく言った。頼りにしているぞ」

 父はジョルの肩に手を置くと、かるく握った。それから、顔を回すと。

「ルシール、フォラン、お前らもそれでいいな」

 ルシールはブスッとしたままで、フォランは見るからに悔しそうにしている。

「私は反対です、納得できません」

 メレッサが叫んだが

「だまってろ!」

 ものすごく怖い声で怒鳴られた。

 父はしばらく黙っていたが、メレッサ以外は誰も意義を唱えなかった。

「よし、もう行け」

 父が言うと3人は立ち上がった。メレッサはどうしたものかと迷っていると

「お前は残ってろ」

 と父に言われた。

 3人は部屋を出ていったが、出て行く時にルシールが素早く顔を寄せてきて、

「スケート、待ってるからね」

 そう言って出ていった。

 スケートって、今日は父の宿題があるはずじゃない。


「私には無理です。ジョル兄さんと入れ替えて下さい」

 メレッサは父と二人になるとすぐに言った。

「お前にないのはやる気だ。能力はお前が上だ」

 父は完全に私が優秀だと思い込んでいる。

「それは、買いかぶりです。絶対にジョル兄さんの方が優秀です」

 なんとか、父の誤解を解かなければならない。

「メレッサ、自信を持っていい。それに、お前はすぐにでも国を一つ治めねばならん、おまえは、ほかの兄弟と事情が違うんだ、そうだろう」

 父は急に不思議な事を言い出した。

「国を治める?」

 なんのことだろう? もっと領地をくれると言っているのか。

 父は、つい口を滑らしたといった感じで、ちょっと悔しそうにしている。

「ルニーが俺に突きつけてる要求の事だ」

 父はいらいらして少し歩くと、近くにあった椅子に座った。

「まだ、決定はしとらんがルニーが強硬なんだ。あいつ、4つの要求を全部認めさせる気だ」

 母が話していた父への要求の事を言っているのか? 母は一笑に付されたと言っていたのに、それに要求は3つのはずじゃ。

 なんの事かまったくわからない。ポカンとしているとそれを不審に思ったのか。

「悲願だったんだろう、期待していろ」

 父はぶっきら棒に言う。

 母が私に何かを隠してると思った。母が何かを父に要求している、いったい何を要求しているんだろう。

「だから、お前には責任がある。甘ったれてる余裕はないんだ。分かったな」

 何の要求かを父に聞くのは気が引けた。母との関係を疑われそうだった。まず、母に聞いてみよう。

「わかったな」

 父はもう一度念を押す。

 母の要求がわからない事には議論のしようがない。メレッサはしかたなく頷いた。

 メレッサは体を下げる挨拶をすると部屋を出ようとした。

「忘れるな、今日中だぞ」

 部屋を出る時、父が釘をさした。


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