第三話 脅威の深度0? 実際の深さは∞?
荒木教授は地質学的にこれはあり得ないと説明し、千尋は初期の発見時の孔の大きさ、子供の行方不明、息子の靴底と靴下の破損、自分のサンダル、矢島真弓が指を失った事実などを自らの感覚を含めて詳しく説明した。
室井博士の現時点までの観測結果による考察は次の通りだった。
孔の形状は円に近いが、ひまわりの種のフィボナッチのように拡大し続けている。
拡大速度は現在、1時間に数センチほどで拡大を続けている。
黒い孔はペンタブラックと呼ばれるほぼ光を反射しない黒に近く、開口部は光を通さない。
上にあるものは穴に落ちるが恐らく地面の下は影響されていない。建物の基礎部分がまるで切断されたように上モノが孔に落ちるのだ。
(ペンタブラック・・・この物語内での光を反射しない漆黒の事)
地面に棒状に埋めた深い部分のセンサーはその位置で動き続けている。
つまり、孔の深度は0なのだ。
物理学の常識を超え、内部は深さが測定不能だが、外からの影響は深度0といえる。しかし落ちれば電波などから深さは想像を絶すると思われる。外側からみれば深度0なのは外から下を掘り進んでみればわかるだろう。
調査はほぼお手上げに近い状況だ。中を確認出来ないのだ。
内調・佐藤「室井博士。外縁部は大きくなるにつれ円周が長くなり続けていますが、フィボナッチなのに広がる速度は落ちていないのですか?」
室井「はい。そういう意味では加速していると言っても間違えありません」
佐藤「不味いな。 皆さん! これは日本にとって由々しき状況です。警察庁、消防庁、自治体では対処は難しいでしょう。以後、政府に本部を設置するよう調整いたしますので皆さんは引き続きそちらに協力願います」
時をおかず内閣総理大臣を長とする政府危機管理本部が設置された。
関係機関として国土交通、防衛省、大学、研究機関からメンバーが厳選されこれに陸上自衛隊も加わる。
千尋もそれにも参加する事が決まった。これは荒木教授の推薦によるものだ。
信頼はされているが、夫達に連絡すると気をつけるように心配されたが大丈夫だと夫達を安心させた。
地質学的には今は出来る事は限られるが、危機管理センターには指揮用の大型モニターデスクが用意され東京全体の地図が表示された。被害状況、地域、現在の状況をドローン撮影映像を交えてリアルタイムに四カ所を確認出来るように準備された。
国民に人気の高い初の女性の首相、高内総理は諸々を確認すると、事態を理解し危機管理庁を設立出来るように調整した。
高内総理「なんとしてでも被害をこれ以上拡大させないよう力を合わせて行きましょう」
政府危機管理本部のまとめ役に指定されたのは、防衛大臣 大泉大次郎だ。
現在出来る事は自治体の協力の元、付近の住民の避難だが、避難がいつまでになるのかも判らない。
これに対する補償はどうなるのか? とマスコミが騒ぎ出したのだ。
現在、警視庁と自治体は不発弾処理として確認地域に避難を促している。
最早、秘匿は難しく情報公開は眼の前に迫っていると言ってもいいだろう。
しかし、SNSの噂は信じられない程に速く正確だった。
〜 東京孔スレッド12 〜
名無し孔「孔? そんなのまるでゲームじゃんか」
名無し穴「漏れもあのゲーム得意! ヤラせて」
名無し孔「なんか穴さんいやらしく聞こえるわ」
名無し孔「このまま広がれば東京無くなるんじゃね?」
名無し孔「地下なら大丈夫らしい」
名無し孔「いやいやいや、孔の下なら一生地下から出れないでしょ。しかし裏から上へ突き抜けたらどうなるのかね?」
名無し孔「知らんがな。脇から掘り進めて誰かチャレンジして」
名無し孔「だとすると地表の概念が判らないね」
〜
【米大統領執務室】
「Mr. President, we have received reports that Tokyo is under an unknown threat.」
(大統領。東京が未知の脅威に晒されているとの報告が入りました)
「Unknown? What's going on? Did Godzilla show up or something?」
(未知の? どうした。ゴジラでも出現したのかね?)
「In a way, I think it's even more troublesome. A pitch-black hole beyond human comprehension has appeared and is swallowing people and buildings.」
(ある意味、それ以上に厄介かと思います。人知を超えた漆黒の穴が出現し人や建物を飲み込んでます)
「What?! Is that the work of aliens? Or is it some kind of new weapon?」
(なんだって!? それは宇宙人の仕業か? もしくは新型の兵器か?)
「We are sorry, but we do not yet know.」
(申し訳ありませんが、まだ我々は掴んでおりません)
「Have the CIA continue their thorough investigation to determine if there is any potential impact on the United States. Have them prepare countermeasures, ensuring that US military bases in Japan are ready to launch attacks at any time!」
(CIAには引き続き詳しく調査させアメリカに影響の可能性があるか確認させろ。日本の米軍基地から何時でも出撃可能な態勢にして対策を考えさせろ!)
「Yes, sir!」
(イエス、サー!)




