第十五話 京浜東北線沿線壊滅/夫との会話
孔に大量放水したらさらに巨大化して荒川を超えてしまったようだ。
作戦が上手くいかなかった事を責める気は勿論ないが、千尋は孔が荒川で向きを変えて欲しかったと思ったが、それは利己的な考えなのかも知れないと考えた。
向きを変えればその先の人々に被害が及ぶのは明白だからだ。
マキャベリズムのトロッコ問題だとしてもトロッコがこちらに向かってきた時に反対へ行けば良かったと言っても、反対側にも人はいるのだ。
明日のお昼前に孔はここまで来る。
荒木教授によれば、大宮公園の白鳥池付近で大規模なもんどり作戦を展開するそうだ。
赤坂など都内で活躍してくれた方々も大宮入りするそうだ。
巨大になった荒川孔は私の実家の真正面ではないが、敷地に掛かり被害は出るかも知れない。
子供の頃から過ごしたこの地の多くが蹂躙されてしまうのだ。
浩「千尋はオンボロなんて言うけど子供の頃から過ごした家なんだろう?」
千尋は浩が私自身で隠したい気持ちを理解している事に涙が溢れてきた。
しばらく浩に抱きしめられているとようやく涙が止まる。
千尋「本当にこの宇宙人は理不尽だと思わない? 社会人類学専攻のあなたとしてはこの宇宙人はどうかしら?」
勿論、宇宙人の仕業かどうかなど誰も分からないのだが浩はそのまま答えた。
浩「社会人類学は宇宙人に当てはまるかどうかは分からないけど幾ら別の生物だとしても殲滅するような行為はかなり好戦的だよね? 人類史上、好戦的な文明は長続きしない」
千尋「でも地球人では理解出来ない程の技術じゃない。私達に対処なんて無理なのかも、、、」
浩「案外、短い文明、連続しない文明は技術が未熟かも知れないよ。例えばローマ帝国時代には上下水道も一般の入浴も普通だったけど中世にはそれらは出来ずに寿命すら短かかった。でも武器は進化してたよね。案外文明の短い宇宙人なら地球人が知らない事はやってても、孔は意外と単純な装置なのかも知れないよ」
千尋「あなたにそう言われるとなんだか簡単に対処出来そうな気がするわ」
浩「それは良かった。でももう危険な事はやめてな。もしもこの千尋の実家が孔に飲み込まれても僕らが必ず再建しよう。それまでは義母さんを連れて渋谷で頑張ろう」
千尋「ありがとう。あなた」
◇◇◇◇◇
赤坂で田岡を失った現場監督も大宮入りした。
恐らく徹夜で大型のもんどりを実現する予定で、近隣はその為に避難及び給水制限が実施された。
被害も増えた。川口を直進した孔に外国人達がふざけて十数名落ちたそうだ。
川口警察署の署長、関本は改めて全員の協力を要請した。
大宮の現場では必死に作業が進められた。陸自の施設課も民間協力者達も殆ど休んでいないが誰もが必死に頑張った。
幸い、赤坂と違い、芝公園や大宮公園はアスファルトが少なく掘削はかなり効率が上がる。
大宮公園の池を利用した工作効率の高い作戦だ。
室井の案により、もんどりの入り口側も先に掘削して足場を作り通過後に爆破する予定だ。
この間にも住宅地が続く日本屈指のベッドタウンは巨大孔に破壊され続けた。
西川口、蕨と通過しさいたま新都心では高層ビル群も孔に落ちた。孔は間もなく浦和に迫る。
翌朝、、、。
大泉は何日か目の徹夜だった。
コーヒーを飲みながら施設課の状況を確認した。
今度こそ成功させる!
民間の協力もあり、今回は思い通りに進展した。本当にありがたい事だと大泉は思った。
現在足場を組み、荒川孔が与野付近来た頃には完成する予定だ。
秘書官「大臣、少し休まれては?」
大泉「そうだな。大宮に近づいたら起こしてくれ」
秘書官「かしこまりました」
◇◇◇◇◇
大泉が休んでいる間に、船舶上に退避させた孔が二つともに消滅した。




