表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈本編完結〉わたくしは悪役令嬢になれなかった  作者: 伊沙羽 璃衣


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/15

Epilogue


王国歴218年、王太子妃ルミエラ・ローザ・クラルヴァイン自害。


王太子妃ルミエラは慈悲深く、また数々の優れた発明をしたことで、民からも貴族からも慕われていた。彼女の突然の自死に、家族のみならず、国民全員が悲嘆に暮れた。

なぜ、彼女は自ら死を選んだのか。

当時彼女は33歳。相思相愛の夫と可愛らしい3人の子供に囲まれ、幸せ真っ只中であった。綿密な調査の結果、自害であろうということが分かっても、周囲の人々はなかなかその事実を飲み込むことができないでいた。原因究明が急がれる中、王太子妃の私室から日記が見つかった。しかし穏やかな日常が記されているばかりで、何が彼女を自死に追い詰めたのかは判然としないままであった。

一方で、不思議なことが判明した。

なんと、王太子妃の日記には、この日ばかりではなく、8歳から今に至るまでの日記すべてに、未確認言語の記載が認められたのだ。これは8歳以前の日記には見られないもので、見たこともない文字の系統や書き方に、言語学者たちは首を捻った。

王太子は、ルミエラが8歳のある日を境として、人が変わったように(・・・・・・・・・)穏やかでお人好しになったことを思い出した。これは何かしらの意味を持つと王太子は直感し、未確認言語の解読を急がせた。

同時に、自害当日王太子妃に拝謁していた彼女の姪、ベルローズ・ヘルブラウ・ザイツェフェルトに召喚命令を下した。

ところが、驚くべきことにベルローズは行方不明となっていたのである。王太子妃の自害ということで貴族学園も閉鎖され、級友たちはそれを知ることはなく、また彼女の家族も、異母妹を除いては彼女が屋敷にいないということに気づいてすらいなかった。

王太子はベルローズが何かしらの暴言を吐いて妻を追い詰めたものと断定し、彼女を指名手配して国中を捜索させたが、彼女の姿はどこにもなかった。


十年が経ち、優れた王太子妃を失った悲しみが薄れてきた頃、王太子妃の日記に記されていた未確認言語の解読がついに完了した。王として即位したかつての王太子は喜んでこの調査結果を受け取ったが、以降、賢王として慕われていた彼は暴君に変貌した。

初めに、言語学者らを一人残らず殺した。この暴挙に貴族も平民も恐れおののき反発したが、王は顔色ひとつ変えず、匿った者をも含めて殺し尽くした。

次いで故王太子妃が開発した品々の生産停止を命じた。この理不尽な命令に反発した者は、皆処断された。

更に、故王太子妃と共に訪問した地に対し、他の土地との交易を禁じた。自給自足ではない土地柄が多く、1年が経つ前にその土地の者は反旗を翻したが、王に逆らった罪で焼き尽くされた。

王の所業に驚き、諫めた心ある貴族は皆、降格されたり爵位を取り上げられた。父王の変貌に心を痛めた王子はかつてのお心を取り戻してくださいと訴え、幽閉された。双子の王女は兄王子を解放してほしいと願ったが、婚姻を目前としていた両者は修道院に送られ、婚約も破棄された。

とどめに、王妃の生家であるザイツェフェルト家を皆殺しにし、王兄を手にかけた。故王太子妃に関連するものをすべて焼き払い、自らも首をくくった。

幽閉された王子は精神を患ってしまったため、王位継承をかけてクラルヴァイン王国は動乱の時代に突入する。


これは最後の王太子妃になるはずだった少女を描いた、回顧録である。




ハピエンになる予定でした。予定は未定ってよく言ったものですよね(遠い目)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
すごく面白いです! 確かにバッドエンドだけど、バッドエンド特有の鬱々感は無く私には爽快感がありました。 ルミエラ(真)だけではなく全員漏れなくバッドエンドでザマァが成立してるからかな? 切っ掛けとなっ…
最後の怒涛の展開よりもハピエン予定に1番衝撃を受けた……
未確認言語、つまり王太子妃は暗号で日記を書いていた。その内容には王を狂わせる程の秘密もあり、最後の日に王太子妃はベルローズにその内容で糾弾されたので自害したのではないか?・・・とか後の歴史の通説になっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ