声にならない想い
pixivで活動してるありです。これからよろしくお願いします!
〜キャラ設定〜
鎌田 蓮(かまた れん)
この物語の主人公。高校生。すごく脳天気で、たまにあまり考えずに発言をしてしまって人を傷つけることがある。
西田 葉奈(にしだ はな)
この物語のヒロイン。高校生。小学生の頃にひどいイジメによって、声が出せなくなっている。内気。
その他いろいろキャラ増えると思います!頑張ります!
〜本編〜
始業式が終わり、今日から本格的に学校だ。今日から転校生が来るらしい。
ガラガラガラガラッ
「お前ら席付けー。今日は転校生が来るから少し朝の連絡を早く終わらせたいんだ。よし、始めてくれ。」
「姿勢、起立、礼。」
クラス全員「お願いします。」
「朝の連絡だが、夏休み明けだ。体調管理はしっかりとするように。あと、今日の1時間目だが、先生の体調不良で自習になった。最後に、先程も言ったように、今日から転校生が1人来る。それでは、転校生を紹介する。来てくれ。」
ガラガラガラガラッ
大人しそうな綺麗な女子が、教室に入ってきた。一部の男子はこそこそと話している。
「それでは自己紹介を頼む。」
彼女は1冊のノートを取り出して何かを書き始めた。自己紹介なら、言葉ですればいいのにと思いつつ、書き終わりを待った。書き終わると彼女はそれを皆に見せた。
(私の名前は西田 葉奈です。)
(喋ることができません。)
(これからよろしくお願いします。)
「ということだ。これから仲良くしてあげてくれ。席は、鎌田の横が空いてるな。そこに座ってくれ。それでは、朝の連絡を終わる。」
「起立、礼。」
クラス全員「ありがとうございました。」
なぜかはわからないが、クラスの一部の男子がクスクス笑っている。なぜだろうと考えながら、自習の準備をした。
ピーンポーンパーンポーン
授業が始まるチャイムが鳴った。もちろん俺は自習をするつもりはない。しかし、周りの席は話したことがない人ばかりで暇だ。1人で手遊びをして時間をつぶしていると、隣の西田が俺の机の上に開いたノートを置いてきた。
(これからよろしくお願いします。)
「よろしく。」
(名前はなんですか?)
「俺、鎌田 蓮。鎌田って呼んで。」
(私のことは西田って呼んでください。)
「なんで西田って喋れないの?喉痛い?のど飴いる?」
彼女は表情を曇らせた。曇らせたと言うより、悲しそうな表情をした。
「あ、なんかごめん。」
(大丈夫です。)
(なんか、趣味とかありますか?)
「趣味って言える趣味は特にないかな。西田は?」
(動物と過ごすことです。)
「俺、犬飼ってるよ。西田はなんか飼ってんの?」
(猫と犬です。)
(犬の名前はなんですか?)
「マル。なんか、すごい体が丸々としてて、最初におまわりを覚えたからそうつけた。西田の犬はなんて名前?」
(クッキー。すごくクッキーみたいな毛の色してるんです。)
ピーンポーンパーンポーン
そんなことを話していると、自習の時間は終わった。その後の授業では特に話すことはなく、学校が終わった。転校生なのに、西田は誰にも話しかけられず、少しクラスで浮いている。
1人で帰り道をトボトボ歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
(一緒に帰りましょう。)
肩を叩いてきたのは字を書けるようにバインダーを持った西田だった。どうやら家の方角が同じらしい。
「おう、いいぜ。あと、タメ口のほうが話しやすいから、タメ口で字書いてほしい。」
友達は皆部活で誰とも一緒に帰る予定はなかったから、西田と一緒に帰ることにした。
西田は帰り道では学校とは違い、少し軽そうな表情をしている。
「西田、学校でなんかあった?」
(どうして?)
「なんかさ、転校生なのに、クラスで浮いてるじゃん。」
彼女は少し重たい表情になった。
「答えづらかったら、答えなくてもいいよ。」
西田は首を横に振って、字を書きだした。
(あのクラスの中に、小学生の頃、私をいじめてた子がいるの。たぶんその子がなんか言ってるだけだと思うんだ。私が声を出せなくなったのも、そのいじめのせいなの。)
「声が出せなくなるほどのいじめって、どんくらいひどかったんだよ。」
(いいの。もう終わったことだし、私の声は、もう戻らないんだ。)
少し気まずい間が空いた。
「そ、そうなのか。今日の時間ある?あったら一緒に犬の散歩行かね?この街のことあんま知らないだろうからさ、紹介も兼ねてさ。」
(了解。私の家すぐそこだから、私の家の近くのコンビニ待ち合わせしよう。)
「わかった。」
そんな話をしていると、もう西田は家に着いた。
「それじゃ、後で。」
(はい。)
俺は西田からの返事をみてから、少し急いで家に帰って、マルの首輪にリードをつけて、飲ませるための水と、念のため傘を持って外に出た。
「待ち合わせの場所は…たぶんここだな。」
おそらく待ち合わせの場所であろうコンビニの前で、西田を待とうとすると、もう西田は来ていた。
「おう、それじゃ、行こうぜ。」
不思議なことにマルはあまり他の犬とは仲良くしないのに、クッキーとはすぐに仲良くなった。
「マルってあんまり他の犬と仲良くしないのに。クッキーら陽キャ犬だね。」
西田はにこやかに笑った。
「あ!そうここ!このお店、俺の知り合いがやっててさ、めっちゃ料理美味しいから、今度行ってみて!」
西田はこくこくと頷いた。
色々な場所を紹介していると、夕日に照らされると、すごく綺麗と話題のこの街の川の橋に着いた。
「この橋…」
西田は俺が話し聞きる前になにか書き始めた。
(知ってる。ここ、イソスタクラムで有名だよね。)
「そう!そこだよ!」
西田はそこで写真を撮った。
(次は?)
西田は目を輝かせながらノートを見せた。
「次はここら辺で一番大きいドッグランに行こう。」
ドッグランに向かって軽い足取りで歩いていたはずの西田の足取りが、急に重たくなった。
「西田、どうしたの?」
西田は首を横に振ったが、普通の様子ではない。
「ほんとになんもないの?」
西田を心配して俺が色々聞いていると、ある声がした。
「お、西田じゃーん。また男引っ掛けて遊んでんの?」
そう言ったのは同じクラスの不良の畑 集成(はた しゅうせい)だった。
「え、引っ掛けて遊ぶって?」
彼女は今にも泣き出しそうな顔をしながら下を向いている。
「無視してないでさぁ、なんか喋ったらどうだ?あ、声出ないから喋れないのか。ごめんなぁ〜」
彼女の顔は恐怖に支配されている顔だった。
「畑くん、それはないんじゃないかな?」
俺は畑の行き過ぎた発言にそう言った。
「うるせぇ、部外者が口出すなよ。」
「部外者なんかじゃないよ。クラスの一員だもん。」
「はぁ、めんどくせやめればいいんだろ、やめれば!」
畑はめんどくさそうな顔をしながらそう言って帰った。
「西田、大丈夫だった?」
(大丈夫です。)
言葉ではそう書いているが、顔は嘘をついていない。
「大丈夫じゃないでしょ!畑と何があったの?」
(その、下校中に言ったいじめの主犯格。)
少し涙目になりながら西田は字を見せてくれた。
「畑が行ったほう、ドッグランの方だけどどうする?」
(行く。)
西田は本当にペットのことを愛しているのだろう。いじめの主犯格が行った方角にも突き進んだ。
「ここが言ってたドッグラン。一旦ここで休憩する?」
(しよう。)
俺達はマルとクッキーをドッグランに放して、休憩した。
「その、聞きづらいんだけどさ、いじめで声が出なくなったって、どうゆうこと?」
(わたし、いじめでペッボトルに入れた洗剤を飲まさたの。それで喉がおかしくなって、声が出なくなって…)
西田はつらそうにしながらも、いじめの内容をしっかりと俺に伝えてくれた。
「そんな事があったのか。西田、なんか困ったことあったらさ、俺にいつでも言ってよ。何でもするからさ。」
西田は少し安堵した表情を見せた。
「西田、イソスタ交換しない?」
西田は首を縦に振った。
(これからいろいろと迷惑かけるだろうけど、改めてよろしく。)
俺らはその後も他愛のない会話して一緒に互いの家に帰った。
家に帰ってかなり経った頃だろう。スマホのバイブ音が聞こえた。
(明日の課題って、何?)
西田からのDMだ。
「明日の課題は、数学の練習問題59を解くだけだよ。」
そう俺は返信した。
(f (x)=x^2+2x+1の平方完成をしなさいって書いてあるけど、私、平方完成習ってないんだよね。)
「なら教えてあげるよ」
「今のうちは右辺?みたいなのを因数分解するだけだよ。」
(ありがとう。)
(明日、学校一緒に行かない?)
明日も特に誰かと学校に行く約束はなかった。
「いいよ。なら、今日と同じ待ち合わせ場所でいい?」
(いいよ。)
そこからは特に会話せず、1日を終えた。
学校に行く準備をしていると、またバイブ音が鳴った。
(あそこのコンビニ、寄っていこ。)
「おけ。」
おそらく昼ご飯を買うのだろう。学校に行く準備が終わり、家を出てコンビニに向かった。着くころには、もう西田はコンビニの外にいた。
「おはよ。」
西田は会釈をした。
そしてコンビニで昼ご飯を買い、学校に向かった。
「おはよう、西田。西田〜?おーい?なんか返事を返したらどうだ?」
畑だ。本当にしつこい。
「あのさ、西田さん本当に嫌がってるじゃん、やめなよ。」
「お前昨日もいたよな。いい加減遊ばれてることに気付いたがいいぜ。」
畑はそう言って俺たちを抜かしていった。
「西田、あいつ先生に言ったがいいんじゃないの?」
西田は頷き、字を書き出した。
(でも、そしたらまたいじめられちゃう。)
「大丈夫だよ。そん時は俺が守るからさ。こう見えても俺、空手してたんだぜ。」
そんなことを話しながら、学校につき、特に何もなく学校が終わろうとしていた。おそらく今日も一緒に帰るだろうと西田の方を見ると、西田がいない。周りは誰がいないか探してみると、西田と畑の姿だけない。
「西田っ!」
心の中でそう叫びながら、必死に西田を探した。すると、空き教室から日常会話ではない会話が聞こえてきた。
「お前、小学生の頃から変わらず、男遊びが好きだなぁ。」
「本当に気持ち悪ぃ、いい加減にしろよ。」
そのような言葉を言いながら、暴力を振るう鈍い音がする。
「西田っ!!」
俺はそう言いながら激しく扉を開けた。すると、やはり西田と畑がそこにいた。西田は畑に胸ぐらを掴まれている。
「お、救世主様登場じゃ~ん。」
「まず西田から手を離せ。」
「離すのはいいけど、そこからお前に何ができんの?」
俺は確かに空手をしていた。でも、それはかなり昔のことだ。今からでもどうこうしてもほぼ100%負ける。
「こうするよ。」
俺はポケットに入れた砂を取り出し、畑の顔にぶつけた。
「なっ!…あぁっ!」
畑の目に砂が入り、目がくらんでるうちに西田と学校から出た。
「西田、なんかいる?絶対に顔とか処置しないと腫れちゃうよ!」
西田は首を横に振り、文字を書いた。
(いいの。いっつもこれだったからさ。)
彼女はなぜか絶対に手当てを受けようとしなかった。
次の日、俺はまた西田と学校に行くことになった。また近くのコンビニで待ち合わせていると、今日は俺のほうが早く着いた。
「今日は俺のほうが早いのか。昨日の大丈夫だったかな。」
そのような独り言を言っていると、西田が肩を叩いてきた。
彼女はまた会釈をした。顔を上げた時に傷を見ると、西田は髪の毛で痕を隠しているようだった。
「西田、傷…」
俺は聞こうとしたがやめた。あまり西田も話したくなさそうだった。
そうして俺らは学校に向かった。
学校に着き、俺と西田が教室に入った瞬間、教室が静まり返った。おそらく畑の仕業なのだろう。俺の悪い嘘の噂も流されている。
そうして俺はクラスで浮いた存在の1人になった。
放課後、畑が話しかけてきた。
「おい鎌田、ちょっと面貸せや。」
西田は心配そうに俺を見た。
「大丈夫だから、今日は1人で帰って。」
そう言って、西田を1人で帰らせた。
俺は畑に空き教室に連れて行かれた。
「お前、なんなんだ最近まじでうぜぇぞ。」
「いや、お前が西田をいじめるからだろ。嫌がってるじゃん。しかもお前小学生の頃もいじめて、西田の喉を壊したらしいな。」
「だからなんだよ。」
畑はあからさまに腹が立っている態度を見せた。
「だからなんだよって…お前、西田は、西田はそのせいで喋れなくなった!人生を壊されたんだぞ!!」
俺は怒鳴った。すると畑は俺の胸ぐらを掴み、殴る素振りを見せた。しかし、遠くから声がした。
「おい、何してんだ〜?」
先生の声だ。
「今日はこのくらいにしといてやる。」
そう言って、畑はどこかに行った。
下駄箱に行くと、西田が待っていた。
(大丈夫?)
ノートにはそう書かれていた。
「大丈夫だよ。待っててくれてありがとう。それじゃ、帰ろう。」
帰り道、どうしても西田は俺のことが心配だったようだ。
「西田、俺は大丈夫だから。絶対にこの問題は解決させる。ところでさ、明日、暇?暇だったら遊びに行こうよ。」
俺は流れを変えるべくそう言った。西田は頷いてくれた。
(どこに行く?)
「んーっと、西田、動物好きでしょ?なら、動物園に行こう!待ち合わせは、いつものとこで!」
西田は大きく縦に首を振った。
そして互いの家に帰った。
次の日、俺は他の人と遊びに行くよりも気合いを入れて準備をした。
そして待ち合わせの場所についた。
「西田!」
西田も少し気合が入っていて、ロングの髪の毛をハーフアップにしてきていた。
可愛いなと思いつつ、俺らは動物園に行くために電車に乗った。
ガタンゴトンガタンゴトン
俺と西田は、イソスタのDMで会話をしている。
(なんの動物見るの?)
「コアラとか?あ、この動物園、パンダいるらしいぜ。」
(パンダ!見たいな。)
「なら見よう。」
そのような会話をしていたら、動物園に着いた。
駅が併設されている動物園で、少ししか歩かずに行くことができる。
入園券を買い、動物園の中に入った。
「よし西田、パンダいこうぜパンダ!」
西田は大きく縦に首を振ってついてきた。
ガヤガヤガヤガヤ
さすがはパンダだ。かなりの人気がある。はぐれそうな人込みをかき分けて進んでいると、手を握られる感触がした。
手を握っているのは、西田だった。
「西田、え?」
(はぐれちゃうから。)
西田はそう書いているノートを見せて、俺の手をぎゅっと握った。
そうして俺は西田を引っ張りながら最前列へ進んだ。
(パンダ、初めて見た!)
西田は目を輝かせながらそう書いた。
「なんかパンダって、実は肉食だけど、生存競争に負けて笹を食べるしかなかったらしいぜ。」
彼女は笑った。
そんなことを話して、次はコアラを見に行った。
「コアラ、すげぇな、本当にずっと寝てる。」
(コアラが寝てる理由って、ユーカリに毒があって、その毒を分解するためらしいよ。)
「へー!そうなのか!なんか、他の食べ物食べようとか思わないのかな」
俺は笑いながら言った。
(私、ゴリラ見たい。)
やはり動物園に来て良かった。西田が喜んでくれている。
「ゴリラって面白いよな。こう見えてめちゃくちゃストレスに弱いらしいぜ。」
「次は、シマウマに行こう!」
どんどん俺らは動物園を周った。そして1日が終わった。
「それじゃ、また月曜日。」
西田は会釈をして、互いに解散した。
そこからは何もなく、週末が終わった。
月曜日も西田と学校に行くと、俺に陰湿な嫌がらせをしてくる人が出てきた。
筆箱をわざと落とさして、散らばった文房具を拾わせたり、歩いていると足を引っ掛けられたりした。それが何ヶ月も続いた。西田はされていないのに、日に日に表情が暗くなっていった。西田とは何回も遊びに行ったが、動物園ほど楽しんでいるようではなかった。そうしてそんなことがずっと続き、2学期の終業式の日の放課後も、西田と一緒に帰った。
「あのさ、西田。明日俺と水族館行かね?」
西田は頷いた。
そして明日、またコンビニで待ち合わせをし、西田と水族館に向かうために電車に乗った。
そのときのイソスタのDMで西田はこう言った。
(鎌田、もう私たち、関わるのやめよう。)
「なんでだよ!」
(だって、鎌田が私と関わっていたら、鎌田が不幸になっちゃう。)
「そんなことない!俺は西田と関わったせいで不幸になってるなんて絶対にないって思ってる。」
西田が日に日に表情が暗くなっている理由が分かった。そこからはあまり話さずに、水族館を周った。でも、西田が動物園に行ったとき並に楽しんでいることだけ分かった。
「最後、イルカショー見ようぜ。」
西田は大きく首を縦に振った。
「知ってたか、イルカって、脳を半分ずつ寝かせて回復してるらしいぜ。」
西田は目を輝かせた。
そしてイルカショーが始まった。
バサーンッ!!ザブーンッ!!
イルカが水面を飛び跳ねたり泳いだりしている。するとこんな濡れそうな場面なのに、西田はノートとペンを取り出した。
何かを書いている。頬が赤くなっているのが分かる。
そうして書き終えて俺に見せようと来たときに、
「最後はスプラッシュタイムでーす!!皆さん、びしょびしょになりましょーーーう!!」
イルカが水をかけだした。その水がノートに当たり、ノートがびしょびしょになった。その後に書いてあった読めた文字は、(女)と(付)という字だ。
「ごめん、濡れてなんて書いてあるかわからない。とりあえずさ、冬休み、毎日俺と遊ばね?」
西田は首を縦に振った。
水族館から出て帰った。
次の日も、また次の日も遊んだ。でも、西田の表情は日に日に暗くなっていく。
「西田、最近なんかあったの?」
(おじいちゃんが死んじゃって…明日は、遊べない。)
「わ、わかった。それじゃ!」
西田は会釈をして解散した。
明日は何もせず過ごそう。そう決めた。
久しぶりに一人で犬の散歩をしていると、西田が橋で泣いているのを見かけた。
声をかけようと思ったが、西田は俺の存在に気づいていて、話しかけようにも話しかけれなかった。
「…」
俺ら何も言わず、ただ西田の横にずっと立っていた。
(葬儀に行かないと行けないから。)
そう書いて西田はどこかに行った。
犬の散歩を終え、家でのんびりしようとしたが、気が気ではなかった。
2日後、俺は西田に夜の時間にこっそりと遊んでみることを提案した。
西田は少し考えてから、首を縦に振った。相変わらず、というかいつもに増してより一層西田の表情が暗い。
夜に遊んでいるが、気が気ではなさそうだった。
(私、もう帰るね。)
西田はそう書いて家とは違う方向に向かって歩いた。そんなことも気づかず、俺は一人で遊んでいた。しかし、俺はその3分後ほどに西田がいつもと違う方向に歩いているに気づき、追いかけ始めた。どこを探してもいない。心当たりがあるのは、あの橋だ。
橋に向かって走ると、そこには橋の手すりを登る人影があった。
「…西田?」
近づいていくと、それは確実に西田だと分かった。
「西田!?西田!西田ぁ!」
そういいながらいつの間にか俺は西田と一緒に橋から飛び降りてしまった。
冬の川に入るなんて、自殺行為だ。というか、自殺だ。
バシャァァァンッ!!
10メートルはある高さから飛び降りた。
「西田、西田ぁ!」
なぜか俺は無事だった。俺は浮いている西田を目指して、一直線に泳いだ。そして西田を陸地に運んだ。西田はまだ意識があるようだった。
「西田!何してんだ!とりあえず家まで運ぶぞ!」
俺は西田をおんぶし、西田の家まで西田を運んだ。
「すみません!西田が!」
俺はそう西田の母に言った。すぐに救急車が到着し、西田は搬送されていった。
「葉奈ちゃん、しばらく入院みたです。」
そう西田の母から告げられた。
そして、西田の母は泣きながら
「ありがとうございます!ありがとうございます!葉奈ちゃんを救っていただいてありがとうございますっ!」
と言っていた。
「遊ぼうって言ったのは僕なんで、気にしないでください。」
そう言って、俺は西田と面会に向かった。部屋に入った途端に俺はこう言った。
「なんで、なんで死のうとしたんだよ!」
(だって、私といたら鎌田が不幸になっちゃう。いじめられちゃうもん。)
「西田と関わってせいじゃない!全部、全部畑が悪いんだ!だからさ、もう死のうとなんて、するなよ。」
(ありがとう。)
西田は涙をあふれさせながらそう書いた。
心にぽかーんと穴が空いたまま、俺は学校に向かった。そして、今までためていた畑のいじめの記録をすべて先生に渡した。畑は退学処分になったそうだ。
そのような日々を続けていると、携帯のバイブ音が鳴った。
ブーッ
「どうせゲームの通知だろ」
心でそう思っていた。
ブーッブーッ
「あぁもううるさいな!」
そう思いながら俺はスマホを見た。すると、西田が退院するという報告が西田からあった。
「西田!」
俺はいち早く西田に会いたくて、まだ西田は病院なのに、家を飛び出した。
そして病院の前に着き、西田にDMを送った。
「西田!病室の外見てみて!」
そう送ると、西田は病室から顔をのぞかせた。
互いに手を振り合い互いに安堵の表情をし、互いに泣いた。
「畑もいなくなったから、安心して学校に来て!」
俺はそう叫んだ。西田は大きく首を縦に振った。それに、声が聞こえてくるような気がした。
「ありがとう」
と。
そうして西田が退院し、いつもの日々に戻った。
相変わらず俺と西田はクラスで浮いている。しかし、もう嫌がらせをする人はいない。
学年が終わりに近づいていた頃、昼休みに西田に声をかけられ、
(放課後、ちょっといい?)
「別にいいけど、どうしたの?」
(橋の上集合で)
今日はコンビニではないのだなと思いつつ、橋に着くと、俺のほうが早かった。珍しい。
西田を待っていると、後ろから肩を叩かれた。
後ろを振り向くと西田が持つノートにらこう書いてあった。
(好きです。付き合ってください)
もちろん答えは決まっている。
「僕からも、よろしくお願いします。」
「俺が、絶対に西田の喉治すから!」
続きます。
それから10年後、俺と葉奈は結婚し、幸せな家庭を気づいている。
ピッピッ
まだ葉奈は麻酔から目を覚ましていないようだ。もうすぐ覚めるはずだと思い、時間を待った。30分ほど経った頃だろう。彼女は目を覚ました。
「あ、あぁ!葉奈、言葉、喋ってみろ!」
「お、おあよ。蓮。」
頑張って書いた。