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作者: ソイソース

日記をね。書いてるんです。基本的には毎日、今時珍しくノートにね。そんなまめな風には見えないって?まあよく言われるんで、別にいいですけど。


その日記を書いたのは大学の夏休みのころです。


<20代 男性>


快晴も快晴。めちゃくちゃ暑かったですけど、遊ぶには絶好の日でした。

昼。友人たちと集まって、買い物に。

テストが終わった次の日だったんで、みんな結構テンション高くて。店の中ではしゃいじゃって、他のお客さんに腕ぶつけちゃった奴とかもいるぐらい。


夜。居酒屋へ。結構飲んだんですけど、僕、酔っても頭は冴えてるタイプなんで。終電でしっかり家まで無事に帰りました。


手洗って、シャワー浴びて一段落。

ソファに腰掛けたところで、大事なことを思い出しました。日記書かなきゃ。

一日忘れたら辞めちゃいそうなんで、こういうときでも書かないと、って思って。


ノート開いて、今日の出来事を順に書いていきました。

特に書いたのはYっていう友人のこと。

はしゃぎすぎてお客さんにぶつかった奴のことです。居酒屋でもすごい調子よく喋ってたんで、日記の半分くらいはそいつのことで埋まりました。


書き終えたところで、めちゃくちゃ眠くなっちゃって。歯磨きは明日でいいかーって思いながら、横のベッドに転がりました。


朝。そんなにいい寝起きでは無かったんですけど、夕方から予定があったんで、ある程度支度をすることに。

歯を磨いているところで、机の上で開きっぱなしになったノートに目が向きました。

あぁ、ちゃんと片付けとかないと。


仕舞いがてら、昨日つけた日記のページをチラッと見てみたんです。そしたら、ぴーーーーっ と、定規で引いたような綺麗な直線が、半分くらいの文字に被せられていたんです。


酔ってんのにそんなことするわけないですよね。全く意味が分からないまま、線を引かれた文章を恐る恐る読んでみると。


その文章は全部、Yについて書いた箇所でした。

言葉も行動も、丁寧に被せられていて。


気持ち悪かったんで、何も考えずにそのまま片付けて。そのノートは開かないようにしました。


どんなやつが、どうやって、なんてのは分からないですけど。まあ意味的には、Yのことを消してやろう、みたいなことなんだろう。というのをぼんやりと理解したような感じがありました。


遊んだ日の数日後。またその時の友人たちと遊ぶ予定をしていたので、待ち合わせの場所へ。


時間よりも早めに集合場所に着いたんで、まだ誰も来てないと思ってたんですけど、そこにはYがいて。

日記の件があって、ちょっと不安だったんで、元気で良かったーと思って話しかけようと近づいていったんです。


そしたらあいつ、やっぱりちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、変になってました。

ずっと、右腕をぺたぺた触ってたんです。

消えてしまわないか、確かめてるみたいに。

僕ははっきり、そう確信しました。

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