表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

ep.1


 1


 土田稀(つちだまれ)巡査部長は、眉間を寄せながら人指し指で両耳を塞いだ。


 エレベーターで高層階に上がる時に感じる、耳が詰まったような感覚。彼女にはそれが耐えられなかった。


 早く目的の15階に着けと祈りながら目を閉じると、到着音が鳴り扉が開いた。



 事件現場の1505号室の前の廊下には、スーツを着た長身の男性刑事と、ネイビーのワンピースを着た女性が立っていた。2人とも左手の薬指にお揃いの指輪をつけていた。


 その装いは、高級ホテルにはふさわしいが、こと犯罪現場の捜査においては場違いである。


「お疲れさまです」土田が言った。


「おつかれ」ワンピースを着た女性が男性越しに明るい声で言った。


「慶都先生、糟良城(かすらぎ)警部とどこかへ行かれたんですか?」


「高そうなレストランに連れてってくれたの」


 糟良城を挟んで2人は内緒話をするように小声で話した。彼はうんざりしたような表情でため息をついた。


「良いですね。夫婦で水入らず。憧れ……」


「土田」糟良城が話を遮った。


「すみません。鑑識の作業が終わるまでなにか話そうかと」


 室内は鑑識課が指紋の採取や、カメラで現場の撮影が行われていた。


「ホテルの従業員から話は聞いたか?」糟良城が聞いた。


「はい、第1発見者の男性従業員から話を聞きました」土田が頷いた後、手帳を広げてさらに続けた。


「今日の夜10時頃、家族から連絡が取れないとフロントに電話があったそうです。その後、従業員が部屋の確認に向かったところ、遺体を発見」


「他には?」


「総支配人が捜査責任者と話がしたいと」


「わかった、後で聞こう」糟良城が言った。「鑑識の作業が終わったみたいだ」


「はい」


 鑑識課で出ていき、入れ替わるように3人が部屋の中に入った。ベッドはダブルベットで浴室とシャワーが一体となっており、窓からは綺麗な夜景が見える。


 部屋に入ってすぐ左手のバスルームに入るドアノブに、ネクタイで首を吊った男性の死体があった。


「自殺……ですか」土田が言った。


 監察医の慶都(けいと)は遺体の前でしゃがみ込み、頭から足のつま先まで観察した。


「うーん、どうだろう」慶都が言った。「ここ見てくれる?」


 彼女が遺体の右手首を軽く持ち上げた。糟良城と土田が凝視する。


「注射痕?」糟良城が聞いた。


「そう」慶都は頷いた。「手首の炎症や痛みを和らげるのに打つことがあるんだけど、炎症とか痛みがある人ってサポーターとか痛みを和らげるものを着けるでしょ?でもこのご遺体にはそれがない」


「ということは……どういうことです?」土田は聞いた。


「自殺の可能性も、もちろんあるけど、注射された薬品がどういうものなのかによっては、殺害された可能性があるってこと」


「なるほど」


「ご遺体を大学に持ち帰って、薬物検査する。分かったら連絡するから」


「わかった」糟良城が頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ