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 *


 そこからは怒涛の展開だった。


 医師やラルストン侯爵夫妻が到着する前に、なんと王宮直属の騎士団が我が家に押し掛けてきたのだ。


「失礼。こちらに居るテオドール・ラルストン侯爵令息を至急王宮に連れて来るようにと王命を承りました。許可なく屋敷に入る無礼をお許し下さい」


 淡々と告げると、騎士達はこちらの困惑などお構いなしにズカズカと屋敷に入り込む。客間に横になっていたテオ様をあっという間に囲むと、何やら彼の様子を確認しはじめた。黒いローブを頭までかぶった怪しげな人物がテオ様の顔の前に手をかざし、何かをぶつぶつと唱える。ふわりと白い光が輝くと、騎士達に向かってこくりと頷いた。それを見た騎士達はテオ様の両手と両足を縄で手早く結び、ストレッチャーの上に乗せて表に停めていた馬車へと運び込んでしまった。


 最後尾に居た騎士が私達に向かって一礼すると、扉がパタリと閉ざされた。


 騒がしかった屋敷は一気に静寂を取り戻す。


 ……な、何だったの今の。それに、あの光は一体……?


 まるで嵐が去ったみたいだわ。それにしても、テオ様は何故突然倒れたのかしら。まさか私とのキスがそんなに嫌だった? でも、それにしては様子が変だったし……大体王命で呼び出されるなんてただ事じゃないわよね?


 お父様もお母様も使用人もみんな呆気にとられたまましばらく動けなかった。




 *




 モヤモヤとした気持ちのまま一週間が過ぎた。


 あれから詳しい情報はないが、テオ様をはじめビリー様、王太子殿下、コックス先生、アンジェラ嬢の五人が学園を休んでいる。みんな気になってはいるが、王家が絡んでいるため表立って口にすることはなかった。婚約者である私の元にそれとなく聞きにくる令嬢も居たが、テオ様が王宮に連れて行かれたことは箝口令が敷かれたため話すことが出来ない。適当に誤魔化すしかなかった。


 ……テオ様は無事に目を覚ましたのかしら。それに、私たちの婚約はどうなるのだろう。さっさと終わらせたいけどこの状況じゃ手続きも進められないし。あれだけ覚悟を決めて臨んだ〝婚約破棄〟だったのに、まさかこんな事になるなんて……。はぁ、と溜息をついた時だった。騒がしいノックの後、侍女が慌てたように部屋に入ってきた。


「お、お嬢様宛にお手紙が届いております! それも、お、王家から!」

「お、王家ですって!?」


 上質な白い紙に王家の紋章で封蝋された一通の手紙。……ほ、本物だわ。震える手で開封すると『話があるので明日、家族で登城するように』と言った内容が丁寧な言葉で記されていた。顔面蒼白のまま急いで両親に見せる。


「お、お父様……」

「大丈夫だ。このタイミングでの呼び出しはおそらくテオドールの件だろう」


 確かに。心当たりはそれしかない。だけど、一体何を言われるのかしら。不安だわ。


「でも、もし我が家に迷惑がかかるような話だったら……」

「そう心配するなシャロン。我が家は何も悪いことなどしていないんだから」

「そうよシャロン。それに、もし何か処分を受けるとしたら向こうの方よ。これまでうちの可愛いシャロンにしてきた仕打ち、忘れたとは言わせないわ!」


 両親はテオ様の私への態度に常々怒っていて、婚約の破棄や解消について何度も言われていた。ただ、私が彼を愛していたのではっきりとした決断に踏み切れなかったのだ。


「さぁ、明日に備えてもう休みなさい」

「……わかりましたわ」


 私は部屋に戻り、侍女と共に明日の準備を進めるのだった。

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