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マスク美人でも

作者: 黒瀬伊織

深夜歩いているとたまに職質される。

女で職質されるってそんなある?おかしくない?人相悪いの?

愚痴ってみたけど原因は多分、童顔だから。

もう今年で25になるのに、高校生に間違われるほどだ。

それはコロナになってマスクをするのが当たり前になっても変わらなかった。

目元が特に幼いのかな。



逆にコロナになって変わったこともある。

なんとなくだけどモテ始めた。人の視線をより感じるようになったり、会社の後輩に告白されたりもした。ナンパされることも増えた。

いわゆるマスク美人ってやつ。

嬉しい2割、複雑8割。

君たち、マスクの下知らないよね?

団子鼻に、揃ってない歯並び。

一時期はそれがコンプレックスで整形が頭をよぎった。



男たちは面食いばっかりだ。

コロナになってから知り合った人と初めて食事に行ったとき。

その男性からは好意を持たれていたと思う。

そのときまでは。


マスクを外す前までは。


男性はそれからそれまでとは明らかに異なる、冷たい態度で接してきた。

帰りたかったんだと思う。

わたしの方が帰りたかった。



恋愛はもう懲り懲りだと思った。

けれど諦められない。

わたしも今年で26、そろそろ結婚も考えていい時期だろう。

昔から結婚して子供を産んで家庭をつくるのが夢だったから。

そんなとき大学時代の友達から男性を紹介された。



彼はさわやかな好青年という感じの人だった。

とても一つ上だとは思えなかった。

そんな童顔なところの共通点もあって意気投合し、会話が弾んだ。

彼と話す時間が楽しかった。

彼の笑うところがかわいいと思った。

わたしが彼を好きになるまで時間はかからなかった。





彼と知り合って1ヶ月、わたしは未だ彼に素顔を晒していない。

今までの会話はほとんど通話。

会うときも、カフェ。彼がトイレで席を立つとき以外コーヒーすら口にしなかった。

そこまでわたしはマスクを外すことに抵抗があった。

蘇るかつての記憶。また同じように嫌われるのではないかという恐怖感。

この人だけには嫌われたくないと思っていた。


でも、このままではいけないと思っていた。食事を断り続けるのも心が痛い。

彼が嫌気がさすのも時間の問題だろう。

だからわたしはついに決心する。


明日、顔面を晒す。








「やっと見せてくれたね」

マスクを外すと彼は満面の笑みでそう言った。

一瞬理解するのが遅れたが、彼の笑顔をみて張り詰めていたものが切れた。

急に泣き出すわたしに戸惑いつつも慰めてくれる。

彼はわたしを受け入れてくれた。

彼しかいない、そう思った。








~~~~~~~~~~~~~~~









友達に彼女を紹介されたとき、本当に驚いた。

女みたいなこと言うけど運命だと思った。

だって職質したあの女性だったから。


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