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現実恋愛

天使の白い羽

作者: 衣利

3作目の作品となります!


初めての短編になりますが、何とか纏められたかなと思っています。


現実では有り得ない世界感での2人の恋愛模様を描いています。




それは忘れもしない…。

雪が降り止まない、あの肌寒かったあの日…。



私、高瀬彩音(たかせあやね)は幼い頃から食欲旺盛でみるみる内に身体は真ん丸になり、気付けば体重も70キロを遥かに越えていた。

その体型のせいで小、中校といじめられる羽目になった…。


精神的苦痛の中、私のストレス発散となってたのは食べる事。


特にビッグサイズのポテトチップス1袋と炭酸飲料2本の組み合わせが最高である。

この組み合わせが毎日のおやつの時間の楽しみだ。


そんな食生活が何年も続いた…。


勿論、小学校の時も中学校の時も気の合う友達などおらず、1人孤独を味わっていた。


高校に入学した時には頻繁に腹痛があったり腰辺りに痛みを感じていた。

だけど、私は気にも留めず自分の身体の異変を無視していた。


その結果、最悪の事態が私を襲った……。




それは普段通りの生活の中で急に起こった。

私はお腹に死ぬほどの激痛が走った。

お腹に尖った何かを刺されてる様な痛みだった。

次第に吐き気を伴い、私は歩けなくなった。

血の気が引き青ざめた私の顔色に両親は救急車を呼び、私の身体は病院へと搬送される…。



病名は……(重症急性膵炎)。膵臓の臓器が溶けるという恐ろしい病気。ただこの当時、この若さでの膵炎の患者のデータがなく治療方法が分からなかった。


医師達が困惑する中、私は死ぬ程の痛みに何日も耐えてる内に体力にも限界がきていた。


身体には少しづつ黄疸が見られ始めた。


次第に痛みの感覚がなくなると、そのまま意識を失った……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



うーん?

あれ、ここはどこ……?



目の前に広がる光景、空には雲一つない快晴、周りには沢山の木々。それ以外は何もない、建築物さえも。


「…私、何でこんなとこに」


って、あれ?

私は身体の辺りを手で押さえると今までなかった括れがある事に気付く。


「…何で、私、痩せてる?」


70キロ程の重たい身体が今は軽く宙に浮いているみたいな不思議な感覚だった。


その時、遠くから1人の少年が私の方へ近付いてくる。


距離が近付く程、私は少年の姿から視線を外せなかった。


良く見ると身長は私より少し高くて、服は水色のセーターだった。

彼は柔らかい眼差しを私に向ける…。



「…こんにちは、君は新入りさんかな?」


彼の綺麗な顔立ち、ばっちりとした大きな瞳。私は思わず引き込まれそうだった。


「…初めまして、小池琢磨(こいけたくま)です。君は?」

「…私は高瀬彩音です」

「じゃ、彩音って呼ぶよ。僕の事は琢磨って呼んで」

「…はい。じゃ、琢磨はいつからここに居るの?」

「…さぁ、いつだろう?分からない。ここがどこなのかも分からないし、どれぐらい居るのかも分からない」

「…そうなんだ」


こういうのを絶望と言うのか……私は頭を抱えていた。



暫く、辺りを見渡してると少し年配のお婆さんの姿が目に留まる。


「ねぇ、あの人は?」


私の指差す方へ琢磨は視線を向ける。


「あっ、彼女はしずえさんだよ。たまに喋る程度。1人で居る方が気楽みたい。まぁ、他にも居てるけど今日は姿を見てないよ」

「あっ、そうなんだ…」

「…それにいつの間にか、姿を消した人も居る。どこに行ったかは不明だよ」

「…不思議な事が起こるんだね」


重々しい雰囲気になっちゃった…。


どうしよう?何を話したら…。私、人見知りだからこういう空間は苦手だな…。


やがて、この沈黙を先に破ったのは琢磨だった。


「…君には色々話せそうだ。落ち着くし」

「…そう?」

「…君は、そうじゃない?」

「…私は……」


確かに、初対面の人なのに普通に会話出来てる自分が居る…。


「…私もそうかも!」


この瞬間から私達は意気投合して会話が弾む。

場が和み、安らげた…。

琢磨は私の友達第1号になった。


それからというもの、私の傍にはずっと琢磨が居た。

一体、どれくらいの時間を彼と過ごしただろう。


時間の感覚がない。


だけど、私は一緒に居る内に琢磨の事を意識し始めていた。

そして、彼にどんどん惹かれていく自分が居る事に気付く。


そんな思いを私は心の中だけに留めた……。


私なんか、相手にされない……。


傷付きたくない、自分の気持ちから逃げる事しか出来なかった……。



そんな気持ちを知ってか知らずか、琢磨は意味深な発言を私にぶつけた。


「…君と居るとやっぱり楽しい。それだけじゃない。君には惹かれる部分が沢山ある」


えっ?それって、もしかして?


彼も私と同じ気持ちって事?


私は淡い期待を胸に抱く…。


そんな気持ちを知ってか知らずか、琢磨は私の身体をゆっくりと自分の方に抱き寄せる…。


余りにも突然で戸惑うけど、嬉しさが込み上げる。



「…あの、琢磨、私…」


思い切って私の今の気持ちを言葉にしたい。

ただ単純に(好き)って伝えれば良いんだ。

産まれて初めての告白と言うやつだね、これは…。

凄く照れ臭くもあるし緊張感が半端ない。

でも、もう決めたんだ!


「…琢磨、私、貴方が……」


その時だった!

頭上から沢山の白い羽が降ってくる…。


「…何、これ?」



上を見上げると、白い天使が私の元へと静かに舞い降りてきた…。


「…天使?」


白い羽を見に纏った天使の顔を私は直視する事は出来ないが不意に手を差し出していた、自分が楽になる様に感じて…。


まるで、天使に導かれる様に私の身体は浮き上がりそのまま天空へと舞い上がる寸前だった。


「駄目だ!」


琢磨は私の手首を掴み、引き戻そうとした。


「…た、琢磨!」

「…行ったら駄目だ!」


私は、はっと我に返った瞬間、白い羽の天使が私の目の前から消えていた。


「…姿がなくなってる」


もしかして、あのまま行ってたら……?

そう思うと恐ろしかった。

急に震え出す私の身体を琢磨は優しく抱き締めた…。


「…大丈夫だから、もう安心して」

「…うん、ありがとう」



(彩音!彩音!)


うん?

私、呼ばれてる?この声、聞いた事ある。


でも琢磨には聞こえてない様子。


私にしか聞こえてないの?


(彩音!)


あっ、まただ。


何度か繰り返されていく私の名前。


この声はお母さん、お父さんだ。


私は自然と目から涙が溢れ出た。



「…琢磨、私ね」

「…分かってるよ。ほら、目を閉じてその人の事を思い浮かべて。そしたら君の待ち望んでる世界に帰れるよ。その代わり目を閉じたら絶対に開けない事…」

「…うん。あっ、でもそれじゃ琢磨は?」

「…大丈夫。僕も後から戻るよ」

「…ほんとに?約束だよ?」

「…あぁ、約束する」


私はゆっくりと瞼を閉じた。

次第に私を呼ぶ声がこだまする。

やっぱりお母さんとお父さん!


私、今から行くよ!


意識を集中させた……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



うーん、あれ?ここは……?


気付くと、私は白いシーツのベッドの上だった。

天井の照明が目に眩しかった。


って事はさっきのは夢…?


琢磨に抱き締められた温もりが私の中でまだ生きていた。


そうか、やっぱり夢だったんだ。


現実では有り得ない事だ。


琢磨って人は夢の中の人。

私自身が作り出した幻だったのかもしれない……。



ガチャ


扉が開く音と同時に響く母親の声。


「…彩音!」


私の身体を優しく抱き締める母親の姿を見て実感する……。



私、生きてるんだ。



そう、私は一命を取り留めた。



意識不明の重体だった私も若かったお陰か、回復も早かった。

暫くは絶食の日々が続いた。

その結果、私の身体に付いていた皮下脂肪が落ちていき次第に体重も50キロまで落ちて減量に成功した。

流石に、皮下脂肪が落ちた分、お腹回りがたるんでるのが難点だけど、顔回りもすっきり別人の様に生まれ変わった。


1ヶ月も経った頃には病棟を歩き回れる程に回復した。



そんなある日、私は毎日退屈な日々を過ごす中、病棟を探索してると大きなテレビの前で椅子に腰掛ける1人の少年と出くわす。


背中越しで顔は見えないが私と同じぐらいの年齢の少年だと察しが付いた。


私の足音にその少年は気付き背後に振り返った瞬間……。



「…えっ?嘘…?まさか……」


目の前には琢磨と瓜二つの少年が私の方をじっと見つめていた。


有り得ない、こんな事って……。




「…あの?僕に話しでも?」

「…えっ?いえ……」


だけど、彼は私に見覚えがない様で表情一つ変えない。

そりゃ、そうだよね。夢だったんだから。

落胆の色が隠せない。



「…あの、こっち来て喋りますか?」

「…あっ、はい」


私は彼の隣の椅子に腰掛けると、益々、夢の中の彼を思い出す。


「…えっと、君は入院してるみたいだけど、どこか悪いの?」

「…あっ、実は難病の病気にかかって意識不明の重体だったらしくて」

「…そうなんだね。僕も事故に遭って意識不明の重体だったらしいよ」

「…奇遇だね。私も後、もう少しで退院なんだ」

「…そうか。僕は明後日には退院って事になってるよ」


何だろう。夢の中の琢磨と話し方まで似てるとは……。

偶然なんだろうけど…。

あっ、そうだ、偶然なんてないんだった。

必然なんだ。

幼い頃、親から聞かされてる言葉を思い出していた。


その時だった。


少年はテレビの電源を切ると私の方へと視線を向けた。

この瞳に縛られたら逆らえない。

彼の瞳は私にとっては弱点である。



「…あの、君、名前は?」

「…な、名前!?」


私は取り乱してしまった!

咄嗟に平然を装った。



「…あっ、彩音です」

「…そうか。やっぱり」


やっぱりって?

少年は納得したかの様に唇を噛み締めた。


「…僕は琢磨です」

「…?!」

「…彩音とは初対面じゃないよね?」


悪戯っぽさの笑顔を私に仕向ける彼はどこか意地悪に見えた。


運命の巡り合わせだ…。


「…ほんとに琢磨なの?」

「…嘘付く必要ある?僕も初めは偶然だと思った。だけど、良く見れば見る程、彩音の事を思い出した」


私は感極まり口元を手で押さえる。

今にも泣き出しそうだったからだ。


「…それに僕達、抱き締め合ったよね?」

「…?!」


私の反応を面白がって見てる?!


「…夢だったんだけど夢じゃなかった。僕はこの運命に逆らいたくない」

「…私も」


私達は周りに人の気配が感じないのを確認すると、そのまま口付けを交わした……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



それから更に1ヶ月が経過。

いよいよ退院の日を迎える。

2ヶ月の闘病生活も今日で終わる。


琢磨は私より一足早く退院して行った。

もう一度会う事を約束して…。




私は担当医師や看護婦にお礼を告げ、病院を後にした。



今日は快晴で退院日和だった。


少し寄り道したいとこがあるからと言い、親を先に帰らせるとようやく私1人になった…。



「…はぁー、無事に退院かぁ。長かったな」


私が助かったのは奇跡とも言われた。

いや、奇跡はそれだけじゃない。

私に出来た最愛の人…。




「もう、遅いよ!」


「お待たせ」



私達を祝福するかの様に沢山の渡り鳥が大空へと飛び立った…。




































無事にハッピーエンドになりました。


現代では有り得ない恋愛の形ですが、実際にそうなったら?と思いながら作品を書いてました。


色々な方に読んで貰えたら嬉しいですm(__)m


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  「…」三点リーダーの使い方が少し気になったかも。  基本的には「……」と「…」×2で書く方が一般的なようです。(厳密には決まっていないらしいですが……)  もしかしたら、気になる方が…
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