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  作者: 田中浩一
2/8

バイクと友情と愛

5

月曜日の学校は憂鬱で、決まって美凪はギリギリ教室に滑り込む。

「オッス、」「おはよう」

勇二と守人の挨拶を、前髪を直しながら、

「はいはい」と返答する。

午後の授業。

お弁当で腹を満たした美凪は、襲い来る睡魔と戦い、やがて敗れた。

隣の勇二は可愛いなとニヤニヤ見ていて、離れた席の守人は、起こせよと、勇二にあごをしゃくる。

クラス中のみんながまどろんだ、その時。

「お父さんっ!」

美凪が悲鳴に近い声で叫びながら、立ち上がった。

「おいおい、葛城ぃ。怖い夢でも見たのかぁ?」

男性教諭の冷やかしに、みんなは笑ったけれど、勇二と守人は笑わなかった。

また、あの夢か。


勇二とタンデムした日。

「これいいね。スカッとする。あたしもオートバイ乗る」

紅潮した顔で、美凪は勇二に言ったものだ。

それで、勇二は免許取得の段取りから、今自分の乗るバイクは作ってないけど、最近これに似たバイクが発売されたことなどを、説明した。

「いくらするの?」

美凪に訊かれて、

「メーカー希望小売価格は、120、30万円かな?プラス消費税とか」と天を仰いで、ため息をつく。

「高校生にゃ、大金だ」

勇二の言葉に、美凪は薄ら笑いで、答えた。

「あたしに考えがあるの」

結局、妙案は教えてもらえなかったけれど、それはあとになって、守人から聞かされることになる。


6


高校1年の初夏。

守人は、鹿児島空港に母と伯母と、弁護士の伯父を見送りに来ていた。

名うての弁護士の伯父は、月に1度は必ず、東京に行く。携わる事件によっては、何週間も帰らないことがある。

そんな時、残された伯母とまだ小さな男の子はよく、守人の住む公団住宅に泊まりに来る。

守人は伯父のことを尊敬しているし、伯父も、守人に弁護士になることを奨めていた。

それは、名前からもわかる。

弱者を守る、「守人」。伯父の兄、亡くなった正義感の強い警察官の父が、名付けてくれた。

だからだろう。今の美凪のことを快くは思っていない。それでも、黙っているのは、好きだからだし、自分でなんとか更正させようと、思っているからだ。

それにしても、なぜあれほど美凪は、警察を憎悪するのだろう?

伯母の運転する軽自動車での、帰り道。

「国分のイオンのトンカツ屋で、お昼食べてかない?」

そう言う伯母の提案に、日曜日の残された中途半端な時間を潰すにはそれもいいかと、話は決まった。

鹿児島空港を出ると、片側二車線の道を、真っ直ぐ進む。高速道路をくぐり、ラブホテルの点在する地域をすり抜ける。坂道を下ると隼人町日当山(はやとちょうひなたやま)にでて、そこから国分市はすぐだ。

坂道を下る前、左に雑木林のなかのラブホテルを見ていた守人は、突然叫んだ。

「伯母さん、と、止めてっ!」

それほど速度の出ていなかった車は、10メートルも行かずに、停車。

何台か後続の車をやり過ごしたあと、守人は車外に出る。

「なになに?」

いぶかる家族を尻目に、守人が見つけたのは、美凪だった。


7


バス停に向かって走っていた美凪は、突然聞き慣れた声に呼び止められて、息を呑んだ。

振り返り様、ボディバックを無意識に背中に回す。

「あっ、あぁ、中島君。偶然ね、どうしたの?」

どうしたのとは、こちらの台詞で、今こうしてる間にも、遠くへ行かねばと、美凪の足元はあさってを向いている。

「帰るんだろ?車、乗ってけばいいよ。送るよ」

守人は自分でも、乾いた冷たい声音で喋りかけているとわかっていながらでも、この状況がただならぬものだと、冷静に分析していた。

バイクが欲しいんだとよ。と、勇二から聞いていた。

そして、自分と同じ、母子家庭だとも、知っている。

ラブホテル。

焦る女子高生。

後ろ手に隠すような、バッグ。

このまま、この場に居続けようかと、意地悪なことも一瞬、ほんの一瞬考えたけれど、そこは惚れた弱味。すぐに車に乗せ、家族に適当に事情を説明して、走り出した。

周りに気づかれないように、後部座席から、ドアミラーを見る。

キョロキョロ道路に走り出す、中年男性が、映っていた。


ネットの出逢い系で誘いを掛けて、ホテルに入るも、言葉巧みに相手を風呂に行かせて、その間に財布から金を抜きとるという、寸法だ。

武士の情けか、ホテル代は残しておく。

全部、守人の推理に過ぎない。それを自分自身、信じたくもない。

だから、そのことは黙って、イオンのトンカツ屋でトンカツを食べて、家まで送るまで、笑顔でいた。

目は笑っていなかったかもなと、別れてから思い返す、守人。

次の日、憂鬱な月曜日。勇二と守人にメールがあった。

「朝イチ、話したいことがあるので、六時半、体育館の裏に集合。美凪」


8


憂鬱な月曜日に、更に輪を掛けて美凪の問題を抱えて、ひとりで学校には行けないなと、正門の手前で勇二を待っていた。

「オッスっ、なにしてんの?もしかして俺を待っててくれたの?」

勇二は来るなり、冗談を言って、ひとりで笑っている。でも、守人の真剣な顔を見て、何ごとかあったんだなと、気づいて、

「葛城に何かあったのか?」

訊かれて守人は、昨日のラブホテルのこと、それについての自分の考えを話して聞かせた。

「守人の考えだと、葛城は、エッチしてないんだな?」

そこかよ、と思いながらも、守人もそうであってほしいと願っていた。

「だと思う。僕たちに会うときの感じから、そう思うだけだけど」

「だよな。ヤリマンて感じは、全然しないね」

男とは、特に若い男は、大好きな到底手の届かないアイドルでも、スキャンダルや男と密会していたなんて、報道を見ると、「汚れてしまった」と勝手に思う生き物である。

ふたりは、緊張感をみなぎらせて、体育館裏に向かう。

いない。

「そういや、葛城が俺たちより先に学校に居たためしはないよな」

勇二の言葉が終わらぬうちに、美凪がやって来た。


9


来るなり、美凪は語りだした。もともと普段から口数が多いわけではない。友達も、勇二と守人以外には、喋っているところを見ていないから、いないのかもしれない。

勇二はオートバイで、守人は同じ母子家庭という境遇と、初めて勇二が紹介したときに、守人が自己紹介で言ったことに、美凪が共感して、友達になれたのかもしれない。それは、

「中島守人です。『守人』は死んだ父が、弱者を守るために尽くせという意味でつけられました」

まるで面接だなと、勇二は笑ったけれど、美凪は笑わずに頷いていた。


美凪は、目を閉じて思い出すようにゆっくりと、語りはじめた。

高崎裕也(たかさきゆうや)の話をします。

二年前、小さな町で放火殺人事件が起きました。

平屋一軒家の火災が起き、焼け跡から、三才の女子児童が、遺体で発見されました。

家には、母と娘の二人だけで暮らしていたそうです。

死因は、一酸化炭素中毒とされました。とても焼けかたが酷かったらしいのです。

でも、母親の上野あけみが、「娘は、高崎裕也に殺されたんだ」と言い始めたんです。

一転、殺人事件になりました。警察はすぐに遺体解剖をやり直しました。すると、女子児童の胃の中から、高崎裕也の髪の毛が出てきたのです。

高崎裕也は殺人を否定しました。だいたい、なぜ自分の髪の毛が、女子児童の胃に入るのかと主張しました。

すると、その上野あけみが、また、証言したのです。

『私と高崎裕也は、付き合ってました。高崎裕也には奥さんと娘さんがいました。そのことは知っていました』

でも、愛していたとも、言ったそうです。

高崎裕也とその奥さんは、証言しています。

『一年ほど前から、上野あけみにストーカーされていた』でも、警察には届けていませんでした。

女子児童の胃の中の髪の毛が、事件の焦点になると思われましたが、捜査はあっけなく進展して行きました」


10


部活の朝練の生徒たちが数名、登校して来た。体育館裏の三人には、気づかずにいた。

美凪は、話を続ける。

「高崎裕也は、重要参考人として、取り調べを受けました。面会に行くと、どんどん痩せていくのがわかりました。もともと、喘息持ちだった高崎裕也は、体調を崩すと病院に連れていかれ、点滴と薬を貰うと、また、長時間の取り調べを受けたそうです。

あとから、弁護士の方に聞いたところ、両手を机の上に載せた姿勢で、返事は『はい』か『その通りです』を強要され、さらに逆らうと、『たたき割り』と呼ばれる高圧的な態度と怒声、罵声を浴びたそうです。

でも、証拠はありません。取調室には、カメラも音声録音もないからです。

警察は、そんな取り調べかたはしていないと、全て否定しました。

そして、高崎裕也は、自白したのです。

やってもいないことを、言わされたのです」

美凪は、泣いていた。

そこまでくると、守人にも、鈍感な勇二にもわかってきた。

「葛城のこっちに引っ越してくる前の、名字って・・・」勇二が、涙を浮かべて、尋ねる。

うつ向く美凪の代わりに、守人が答えた。

「高崎美凪。高崎裕也さんは、君のお父さんだね」

堰を切ったように、泣き出す美凪。

ハンカチを差し出す勇二。そして、ソッと肩を抱く。

「・・・お父さんは、警察病院で、死にました。最後まで無実を訴えてっ」

嗚咽が止まらなくなり、しゃくりあげるようになると、

「休憩しよう。僕たち、今日は、休もう、学校」

そう言ったのは、守人だった。


11


「噂ですけど」

ファミレスに入って、おかわり自由のホットコーヒーを飲むと、落ち着いたのか、美凪が続きを語りだした。

「当時の警察の役職の上の人って言うのかな?その人が、上野あけみと恋仲だったって、聞いたわ」

「つまり、その警察幹部らしき人が、お父さんを犯人に仕立て上げたんだな」

守人は、下唇を噛んだ。

「僕が、必ずこの不正を晴らす。必ず、必ず」

拳を握る、力が入る。

「その前に、弁護士にならなきゃな」

勇二が茶化す。

「なるさ。そして・・・」

守人は言い淀み、心なしか頬が赤らむ。

勇二は、それと知って、話を変える。

「その警察官てなんて名前なの?」

河野仁(こうのひとし)とかなんとか」

うろ覚えでごめんねと、美凪は両手を合わせる。

「その河野って人は、今は鹿児島にはいないの」

「きっと、県警内部でもヤバイと感じて、飛ばしたんだな」

守人は言う。

「今は・・・」

美凪。

「今は?」

守人。

「東京に」

「まじでっ?」

「まじでっ」

「遠いな」

勇二は、天井を見上げた。

「ところでさ」

勇二。

二人が、同時に見やる。

「昨日のラブホテルの件なんだけど」

守人は、今かよっと、眉をしかめ、美凪は目を右往左往させていた。


12


食事が運ばれてきて、話は中断。

勇二はダブルハンバーグを無言で食べはじめる。

早い。

美凪はカルボナーラを、守人はしょうが焼き定食を、ゆっくり味わいながら、食べる。

早速食べ終わった勇二が、美凪にさっきの質問をしようする。

「まぁ、コーヒーでも注いでこいよ。食べてすぐに喋ると、チーズ臭いぞ」と守人に言われて、

「そうだな」と手のひらに息を吹き掛けながら、立ち上がる。

「はぁ~」

ため息をつく守人に美凪が、笑顔で言う。

「わたしなら大丈夫だよ。ふたりには隠し事したくないし」

「に、してもタイミングがあるよ。勇二は昔っからデリカシーに欠けてんだよな」

フフッと、美凪も笑う。

「さっきの続きなんだけど、それだけの証拠と自白で、裁判はどうなったの?」

慎重に訊ねる守人。

「その後、お父さんのアリバイが立証されて、無罪になったの。警察からはなんのお詫びもないけどね」

「髪の毛はどうしたんだろ?」

「うちをみてくれた弁護士さんが見つけた、ごみ置き場の防犯カメラに、上野あけみがゴミをあさる映像が映ってたの」

眉ねを寄せる守人に、

「あのね、うちはお父さんの髪をお母さんが切ってたから、ゴミの中に見つけて、子供に食べさせたのかもって」

「気持ち悪いことするんだな」

守人は、両手を上げて、参ったのポーズ。

「きっと、その上野あけみ自身も、食ってるぜ。いわゆる、愛すればこそってやつさ」

戻ってきた勇二は座りながら、そう言う。

「病院でも、そういう患者さんがいるって話は聞くよ。うちは、精神科はないから、他所を紹介するけど」

ストーカー怖し。

三人は同じ思いに囚われて、身震いした。


13


コーヒーを半分ほど一気に飲むと、勇二はふたりを交互にみて、

「じゃ、そろそろ本題に入ろうか?」と言う。

いやいや、今までのが、本題中の本題だよと、守人は胸のうちで思い、背もたれに沈んだ。

「オートバイが欲しいの。それでお金を稼ぐために、ネットでおじさんたちに声をかけて、制服姿の写真を撮らせてるの。それでいくらか貰えるのよ」

美凪は、自分の辛い過去を全て話して楽になったのか、スラスラと喋りはじめた。

「でも、身体は売ってないよ。信じてくれる?」

それが、二人の一番の関心事でしょと、言わんばかりに、守人と勇二の顔をためつすがめつ、見る。

そう、惚れた女に言われて信じない男は、いない。

「そ、そうなんだ。もちろん信じるよ」

明らかにホッとした顔の勇二。

それならいいやという、空気をかもしたその時。

「僕は嫌だっ、葛城の写真をみて変なことしてるヤツがいるなんて、嫌だっ。葛城が汚されてるみたいで、嫌だっ!」

一見、だだっ子のようだけど、勇二も初めて見る守人の激情に、驚いた。

「もうやめてくれっ、お願いだから。オートバイ代は僕たちが何とかする。バイトで、買うよ」

「僕たち?って、俺も、かな?」

「だいたい、勇二が焚き付けたんだろ?責任は第一級犯だ」

まるで殺人犯のように言う。

「わ、わかった」

圧に、負けた。

「ありがとう。ふたりとも」

ぎゅっと唇を引き締めた。そうでないと、泣きそうだったからだ。人は優しいんだ。そう思った。

帰り際、出口で美凪がきびすを返すと、レジにむかう。

「どうした?お釣り間違いかな?」

そう言う勇二に、守人が指し示した、ドアガラスの貼り紙。

〈アルバイト・パート募集〉

「なるほどね」

ふたりは顔を見合わせ、笑った。


14


夏休みと数ヵ月で稼いだお金で、オートバイを買う。

三人で貯めたお金で、買う。

美凪は何度も何度も、勇二と守人に、ありがとう、大切に乗るからと繰り返した。

母葛城由美子は、美凪がアルバイトを始めたのは知っていたから、そのお金で買ったのねと、思っていた。

母は、大型バイクの値段を知らない。美凪の読みは当たった。余計な詮索もなかった。

昼間は、誰に見つかるかわからないから、バイク乗りの練習と慣らしは、夜になる。南国鹿児島の晩秋とはいえ、夜は寒い。

勇二は、晴れの日もカッパを着た。時には中に新聞紙を重ねて入れた。

意外に温かい。

お金はあるけれど、アルバイトをして、お金を稼ぐという尊さを知ってから、親にせびるのを、やめた。

美凪は、カッパはカッコ悪いからと、ジーンズにジャンパーで、我慢した。

美凪だけは、アルバイトは続けていたけれど、お金はオートバイで全部、持っていかれたし、貧乏高校生には若さだけが残っていた。

数週間で、勇二は気づいた。

「葛城は、ライダーの素質が、あんじゃね?」

そう言えば、免許を三度めで取れたと聞いた。自分が11回目だから、優秀だ。と勝手に比べて思っていた。

冬の夜。

遠出も苦にならなくなった、ある晩、鹿児島市内のドルフィンポートという北埠頭そばの港公園で、勇二とふたり、ホットコーヒーを飲んでいたら、サイレンの音が近づいてきた。

カップルが多くて、みんなが一斉に振り返る。

見ていたら、バイクがこちらに向かって、いかにも逃げてくる様相だ。

二人の目の前の、細い道の縁石に乗り上げて転倒した。

近づいて止まったパトカーから二人の警官。

無抵抗なライダーにいきなり、警棒で殴り付けた。

「なっ、なにしてんの?」

叫ぶ美凪。

「おいっ!無抵抗なのに、酷いじゃないかっ!」

勇二も拳を握る。

騒ぎに、周りにいたカップルたちも、集まりだした。

「何でもない。解散しなさい」

警官は、両手を広げて、そう促す。

ライダーは、パトカーの後部座席に押し込められて、しばらくそこに居たけれど、どんどん人が集まりだしたのを気にしたのか、走り去っていった。

あとには、倒れたバイク。

勇二はそれを起こすと、美凪を見た。

そこには、初めて見る形相の、彼女がいた。


15


美凪のデビューは、12月31日だったと、勇二は言う。

その夜。天文館は年越しで賑わっていた。

ひとりで家で寂しく年越しするよりも、知らない顔のみんなとでもいいから、楽しく越したいという人々の群れ。

天文館通の巨大スクリーンにカウントダウンが始まった。

その時。

青白い光をくゆらしながら、一台のバイクが疾走してきた。シンプソンの限定マッドブラックのヘルメットにこれもブラックのジャンプスーツ。

あっという間に天文館通前を行き過ぎる。

「あっぶね~」だの「年末に元気だね~」だの「目立ちたがりかよ~」だのと言う人が大方だけれど、そこに、サイレンを鳴らしたパトカーが、

「止まりなさいっ!」と必死に追いかけてくると、「おわっ、すげぇ」とか「なになに?見えなかった~」とか「ひとり暴走族かぁ~」とかに、語らう話も変わってくる。

人は身勝手で、臨機応変で、高揚する出来事を待ち望んでいる。

自分に火の粉が掛からなければ、それはいつでも対岸の火事で、楽しく面白く、観戦しましょうとなる。

そして、その夜。美凪もその事を、知った。

年を越して、2回目の天文館暴走を終え、自宅に帰ると、グリーンのバイクが止まっていた。

勇二だった。

「よぉ、今晩は」

「う、うん」

うつ向き加減になる、美凪。

「一発めで結構、噂になってんじゃん。葛城の気持ちは、はっきり言って、わからん。でも、警察憎しってのは、これまでのことで、とやかくいうつもりはない。

でも、俺も守人も、葛城のことを心配してるんだ。それだけは、覚えていてくれ」

それだけ言うと、勇二はバイクに跨がった。

「あっ、待って」

美凪の言葉を背中に、勇二は走り去った。


そして、春が来てまた、夏が来た。

気持ちは移ろい、あんなに心配していた勇二も、美凪のドライビングテクニックを見て、安心というまやかしに、捕らわれていた。














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