出発前の昼下がり
登場人物
リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン パワー系プリースト
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー
ララ・ヘルミナ お子様メイジ
ジーン・トアロ 脳筋ウォリアー
その日、俺は困惑していた。真剣に悩むなんて数年ぶりという事もあって、
落ち着きがなくソワソワしていたかも知れない。歩きながらも他の事が上の空
明日に控えた下層への遠征に必要なモノを先輩に聞こうと思ったのだけど
”まともな答えが返ってくるのだろうか”
これまでの付き合いでノリ重視の人というのは分かっているので
一抹の不安が過ぎった。ここはギルドマスターの方が無難じゃないのかと
シーフギルドマスター:ウォーレン・ジーク
単独系となるシーフとして名を馳せ、数々のお宝を発見してきた盗賊の頭
シーフといえば、大まかに3つのタイプがいると先輩から聞いていた。
※近接系 直接攻撃するタイプで先輩のように武器による攻撃スキルを好む。
※罠系 トラップを張り、敵を誘い込む 罠の設置によって一網打尽にする。
※支援系 ヘイトをコントロールしたり囮を出したりアイテムで支援する。
どうもマスターに伺うのが無難の様に思えたが、実は違ってるのかもと、
また思考が巡ったのはマスターはあくまでも「ソロ派」なのであって
”パーティーでのシーフという立ち回り”に疎いのかも知れない。
最も余りにも火力が高くてPTでも立ち回りを考えてないだけって事も
そういう面で考えると先輩の方がPT戦での立ち回りに詳しいと思えた。
◇
そういった事を黙々と考えていると街中の古いカフェの前で
ウィンドウを眺めている2人の少女の姿が目に入って、近づいて行くと
アリッサとララが店の入り口前で何やら話し合っている。
「こんちわー、食品サンプルとにらめっこ?」
まずボケでこの戦いを先制しなければならない使命感が俺を動したが
しまったっ、顔を覚えているのだろうか?それを考えてなかったぜ。
「あっ、駆け出し盗賊だっけ?奇遇だねー」
さすがに昨日の事を忘れてたら、俺の存在感がステルスだ!と自分でツッコ
むしかねぇと思っていたら、アリッサが笑顔で”ボケをスルー”この子は屈託
がないのが魅力のような気がする。この2人、同じギルドに所属してたっけ
「こんにちわ、違いますよ。洞窟は気温が低いですから
アリッサの服を探してて休憩しようと思っていた所です」
「あはははは、だよねー。って、洞窟は寒いんだ」
初めて聞く情報に、そういえば洞窟内部の作りなどを知らなかった事に
気づいた。この子は確か経験者って言っていたから情報に間違いはないだろう
気温が低いという事は寝泊りする状況になったら火種の準備も必要になる。
「おそらく地上とは、15度以上気温が違うと思います」
「ねぇララちゃん、ここで休もうよー」
歩き疲れて痺れを切らしたのか、アリッサがララの手を取って店に
入りたがっていた。凄く歩き回っていたとしたら甘いモノ食べたくなるよなー。
「もぉ、しょうがないわね。出会ったのもご縁ですし
リシュさんもご一緒します?」
「いやー。嬉しいんだけど、実は洞窟の地図を手にいれてなくて
今度、3人で食事でもしましょう」
ララから温度のことを聞いて、洞窟内部の事を調べるのを忘れていたので、
探さなけばという思いが強かった。ここは丁重に断って次への布石をひいて
おかねば、この2人とはこれからパーティーとして一緒に行動するわけだし。
「あら、残念。また次の機会にでも」
「りょうかーい。次は一緒に行こうねー」
2人が店の中に入ってゆくのを見送ったあと、道具屋で地図が売っていた
事を思い出して歩き始め、無骨なおっさんから手書きの地図を購入し、洞窟の
情報を頭の中で整理していると女神像の位置が重要になる事が頭を悩ませた。
◇
女神像はこの世界で死から復活するときに使用される石像で、彫刻家と
錬金術師が依頼を受けて造っていると聞いた。額と両手に戒律を示す宝石が
あり、死亡すると肉体もなくなり、その場で粒子となって魂「霊体」のみに
なるが女神像の場所へ行き、祈りを捧げる事で生前の状態で復活できる。
しかし病気や運命に紐付けられている事柄はどうしようもない。
何故そうなってるのか不思議に思った事があるが、この世界には戒律を司る
3人の女神がいて”フォルマ、フィリア、フォルテ”という女神達がいると、
俺達はその女神達の加護を持って生まれてくるので戒律は出産時に決まる。
その恩恵を受けているから女神像で復活する事が可能と聞いたけど、
子供の頃から”お天道様が見ている”から悪さをするなと言われていた。
俺はその事について深く考えた事がない。女神様と会った事もないので
存在していると言われても実感があまりないし、哲学並みに面倒そう。
子供の遊びで缶蹴りが流行った時、ポコペンという言葉の意味を知らず
大富豪で何故”2”が強いのか聞いても、それがルールだからと説明された。
そういうモノなら、受け入れるしかない。抗ってもどうしようもないから
魔物がいるのは姉妹の誰かの嫌がらせとか聞いたからなー、仲悪そうだ。
上級者のパーティーだとヒーラーの魔力を節約する為に
死亡した仲間の魂を女神像まで運んで復活させる事があって
”魂のみの状態で肉体あるものに取り付いて
運ばせる事もでき、それを人力輸送と呼ぶという”
ごく一般的なPTだと女神像を目指し探索を進めていくのが主で
俺は洞窟の上層予定ルートを女神像に沿って頭に入れ、
PT戦での立ち回りは先輩の動きを見て学ぼうと決めたのだった。




