冒険への道程
登場人物
リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン パワー系プリースト
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー
ララ・ヘルミナ お子様メイジ
ジーン・トアロ 脳筋ウォリアー
ヒーラーが遅刻するという不測の事態から数十分は経っただろうか、奇妙な
奴らの集会場になりつつあった街の定食屋に慌しく駆け込んできた女性2人。
気付いた俺たちが見ていると1人は調整役だろうかアルテミシアさんと似た
様な服を着ていて、もう片方は街の教会でたまに見かける法衣姿のお姉さん。
緑色の髪が印象的で少し天然が入ったドジっ子な保母さんという感じがした。
「すみませーん、こちらに蒼の洞窟へのPT参加の方いますでしょーか」
回りを見ながら定食屋全体に届く声を出しているギルドの調整役っぽいひと
ほぼ確実に俺たちの事なんだけど、ここは華麗にスルーするのがボケの
定番かと思っていたら、先輩が立ち上がって手を振りながら声を掛けているし。
「おーい、こっちやでー」
気のせいか、先輩の態度がまるで友達を呼んでいるかの様なんだけど
初めて会うんだよな。メイジ2人もさっき知ったという感じだったが
こういった案件を何度か経験しているのかも、それなら不思議じゃないか
「ごめんなさい。遅れてしまって、もう参加の方は決まったのですか?」
「ええねんええねん。ヒーラーさんはおってくれるだけで癒されるからの」
先輩が”細けぇ事はいいんだよ”って遅れた事を気にしない性格で良かった。
実際、ヒーラーいないと地獄と化す職場「狩場」もあるって言っていたし
パーティーに回復役がいないって全員が自己回復なんだろうなぁ。
所謂がぶポ「ポーションがぶ飲み」ってやつかお高いわぁと考えていたら
「紹介が遅れてしまいましたね。こちらはシンシア、ヒーラーとして
蒼の洞窟の経験もありますのでお力添えができると思います」
紹介された女性は入って来た時の印象より、何ていうかおっとりしていて
古文書館の司書さんの様な温和な感じだったが、芯は強そうな雰囲気だった。
「遅れてすみません。他の方も揃っていたのですね
下層への経験はありますが修行中の身です、宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げた瞬間にトゲトゲの棒みたいな武器を手に持ってるのが
チラっとしたのを俺は見逃さなかった。ヒーラーには片手と両手あって、主に
片手と盾という風に習ったのだけど両手鈍器だよな、パワー系の人だったか
「いやー、回復の方が経験者とは頼もしい。
ついさっき他の方も参加してくれたので順に紹介するよ」
おそらくその存在「ヒーラー」を一番待っていただろうウォリアーの
ジーンがパーティーリーダーらしく、シンシアに皆を紹介し始めた。
「こちらはメイジギルドのアリッサとその付き添いのララ」
腕をかざして2人に挨拶を勧める、ヒーラーさえいれば・・・のひと
転職して間もないって言ってたけど大丈夫だよな。リーダー経験はあるはず
さっき、シンシアは修行中の身って話したが転職前に下層を経験したのかな。
「アリッサだよ。ジョブはメイジでサモナーっていうのかな
初めてだけど頑張るんでよろしくっ」
「わたしはララ、この子の指導役みたいなものね。下層までよろしく頼むわ」
さっきまで姉御と言い争ってたせいか、一切シンシアの方を見ずに手にした
飲み物を持ったまま淡々と挨拶する、多少ご機嫌ナナメなお子様メイジ
ジーンもあのやりとりを見て気を利かせたのか、俺の方から紹介してきた。
「そしてシーフギルドのリシュとその先輩のリティア」
同じように勧めてきたので無難なトゲのない挨拶をしなければっ
こういった数人の前で自己紹介ってほぼ経験がない。少し緊張はしてたけど
心が落ち着かなくて、とっとと済ませてしまいたい。その気持ちが強かった。
「初めまして、駆け出し盗賊のリシュです。洞窟へは初めてですが、
足を引っ張らない様に頑張りますので宜しくお願いします」
「んー シンシアはうちの事を知ってるから挨拶は省くけどよろしゅうな」
挨拶みじかっ、俺なんて反応ドッキドキだったのに。他の皆の目が丸くなる
ことを平然というとは、さすがだぜ。リティア先輩っ!そこにシビ(略
「ぇー、知り合いなの?昔、同じパーティーだったとか?」
どうして興味あるのか解せないけど、アリッサが食い気味でシンシアに
聞いているが、突然話しかけれて困惑気味。先輩と知り合いだったんだ
2人とも歳が近そうに見え、ないか、シンシアの方が上の様な気がする。
「えぇ、何度か一緒だった事もあります。ついこの前、シーフスキルを
取りにいった事があって、その時もリティアさんに面倒を見てもらったり
してました。最近はお互いに会う機会も減っていましたが」
「ほんと、世の中狭いもんや。といってもたまに遊んでたけどの」
「プリーストがシーフのスキル?を取りにいく?一体何のために?」
どうやら完全にジーンの中では混乱を招いてるようだ。
俺にもその理由はサッパリ分からないが、先輩が知っているのは間違いない。
「たぶんプリ盾の為でしょう。高レベル帯のダンジョンではヒーラーが
2人いて、盾役が倒れた時に片方のヒーラーが盾変わりをする事があるの
その時に必須なのがシーフのヘイトコントロールというワケ」
俺とジーンとアリッサの混乱を紐解いてくれる、優しいお子様メイジさん
リティア先輩は知っているのか、その説明にウンウン頷いてた。
「よー知ってるのぉ。大変よく出来ましたや」
”魔女っ子ララの頭をなでなでしてるが完全に睨まれてるぜっ、先輩っ!”
「考えなさんなや、継承スキルを取りにいくのはよーあるもんやで
ジーンやてリジェネ「継続回復」自分にあったら便利やろ?」
「なるほどな、確か先輩に何人かいたな。自分で回復してる人が」
そう言われて納得のウォリアー。まあ、お互いに回復薬がズっ友みたいな
なんなら道具袋に余剰で入れてないと落ち着かないってくらい依存性が高い。
「スキルの継承は自分の思い描く姿に深く関わってくるからね
色々経験しなくちゃ見えてこないものよ」
「なんだか私の継承スキルで考えさせてしまってすみません
蒼へは何時ごろ向かうのですか?」
また妙に大人びた言葉を口にする、お姿に相まってないララ。経験をして
掴んでいく過程で継承スキルを吟味しないと自分の思い描く姿は見えてこない
戸惑うような微妙な表情のジーンに蒼への出発を聞く両手鈍器パワー系プリ。
「いやそれが、明日は準備とかで明後日にしようかと」
案外、手堅いんだなと俺はジーンを見ながら持ってゆく品々に想いを
巡らせて、初めてのパーティー参加に心を弾ませていた。




