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盗賊稼業も楽じゃない!  作者: 北極えび
第二章 ー古代の暴君ー
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最終手段があるから

登場人物


リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊

リティア・ウィンフィールド 先輩

シンシア・ルフィン パワー系プリースト

アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー

ララ・ヘルミナ お子様メイジ

ジーン・トアロ 盾なしウォリアー

マリア・ヴェルナーデ 螺旋階段

ジェフリー・スチュアート ミケポの盾

ルーファス 大剣メイジ

ティアナ マッドネス・オーガ

 先輩とララの話しに圧倒されていて、アリッサの方を見てなかった。

今のこと「女王蜘蛛」にツッコんでこないし、大人し過ぎると思っていたら、

本人はメニューを見て何かを考え込んでいる表情をしていらっしゃる。面と

向かって言える事じゃないけど、本気の顔つきのアリッサは「不気味で怖い」


”普段がおちゃらけてる陽キャの上位ウェーイ系なのでマジになると

 冷徹な雰囲気なんだわ。そういう面を見せてるのは気づいてないから?”


 あまりアリッサの方を見ているのも何なので、月が関係してるというのを

思い出していると、注文した飲み物が出来た合図の鈴の音の様な音が流れて、

また先輩を真似るべく、赤っぽい色をしたのを取って来て飲んでみたら。


「あれ?これ甘い、見た目から酸っぱいと思ったのに」


「梅やと思ったん?んまあ、色がそれっぽいから分るっちゃわかるけどの」


 妙に体が酸性のモノを求めていたので柑橘か酸っぱいのでいいやと

コレにいたのだけど、思っていたのと違っていてスイカと蜂蜜と何種類かの

ハーブも入ってる様だ。驚いたのはララとアリッサが頼んでたグラデーション

が掛かった飲み物。それもグラスの一番下にハニーレモンが入ってると。


「わあ、綺麗だね。これ、まさかこういった色使いが出来るなんて」


「一番下に蜂蜜ととレモン汁を入れ、その上にバタフライピーかしら。

 それよりもさっきは何を考えていたの?野外では珍しいわね」


「あはは、見られてた?ララちゃん、話しに夢中だったから油断してた。

 あれだよー。あのメニューの浮き出る部分、名前があった様な覚えがねー」


 ジーンとシンシア姉さんの飲み物に気を取られてたので、ララとアリッサ

の声は聞こえていたが何を話してるのか、そこまでは分らなかった。

 ララが珍しいと言ったのとアリッサの「名前があった様な覚えが」は意味深

過ぎる。指で触って浮きだす技術に名称みたいのあるという事に。


「なるほどね。そうだと、貴女が納得いくまで話さないわ」


「うん、頭の引き出しに入ってると思うんだけどなー」


「ララちゃん、それもしかして”リトグラフ”の事かいな」


「!?、驚いた。知っていたのね。でも今のはアリッサが思い出すのに

 降参したら説明しましょう」


 ジーンが飲み物の上にあるマロンホイップやらの事を俺とシンシア姉さん

を交えて話していると、ララとアリッサはさっきの続きみたいな感じになって

いて、先輩がララに耳打ちした瞬間、ララの驚く表情が分かった。

 こちら側との温度差に何となく、先輩が何かを言ったのは間違いない。


「了解や。それよりも今日の天気てどんなや?少し前が十六夜やったけど」


「ここの所、晴れているけど来週から雨という予言がありましたよ。

 リッちゃんが十六夜だったと言うなら、今は臥待月くらいだと思います」


「え?十六夜と臥待月?そんな呼び名あるんですか?三日月や半月、新月、

 満月なら知ってますが、初めて聞く名前なので」


 急に話題が今日の天気の事に変わり、先輩が気にしていた。おそらく曇り

なら月も出ないし、何かが違うのかも知れない。それにしてもシンシア姉さん

が聞いた事もない名前を言って、天気の予言も知っているのに驚いた。


「天候に関しては週に1度、礼拝堂で行われるのですよ。十六夜は満月の

 呼び名が十五夜と言ってその次の日という意味です」


「なっ!?じゃあリティアが言っていた一番マズい日に近いんじゃないのか?」


「落ち着きなさい。その後の臥待月というのは寝待月とも謂い、満月から数日

 経った事を指すのよ」


 月の満ち欠け。俺が知っているのは漁に出るのに夜というのは限られた季節

に仕掛けをしに行くと聞いた。オヤジはイカ漁とカニ漁の場合、月光で海面が

明るい。それで夜に仕掛けて次の日の朝に漁に出る。なのでシンシア姉さんの

月の呼び名を知って、そんな名前もあるのかと。蜘蛛と同じ通り名みたいな?


”た、確かに、ジーンが驚いている様にバリクソという程、つおいのでは”


 シンシア姉さんの説明を聞いて、咄嗟に席から立ち上がったジーンの言う

通り、マスいかも知れないと思っていたら、ララがツッコんで来た。

 それを聞いて”すまない”と謝っているけど、この捕食される系の見た目

でそんな難しい事を知っている。という違和感の凄さよ。


「ちなみに、さっき貴女が言っていた別名は”複眼の殺戮者アレニェ”

 あの蜘蛛に女神像送りにされた人が多いからそう付けられたのよ」


「さ、殺戮者」


「なあ?狂暴というのは理解出来るんだが、複眼って何だ?」


「・・・(張り詰めた空気を壊したジーンへ、ジト目の俺と先輩とララ」


 シンシア姉さんだけは愛想笑いをしていた気がする。まあ俺もカブトガニ

を初めて知った時に、親から蜘蛛やトンボ等もそうだと教えて貰った。

 ララが口にしたあの巨大蜘蛛の別名、と名前。アレニェっていうのか。

紫のオーラを纏うくらい多くの冒険者を女神に送っている、謂わば猛者。


「そうそう。それや、いやーうちも送られた事あるんやけどな。

 複眼っちゅーのは、その名前の通り、目が一杯ある事やろ」


「なるほど目の数が多いのか、だがそれだけ多いとどうなるんだ?」


「ジーンさん。蜘蛛の場合に限らず、複眼を持っていると感知能力が高く

 なるのです。触覚で音を探知したり、糸もあるので薄く張られていると

 触れた感覚で相手に知られてしまう事もあります」


 女神に送られたと先輩が爆笑しているが、傍から聞いてるとトンでもなく

ヤバい奴という印象が頭を過った。しかしよく考えたら今の先輩じゃなくて

数年前かも知れないしと思っていたらジーンの納得と疑問に対してシンシア

姉さんが優しく諭す様に説明していた。確かに蜘蛛の糸という武器がアイツ

にはあるハズ。巨体だけにその範囲も未知数で子蜘蛛も沢山いやがる!


◇


 この店に来てから1時間は経ってないと思うけど、やたら静かだという事に

気づいた。他の客は居るには居る、目の届く範囲に。しかし会話が聞こえない。

 不思議な場所だ。このメニューにしても繊細な細工を施しているし、声に関

しても、何かしらの効果を生み出していて、他の客との間に見えない仕切りが

あるから、客同士の会話に聞き耳を立てられるたりというのがナイのかも。


「獲物を捉える力が増してるという事か、そういえば攻撃方法の違いをリティア

 が話してた様な。具体的にどう変わるのか知っていたりするのか?」


「そやなー。と言ってもある程度やで、月の満ち欠けでかなり変わるよって」


 ジーンは蜘蛛やら蛇、虫といった自然界の生物を知らないワケじゃなくて、

その生態までに興味がなく、食べれるか食べれないかで判断していたそう。

 漁師の息子とはいえ、魚に関しては俺も似た様な感覚だからなー。知らない

生態の魚の方が多い。ヤバいのは聞いてるけど、鮫、ウツボや毒があるのとか。


「ともかく体力が減って来たら範囲魔法攻撃をしてきての。その後、

 水と土の属性攻撃無効になりよる。当然、毒や束縛デバフは効かず、

 体力が経るにつれ、徐々に通常攻撃と魔法力が上がってきよるねん」


「えぇ!?アイツ魔法使うんですかっ?むしろ巨体を生かした攻撃が

 主体で攻撃と防御上がるとかとばかり」


「俺もそっちの方を考えてた。むしろ魔法が主攻撃なのか」


 先輩が戦った時の事を話してくれてたが、あの蜘蛛の最初は物理オンリー。

体力が減ってくると水、土、闇属性の範囲魔法を使って、近接潰しに変えて

くると云う。物理より魔法防御が高くなり、無効以外の魔法属性に対しても

耐性を持っているので、高レベル帯のでなければダメージを与えられない。


「飽くまでもうちが経験した時やからの。月齢は覚えてないけど満月では

 なかったと思うで、その時のパーティーで誰かが言っておったし」


「満月だと、更にステータスが上がった状態になり、自身の周囲にフィールド

 を発生させて継続回復が掛かり、魔法防御の低い者を近づけさせなくなるわ

 ね。通常攻撃も異常に高くなってるから、ほぼタンク以外だと耐えれない」


「ほえー、そんなん知ってるって満月の時に戦った事があるんやな」


 先輩が経験した当時の話しをしていて満月ではなかったと口にすると、

ララがその更に上の状態を説明。聞いてる俺達は先輩以外、開いた口が塞がら

ないというか、あの化け物が第二形態、第三形態になっていく様な絶望感。

 遠隔魔法職でダメージを与えられて、初めて活路が見えてくる感じだ。


「低レベル帯にいるネームドではかなり厄介な相手なのは間違いないわ。

 だからバウンティーハンターの稼ぎネタになっているのだけどね」


「バウンティーというと賞金稼ぎの方達ですよね。紫オーラが対象になる

 事があるのですか?」


「その辺りがリティアの言っていた大人の都合ね。倒してもリポップしてくる

 けど、縄張りの外に出れない制限のある蜘蛛を放置している理由よ」


 アイツ復活機能付きなのか!ララに質問してみたら魔物は全て混沌の戒律

を持ち、その加護があるという。復活する時間はバラバラで厄介な紫オーラは

シーフギルドに依頼すると討伐の手配をしてくれる。代金は相手によって違う

が、基本料金とハンターのランクで変わると云う。


「つまり厄介な相手を金で代わりに倒してくれるって事か」


「そうなるわね。どちらかというと生業にしている者はいなくて、

 本職の傍ら、腕試し、パーティー連携の練習がてらっていうのが多いわ」


 ジーンの言うのも分るけど賞金稼ぎというより、お金で雇う用心棒みたいな

立ち位置なのかな。ララがその仕組みを知っていた事に驚いた。俺はまだ聞い

て無かったけど、妙に先輩が余裕を見せていたのは、これムリや!となっても

最終手段があるからだ。こっちで全く歯が立たないのならしょうがない。


「あの、どうして制限があるのでしょう?あの強さの蜘蛛なら縄張りを広げて

 街全体をそうする事も可能なくらい繁殖出来そうなので」


「それは・・・アレニェの主である悪魔との契約とだけしか話せないわ」


「そうなのですか、眠っているモノがいるとは聞いていますが、分りました」


 俺はジーンの言った事やシーフギルドが関わっているのに気を取られて、

シンシア姉さんがララに「どうして制限があるのか」と聞いたのが奇妙に感じ

てしまっていた。そういえば何故、メイジギルドのララが知っているんだ?


”もしかして、大分前にシーフになってた事があるのか、この人っ!”


お読み頂き有難うございます。

拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。

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