風の知らせ
登場人物
リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン パワー系プリースト
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー かぴばら
ララ・ヘルミナ お子様メイジ 雨がっぱ ヒヨコ
ジーン・トアロ 盾なしウォリアー
マリア・ヴェルナーデ 螺旋階段
ー始まりの魔法陣ー
リシュ達が帰還した後のジーンは次第に気温がまた下がって来ているのを
肌で感じて、洞窟内だが次第に夜に近づいている事を実感していた。
街からココへの時間を考えたら先にリティア達が戻る可能性の方が
高いと判断し、火を熾して暖とスープを作っておこうと手持ちのアイテムを
確認してみると燃炭石はあるが魔法を使える者が誰もいない。
「参ったな。これがあっても魔力が必要とは」
リシュはジーンがアルケミストを経験しているので魔力を有しているの
では?と判断していたが、ジーンが取得したのは生成したエリクシルと
魔力を合成して行使する魔法攻撃系ではなく、支援、物理攻撃の2種。
主に回復薬、耐性薬目的で転職していたので魔法知識は無いに等しかった。
「確か非常時用に持って来ていたはず。原始的だが、この方法しかないか」
それからおおよそ数分間、ジーンは火起こしに苦戦していた。
これまでは魔法を使える者が燃炭石に魔力を注ぐと発火していたが、魔力を
持たないジーンにとって自力でいくしか手段がなかった。それも急場を凌ぐ
手段、きりもみ式といわれる摩擦の力で発火まで持ってゆく方法。ジーンに
とって何度も経験していた事であったが、今回は何故か勝手が違っていた。
「うぉぉぉー、擦っているのに火種が点かんっ」
垂直に立てた木の棒を両手ではさみ、下に押し付けながらこするようにして
火種を作るきりもみ式という火起こしスタイルで摩擦を行っているが、
この方法は力のみでは難しく洞窟内の水気を吸って木材を湿させている。
「俺のやり方が悪いのか、いや山でもこんな感じだ。同じじゃない何かが、
そうだっ、この空気だから乾燥してな・・・”ぬぉっ!?”」
自分の経験則から幾度もこの方法で発火させた事があるジーンは、
一旦手を止めて考えていたら、不意に自分の近くで急速に黒い円形の
影が伸び始めたのに気付いて、驚きで声を出せず、息を呑んでしまった。
”そんなジーンの目前に幽霊の様に現れる金庫番とパーティーメンバー”
「なっ、なんだ一体っ!亡霊の敵がこんな所まで来る様になっちまったのか」
「や、やっほー。戻ってきたよーっ」
心なしか多少気まずそうなアリッサが元気よく声を掛けたが、ジーンは
生霊だと思ったのか火起こし道具を無造作に置き、斧を手にして構えていた。
「ちょ、ジーン。俺たちだ。よーく見てくれ、霊体でもないから」
「・・・お前達。街へ戻ったんじゃなかったのか、それにその人は
蒼の事で最初に会ったシーフギルドの人だよな」
手にした斧をもって、まさに棒立ちの盾なしウォリアージーン。
消えていった仲間がすぐ戻ってきたら目を疑うのは分かる。リターンでは
ココへ戻れないし、時間が掛かると思っていただろう。それにしても、
火を起こそうとしていたのか、雑な感じで木材が散らばっているけど。
「こんばんは、突然お邪魔して驚くのも無理有りません。行方が分ら
なくなった2人を探すためにやってきたのでご心配しないで下さい」
「アルテミシアさんにララちゃん達の事を話したら、こーなったけど
後でジーンさんに説明しますね」
そういうと金庫番のひとはあの地図を手に魔法陣と台の上にあった
像を確認し始めた。その間にシンシアからジーンへ、街に着いてからの事を
話していて、アルテミシアさんの転移魔法で戻って来たと言っている。
ジーン達もあのゴッツイ杖を見てるけど、魔法を使うと光り出す仕組み?
「どうやら秩序になってるようですね。このまま探してきますので、
皆さんはこの辺りで待機していて下さい」
「分かりました。2人のこと宜しくお願いします」
「大丈夫ですよ、あの方なら」
おそらく一番年上なのもあって、自分に対する不甲斐なさもあるのか
シンシアがヨロシクと口にするとアルテミシアさんは少し微笑んで大丈夫と
答えていた。そして歩き出し、魔法陣の中へ入ってゆくと淡い光に包まれて
消えていく。あれ?という事は金庫番の人って戒律が秩序という事に。
”えー、それを不思議に思ってるの俺だけかいっ”
◇
ーその頃のララ達ー
螺旋階段の様な髪型司教によって開かれた扉からは風の音が聞こえ、
肌を刺す様な、北風の如く冷たい突風がリティア達の方まで吹き抜けて来た。
「これはアカン・・・シャレにならんヤツがおるかも知れん」
風に乗っている何かの力を感じたのか、隣にいるララはマリアの方を見ると
扉の奥から感じている力に薄笑いっぽい表情をしていた。
どうもナニがいるのか知っているかの様な。そんな雰囲気さえ漂わせている。
「いや。ただ、閉じられてたんで冷たい風が当たってるだけじゃ」
先輩とララが生み出したシリアスな空気を見事にブチ壊しにくるローグの男。
「とりあえずお二人はどうするんです?
俺達はあの司教のあとについて行こうと思ってるんですが」
目的が扉を開ける事だったので、それが達成された今、リーダーの男は
ヘルメットと作業着っぽい上着を脱いで、元の盗賊風の身軽い衣装となった。
「わたし達は戻りましょう。アリッサもリシュさんも洞窟は未経験ですし、
ここから先へ進むのは土砂崩れ等の状況を確かめないと危険過ぎます」
「そうやなー。奥に行ってみたいけど、うちらの目的は下層やったし。
ここはギルドからの報告を待つかいの」
顔を見合わせながら互いに意気投合したリティアとララは立ち上がって、
変装していたヘルメット等を脱いだ。2人ともリシュとアリッサの先輩であり
ここへ来たのはギルドの案件でもある。それを反故にするワケにはいない。
「了解しやした。それじゃぁコイツに道の途中まで案内させるんで
そこから戻る魔法陣までは一本道ですぜ」
「有難う。進むのなら気をつけて、あの奥からは只ならぬ力を感じます」
最初にあった年配のローグが2人を先導して道案内をする様に、
もう1人に指示すると、ララ達は始まりの魔法陣に戻る道へと向かった。
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。




