同じ場所にない事
登場人物
リシュ・レーン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン プリ盾姐さん
アリッサ・ハーメイ マジカルクラッシャー
ララ・ヘルミナ アデルちゃん
ジーン・トアロ 輩ウォリアー
マリア・ヴェルナーデ 螺旋階段
ジェフリー モヒカンロード
ティアナ 盛り髪修道士
リリィ ツン系魔法少女
アデル スイーツ系悪魔
アンベル スイーツ系小悪魔
ローレンス 泣きの元騎士
ウォーレン・ジーク 紫オーラ
広めの応接間の中でプラムに収納されているリッティはララが言った
「厄介なことになる」を気にしながら出来るだけ気配を消しながらも主である
プラムの動向を見守っていた。部屋に入ると検査の時に一緒だった男が椅子に
座っていたが、プラムを見ると声をかけ、プラムも慣れた感じで男の腕部分まで
よじ登り遊んでいる。敵意などを感じず、むしろ安心している姿を見ていると
「どうしたよ?妙にマジな顔になってるが、何かあったのか?」
「何って、あなたの事よっ!アルテミシアから様子がおかしい時があるって」
「ちっ、見られてたのかよ。いや、俺が悪いな。ギルド内とはいえ油断し過ぎた」
声や仕草を聞いていたリッティは初めて見た時には感じなかったが、
以前この男と出会ったことがあるのを思い出した。大悪魔シエルグを倒した
パーティーに居た若い剣士だ、面影がある。あれからかなりの年月が経つが
バークレイルに住んでいるとは、しかも何かしらのギルドのマスター。
「ねー、ねー、これなーに?どうやったら動くのー」
「プラム。いま大事なお話をしているの、だから大人しくしていなさい」
「まー、いいじゃねーか。此処には子供の好奇心を刺激する物が多い
最初にコレに目をつけるとは、いい目利きしてるぞ」
リッティに見えているのは透明な魔法のランプの様なモノに文様と細工が
施され中に綺麗な液体と底の方に穴が開いていて、外面に鍵穴が幾つもある品。
”おそらく、この液体が魔力で出来ていて、鍵によって光を当てる場所が
違っており、その反射光で色んな魔法の映像が見れる品物では?”
そういった魔力を使用してホログラムを見る事が出来るアイテムの存在は
知ってはいたが実際に見るのは初めてだった。何故こんなモノがこの部屋に、
そもそも周りを見渡すと「盗賊かっ」と思うほど飾られている財宝が多い。
「コイツはな、魔法のランプなんだ。ちょっと待ってろ」
プラムにそう言うとウォーレンは机の引き出しから大量の「知恵の輪」を
取り出して、プラムが見ているランプの傍に置いた。
「これ、知恵の蛍光でしょう。何であなたが持ってるの?(ララ」
「前にフォルマとトランプして勝ったからな。頂いてきたんだよ」
「・・・(呆れ顔のララ」
”なんとっ、これの前の持ち主は秩序の女神フォルマ様っ
しかし何故、この男は女神様とトランプなぞ・・・”
リッティからしたら驚くべき事だった。一介の者が戒律の女神様と
賭け事のトランプをして勝ったから「貰ってきた」と、何者なのだっ
「これで何をするのー?絡んでるのをどうやって外すのー」
「いいか、これは知恵の輪状になっていて解いた鍵によって
見れるモノが違うんだ。まず、こうする、よーく見ておくんだぞ」
ウォーレンは適当に選んだ知恵の輪鍵を興味津々で見ているプラムの前で
いとも簡単に外して2個の鍵を作り、プラムにどちらがいいか選ばせると
部屋のカーテンを閉め、知恵の蛍光の鍵穴に選んだ鍵を差し込んで捻った。
「うっわーっ!きれーいっ、これ、ランプが見せてくれてるのー?」
「そうだ、いっぱい知恵の輪があっただろう。解いたモノによって
見れる景色も違うから、色々試してみるといい」
知恵の蛍光が部屋の中にいる皆に見せているのは「天空にある庭園」
自然の景色が美しく、眺めのよい景色が続き、妖精フェアリー達が
戯れて、のどかで優しげな雰囲気が伝わってくる。
「まさかフォルテの空中庭園とはね。鍵の中に色々入れてるのかしら」
”な、なんと、混沌の女神フォルテ様の事を知っておられるのか”
「うーん、どれにしようかなー。あ、もう1個はー?2つ出来たんだよねー」
ウォーレンが解いた知恵の輪鍵は2つが重なっていたモノなので
もう1つある事に気づいたプラムが、もう1つも見せてーとせがんでいる。
「残念だが、見れるのはどちらか1つだけだ。その辺りがアイツらしい
ケチくさい嫌がらせだな、女神なら大盤振る舞いするもんだろーに」
「めちゃくちゃな事、言ってるわね。そもそもそれを選んだのはあなたでしょ」
「えー、そうなのー。どちから1つかー。でもまあ、やってみるっ!」
目の前にごっちゃ積みされている知恵の輪鍵を1つ1つ手に取って見るが
どれも難易度が高そうなモノばかり、そんな主の行動を見守っているリッティ。
「まあ、これでプラムの邪魔は入らんだろ。お前が来たって事は
アルテミシアから頼まれたからか?」
「そうね。リバーガーデンから戻って来てから様子がヘンだって、
もしかして闘技会での事を皆に知られた事が気にいらないの?」
「いや・・・そーじゃねーんだが、飾られてるお前の肖像画を見てよ
あの時、何で俺たちが参加しようとしたか、覚えてるか?」
ウォーレンの問い掛けに、少し考えた仕草をした後に「煽りポーズ」のララ。
18年も前の事で自分の黒歴史時代というのもあって思い出したくない様だ。
「だと思ったぜ。お前は肖像画になってるからな。忘れててもしょうがない」
「言いだしっぺはラシェルだが、結局全員乗っかったからな。最後の最後で
会場ごと無くなっちまったけど、よくあれで肖像画になれたもんだ」
10代前半だった当時、ウォーレン達はリバーガーデンでレベル上げを
していたが開催される闘技会の事を知らなかった。パーティーメンバー
だったラシェルから優勝したら名前つきで肖像画が飾られると聞いたが、
それだけだと興味が湧かず、「後世に姿と名前を残せる」んだよという
言葉に負け、参加しようという誘いに乗って出場する事になったのだった。
「メンバーの内誰か1人でも、後世に名前と姿を残せるって凄くない?
皆でそう言ってたっけ、懐かしいわね」
「思い出したようだな。そりゃ、青い乙女さんからしたら忘れたいだろうがよ」
当時のララは気性が激しい性格で目が合っただけで相手が喧嘩腰だと
ところ構わず攻撃魔法を連発するほど危険人物として有名だった。
今ではそんな影が微塵もないが、怒るとたまにそれが出ることがある。
「だからあれは若気の至りって言ってるじゃないっ
え?あれ?ちょっと待って、何で今更それで考え込んでるの?」
「いや・・・ま、なんつーか、お前があって俺のがないのがよ」
「はあ?それで悩んでたの?だからエドワードとかいう闘剣士の時に
妙な感じがしたのね。マスターじゃなければ出れたから」
心の内を読まれ完全に抑え込まれているウォーレン達の横で一心不乱に
知恵の輪鍵を解いているプラムと小声で囁きながら応援するリッティ。
ウォーレンの心残りは自分の肖像画がララと同じ場所にない事。
幼い頃からこれまで一緒だっただけに、この問題の解決は難しそうであった。
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。




