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盗賊稼業も楽じゃない!  作者: 北極えび
第一章 ー蒼の洞窟ー
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気配を消すスキルの悪用はやめましょう

 悪い予感のする日というのは大抵、低気圧が絡んでいると信じている

俺はその日、体調が思わしくなかった。気圧変動によって体内バランスが

乱れて気分さえ憂鬱になる。昔から季節の変わり目には気をつけなさいと

言うが、普通に生活しててどう注意すればいいのかさっぱり分からない。


”どんよりとした空はこれからの事を暗示しているのだろうか”


 今日、初めてジョブのチュートリアルを卒業するのだけど下り坂の先にある

シーフギルドさえ暗雲立ち込めて、まだ行くなと訴えてる様にしか見えない。

”呪わてるのか今日は”そんなネガティブ思想を脳内で再生していると

シーフギルドの前に箒を手にして掃除中の女の子がいる事に気がついた。


 人間よりも少し耳が長めなのだが身長は俺より低いので、おそらく160は

ないだろうけど、小柄で人当りが優しい。ギルドの調整役で保母さんの様な

雰囲気を持つリーゼロッテさん。少し尖った耳と微笑んでる姿が印象的。

 エルフという種族の血が入っていると思うが、もはやこの世界で種族間闘争

どうこうというのはない、昔はあったらしいが何なら4分の1エルフかも。


「おはよう、リシュくん。今日天気悪いねー」


「おはようございます。今日、チュートリアル最終なのですが、

 その事で何か聞いてますか?」


「あ、そういえば今日だったね。マスターが修練場に来いって言ってたよ」


 こちらから声を掛けようとしたら挨拶の先制点を取られてしまい、チュート

リアルを終えてしまう事が、この天気を呼んだんじゃないかと考えていたら


”不意に背後から悪寒が走った。夏の肝試しで急に襲ってくる冷たさだっ”


「リティアさん、そのスキルで悪さするのはご法度ですよ」


 突然リーゼロッテさんが俺の後ろの空間に向かってたしなめる様に言うと

背後の背景が歪み女性の形になってゆく。カメレオンの保護色というか

同化する能力、水の生物だと蛸やら木の葉魚が持つ擬態というかも知れない。

ともかく姿を現わした女性は”あちゃー まずったわ”と、全く悪気のない

言葉を放ちながら完全な成人女性の形となり、見覚えのある俺にとって一番

お世話になってる人の姿になった。


「ちょっ、何してるんすか?」


 気づくと腰の辺りに大型のナイフの様なものを当てられている感覚がした俺は

悪戯っぽく笑っている女性を見直すと、チュートリアル担当で最初から手ほど

きしてくれているギルドの先輩”リティア・ウィンフィールド”

 人間の女性でボーイッシュな感じのする年上のお姉さん。俺の教育係りだが

背後からバックアタックというスキルを使うのが大好きという性格。

シーフとしての腕は良いらしいが、近接系で背後からの刺客といった感じ


 ※バックアタック 背後から強力な一撃を与える盗賊のみの固有スキル

スキルレベルが上がると威力も上昇し戒律が混沌なら追加攻撃の恩恵がある。

※固有スキル その職業のみに使用が許されているスキル、他職へ継承不可。


「何してるーって、かわいい後輩の旅立つ日に

 挨拶しよーとやってきてん」


 サバイバルナイフの様なダガーを仕舞いつつ素っ頓狂に話はじめてきたが、

この人がチュートリアル最終日に来たから、この天気なんだなと納得した僕。


「リシュくん、今日最終日やろ、あんたがステルス覚えたら

 絶対に覗きとかに使いそうやん いちおー注意しとこうかと思うてな」


 ※ステルス 気配を消し、自身の姿さえも光学迷彩のように回りと一体化する

盗賊のみ使用可能な隠密スキル、スキルレベルが上がるにつれ効果時間が

上がり、レベル1で十秒間の効果がある。固有スキルの為、継承不可。


「リシュさん ダメですよそんな不純な目的では。ステルスを使ってみたい

 気持ちは分かりますが、犯罪者を生み出すワケにはいきません」


 箒を抱えながらニコニコ顔で口調のトーンがおかしな事になってる調整役の人


「使いませんってっ、というかチュートリアル

 最終日にステルス習得なんですね」


 マスターが立会い場に来いって言っていたという事は何かあると思ったが、

盗賊のスキルの中でも悪用したら場合によっては一生牢獄レベルの罰を

与えられるのがステルス使用による悪事と聞いたことがあったのを思い出した。


「そやな、これで強盗も思いのままやでリシュくん☆」


「だからしませんって!」


 飄々と恐ろしい事を軽々といってくる先輩のことを尻目に

リーゼロッテさんがマジなのが怖いがギルドの事を思えば当然なのだろう。

ともあれ一端のシーフとして行動には気をつけなければ。

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