だいたいあってるけどな
登場人物
リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン パワー系プリースト
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー かぴばら
ララ・ヘルミナ お子様メイジ 雨がっぱ ヒヨコ
ジーン・トアロ 盾なしウォリアー
先輩が宝箱を陸地まで引っ張ってくると、他の皆も集まってきて
宝箱鑑賞会が開かれた。こんな所にお宝のあった事が驚きだ。
ローグと呼ばれる者達が何かしらの理由で隠す事もあるのだという。
※ローグ:いわゆる無法者で犯罪者集団。スラム街の様な拠点を持ち
冒険者から金品やら巻き上げたり、モンスターから出現する宝箱から
アイテムを収集していたりする。闇市と呼ばれる市場で売買している。
「さーて、リシュくんお仕事の時間やでっ」
満面の笑みを浮かべて嬉しそうな先輩に不安を隠せない僕。シーフとしての
一番の見せ場が宝箱の開錠と口うるさく聞いたけど、毎回緊張する。
チュートリアルとは違う実戦での初めてが「蟹さんの隠れ家」からなんてっ
「あのー、俺が調べるんですか?」
「あったり前やん。うちとの付き合いから
現場で覚えるのが基本ってわかってるやろ?」
やっぱり。答えは分っていたのだが、一縷の望みをかけてなんとなく
聞いてみたけど、ガテン系というか実践で体感して覚えるのが先輩の教え方で
これまで何度失敗した事かっ、しかもその度に”爆笑”してたからなー。
俺が真剣な顔をしてるのに”何が起こるか分からへんのや”でドツく人。
「ここからどうやって、この宝箱を開けるのー?」
宝箱を間近で眺めていたアリッサが興味深そうに聞いてきたので、これまで
に教わった事を説明しようと屈んでブツを確認。見た目がくすんだ赤色をして
いて、練習で開けてたヤツと変わりないが、問題は中に仕掛けがあるかどうか。
「えーと、まずは罠があるか識別かな。それから解錠になるけど
単独の罠なら犠牲は俺1人だけど周囲に広がるやつもあるから」
「ふーん、じゃぁ離れてた方がいいね」
アリッサや他の皆が距離を取っているのを確認した俺はピッキングと
呼ばれるツールを使い、罠の識別を行う為に鍵穴に入れて確認を始めた。
盗賊のデフォルトの罠解錠率は43パーセントで失敗率が高い。
識別とは別のスキル「下調べ」もあるが、駆け出しのシーフは
宝箱に聞き耳をあて、場当たり的に罠の識別を行わなければならず、
トラップが仕掛けられていると体感したので、あとは”運”まかせだ。
”鍵穴に聞き耳を立てるとピッキングの先にあたる感覚と
先輩との訓練を思い出し、この罠が吹き針である事を確信した”
「俺の感覚では針なんですけど、先輩はどうです?」
やはりここは経験豊富な先輩にお伺いを立てると、手馴れた様子で
ツールを鍵穴にブッこんでいく。石の彫刻に”真実の口”と呼ばれるモノが
あると聞いたけど、先輩なら迷わずゲボらせてくれるわっ、で肩まで入れそう。
※真実の口 イタリア・ローマにある石の彫刻 映画『ローマの休日』より。
「んー。おしいの、だいたいあってるけどな」
大体?大体って何だ。アバウトな感じ?なのかと考えながら鍵の解錠を
試みると、鍵穴からキラッと光るものが飛び出てきて首を掠っていった。
「おしいっ、あと数ミリで解錠できとったで!」
「いやいや、針が直撃しなかったから成功のはずですっ」
針をギリで交わした事で罠の解錠に成功と思っていた俺は先輩の言う意味が
分からず、言い返そうとしたら気分が悪くなり膝から崩れ落ちてしまった。
”飛び出す毒針かよ・・・そりゃぁあと数ミリのはずだッ”
掠った首に手を当てると意識が朦朧として来て、倒れる前に見えたのは
シンシアとジーンが駆け寄って来る姿。先輩とアリッサが箱の中身を確認
しようとして宝箱を開けている所。同じパーティーだよね、僕。
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。