古い洋館
登場人物
リシュ・レーン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン プリ盾姐さん
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー
ララ・ヘルミナ アデルちゃん
ジーン・トアロ 輩ウォリアー
マリア・ヴェルナーデ 螺旋階段
ジェフリー モヒカンロード
ルーファス 大剣メイジ
ティアナ 盛り髪修道士
リリィ ツン系魔法少女
ガルシア ヒゲ面
ウォーレン・ジーク シーフのマスター
パム・レーン 刀マニアの妹君
3階から着地するとすぐにクイックムーブを発動させてアンベルを追うが
相手は闇堕ち精霊、空を自由に飛びスピードも尋常な速さではなかった。
”どんだけ速いねん、あの蝶小悪魔っ娘”
リシュはリティアの装備品を武器メインで観察していたが、
リティアの防具装備はパラメーター重視で、主にDEXとAGIの値が高い。
通常、コンボ攻撃時のハードヒットと回避を考えての事で防御面を捨てている。
「もーっ、おっそいわねー、そんなんじゃ夜が明けちゃうぞー」
屋敷からどう走ってきたのかも分からない程にがむしゃらに
付いていったが、やはり離されていたリティアが高原の様な場所で
”おっそーい”と言っているアンベルが見えた。
「さ、さよか・・・これでも足の速さには自信あってんけどな」
クイックムーブの効果が切れて息も上がっているリティアが
アンベルと自分の居る場所を見回すと、森林の奥にうっすらと灯りが見える。
「もしかして、あの奥にある灯りかいな?その場所」
「そうだよ、ただ登りになるので人間にはキツいかもねー、あははっ」
アンベルの他人事でしかもバカにした言い方に
”その羽毟ったろーか、このっ生意気娘がっ”と心の中で呟くリティア
再度、クイックムーブを使う為にCT中になっているが
ここからその灯りまで通常に走ったとしたら10分以上はかかるだろう。
それに無法者達がどこかに潜んでいる可能性もある。
「なあ、アンベル、うちが姿消してもアンベルには見えるんかいの?」
「へ?あー、ムリ、見えない。アデルなら正面からだと見えるだろうけど
それってステルスとかいうスキルでしょ、たしか」
アデルが捕まっている洋館の様子を探る時にステルスを使用しようと
考えていたリティアはアンベルに視覚で捕らえれるか聞いてみたが、
どうやらアンベル自体にステルスを無効にするスキルはない様だ。
「なるほどの、まあ館にもっと近づいたら考えるわ」
「そう、じゃあ早く行こー」
アンベルを先頭にスキルを使用しないで走って森林の中に入ってみると
月の光で明るい事もあって獣道の様な何度も人が通った跡が残っている。
登り坂になってはいたが、緩やかであったのでリティア達は慎重に
歩を進めながらも目的の洋館を見つけ、付近に潜んで様子を伺った。
「なんか古い洋館やな、中は寂れて蜘蛛の巣とか凄そうや」
「そうでもなかったよ。まあ、あまり見てなかったけど
掃除はしてる感じだったなー」
ティアナの別邸とは違う造りで大きさも半分以下だが擬洋風建築という
造りで外壁は野ざらしだったせいか蔦で覆われて酷い有様だ。
”問題は中の状況やなー、外に見張りはおらん様だけど・・・”
「そうや、アンベル、館の中の状況を見て来てくれへんかな?
どんぐらい大人がおるとか、アデル達の居る場所とか」
「えー、何でー、めんどくさいし
あとはアンタ達でどうにかアデルを助けだせばいいじゃん」
本当に、この捻くれた蝶娘はアデルの使い魔なのだろうか
あまりに自由奔放過ぎて、使い魔というよりアデルと対等の様に見える。
”そういえば、この蝶娘、お菓子がどうとか言ってたの”
「な、なあ、アンベル。うちの言う通りの事をしてくれたら
もっと美味しいお菓子を沢山あげるで、それでどうや?」
「ほんとっ!どんなの?どんなの?さっき食べのも美味しかったなー」
「まあ、あれや、シンシアがくれたヤツより大きくて
ほっぺが落ちるほどあまーいお菓子やで」
アデルがシンシアからお菓子をいっぱい貰えるとアンベルに
言っていた事を思い出したリティアは、その話しをすると目を輝かせた
アンベルはどんなお菓子なのか興味津々のご様子で簡単に釣れそうだった。
「で、どうかの?ちゃんと館の状況を調べてきてくれるかの?」
「オッケー、そんなの簡単だよー、ちょっと待ってて」
お菓子で釣る作戦に引っ掛かったアンベルは館の方へ恐るべきスピードで
向かって、入り口とは別の隙間のある窓から中に入り込んで見えなくなった。
「あれでステルス持ちやったら、えげつない敵になりそうや」
リシュには言ってないが、リティアは過去にローグやステルス持ちの
モンスターと戦った事があり、その脅威は十分に理解している。
トーチライトがプリ固有スキルである為、それ以外でソロ活動する時には
聴覚だけが頼りになる、僅かな、忍び足の音さえ聞き逃さない様に。
ーアンベルが館に侵入して数分後ー
入り口の方を見ているリティアだが、灯りは燈っているが見張りなどの
気配がなく、無法者といってもギルドに属してない人間なのでは?と
館内にいる者たちのセキュリティ面の甘さに疑念を抱いていると
身近で風の揺らぎを感じて咄嗟にステルスを発動させ、木の影に隠れる。
「おーい、見てきたよー、何で姿消したのー」
「って、アンベルかいっ、急に風が揺らいだんで吃驚したんや
あの速さで近づいてきたら、もっと風があってもいいやろ?」
アンベルの声が聞こえて、安心したリティアはステルスを解除したが
あのスピードで戻って来たのなら風がもっとあってもいいのでは?
という疑問が頭を過ぎって、揺らいだだけなのに違和感があった。
「何だ、それは当然じゃない。私、風の精霊なんだから」
”へ?・・・いま風の精霊って言ったんか、この蝶娘が???”
風の精霊シルフ。四大精霊のうち、風を司る精霊でありメイジのサモナーが
主に召喚して使役する使い魔である、リティアが見た事のあるシルフとは
容姿が違い過ぎて、黒いアゲハ蝶の様な風貌なので精霊とは思えない。
「なによっ、何見てるの、風の精霊って言っても
アデルが召喚主なんだから、こーなったのも仕方ないでしょ」
「あははは、あ、いや、うちが見た事ある精霊と大分雰囲気が
違っていたんで、まあ・・・アデルって悪魔やってんな、そういえば」
”召喚主に似るモンなんか、うちが見たのはもっと大人びて言葉使いも
礼儀正しくて大きさも大分違うんやけど、どうなっとるんや召喚業界”
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。