座敷牢の中で
登場人物
リシュ・レーン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン プリ盾姐さん
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー
ララ・ヘルミナ アデルちゃん
ジーン・トアロ 輩ウォリアー
マリア・ヴェルナーデ 螺旋階段
ジェフリー モヒカンロード
ルーファス 大剣メイジ
ティアナ 盛り髪修道士
リリィ ツン系魔法少女
ガルシア ヒゲ面
ウォーレン・ジーク シーフのマスター
パム・レーン 刀マニアの妹君
座敷牢の中で気絶してしまったアデルちゃんの頭にはたんこぶが
出来ていてレニーが声をかけようとしたが、周りの子供達が動かさない方が
いいと言って布をバケツの様な桶で濡らして傷口を押える準備をしていた。
「レニーお兄ちゃん、この子さっき空中に浮いたよね?」
「ああ、どうやら魔法が使えるみたいだ
うまくゆけばここから出られるかも知れない」
年端もゆかない女の子数名が床に横たわっているアデルちゃんが
ついっき宙に浮いたのをレニーに言うと、おそらく魔法使いの少女じゃ
ないかと皆に話して、とりあえず頭に出来たたんこぶを冷やし始める。
◇
妙に冷たい感覚と痛みを感じていたララだが夢だろうと思っていたら
幼い子供達の声が聞こえてきたので、ふっと目が覚めると自分の周りに
本当に子供達が居て、驚いて起きたがそれと同時に頭に激痛も走った。
「こ、ここは何処?それにあなた達は???痛っっ」
「お兄ちゃん、この子、目を覚ましたよー」
「おー、良かったー、ぶつかった時にすげー音したんで
もしかしたら目覚めないのかもと思ったよ」
どうも頭が痛いと思ったらコブになっていて冷たい布が当てられている
事が分かったけど、どうも状況が分からない・・・。
覚えているのはシンシアが隣に居て足首にリボンを巻いて寝た事だったが、
周りには見知らぬ子供が数名いるし、部屋じゃなくて座敷牢になっている。
「お前、自分だけ逃げようとしただろ
そーはさせないから、魔法が使えるのなら協力してくれよ」
子供達の中で最年長っぽい少年が話しかけてきたが、
ララにはさっぱり何の事か分からずにいたけど、まさかアデルのせいじゃっ
”やっぱりっ、足首に巻いたはずのリボンがないっっ”
「おい、聞いているのか?もしかして強く打ち過ぎたんじゃ」
「はぁ・・・全くどうしようもないわね、あなた名前は?
どうして私がここに居るのか説明できる?」
「???お前・・・記憶喪失にでもなったのか?さっき話しただろ」
目の前にいる少年とまったく話しが噛み合わないので
ララは目を閉じてアデルから話しを聞こうとしたが全く反応がない。
”この頭のたんこぶ、もしかして気絶してるの、あいつっ!”
「そ、そうだったわね、でも頭を打ったせいか記憶が曖昧で
悪いのだけどもう一回説明してもらえない?」
「お前、なーんかさっきと様子が違うんだよなー
いいか、説明するけどまた逃げようとするなよ、約束だからな」
少年の名はレニーといい、アデルとは高原の草陰に隠れていた時に
出会ったが、そのせいで逃げていた無法者達に見つかってしまい
この館の座敷牢に入れられた。幼い子供達は人身売買の商売道具であり
孤児院から流されたきた子や借金のカタに売られたりしていて
特に孤児院は無法者と組んで子供達を流している本拠地と語っていた。
「そう、そうだったの、こんな幼い子達を・・・」
「まあでも悲観しててもしょーがないからさ
どうにか逃げて、人生前向きに生きたいんだよ」
この時のララは怒りを通り越して逆に冷静になっていた。
ヴァレンシアでは司教を束ねる大魔司教として騎士団の頂点に立ち
独立治安維持機構という組織をエストリアの各地方へ派遣するほど
犯罪者や無法者には厳しい姿勢を見せていたのだが
ティアナが治安の事を話した時に気になってはいたけど、リバーガーデンが
ここまでとは思っていなかった。そして魔力のない自分が・・・って
”そういえば、レニーは飛んでたと言っていたけど
アデルにも魔力はないはず、どうして飛行できたの”
「何ていうか、強い男の子ね
ここにいる子達はどのくらいココにいるの?」
たんこぶを冷やしてくれた少女を優しく撫でながら
ララはレニーにどのくらいの日数、この座敷牢に居るのか問いかけた。
「うーん、俺は3日目くらいかな
あいつらが館を掃除しろっていうので隙を見て逃げたんだ」
「なるほどね、だとすると余りココに居れる時間もなさそうね」
”う・・・くそっ、あの小僧めがっ、おもいっきり邪魔しおって”
日数からどのくらいで売買が行われているのか憶測を立て様としていると
気絶していたアデルちゃんが目覚めて毒づき始めた。
”あら、お目覚めかしら、また人が寝てる間に遊んでいた様ね”
”ラ、ララ、よく眠れたかの・・・”
アデルが気絶から覚めた事が分かったララはレニーや他の子たちに
気付かれない様に頭を押えながら布を濡らし直そうとバケツ桶の近くに
しゃがみ込んで目を閉じてアデルと意識内で会話を始める。
”此処に来た経緯はレニーから聞いたわ”
”・・・(アデルちゃんシカト中”
”別にその事で責めるつもりはないけど、あなた魔力が使えないはずよね?”
”・・・(アデルちゃんシカト中”
「ね、ねぇ、お兄ちゃん、あのおねーちゃん大丈夫かな
何かブツブツ言ってる気がするんだけど」
「うーん、やっぱり打ち所が悪かったんじゃないか」
子供達に背を向けてバケツ桶に布を入れて会話を誤魔化しているのだが
傍から見ている子供達は奇妙な感じに映っている様だ。
”だから怒らないから話しなさいっ、何故空中飛行が出来たの?”
”ほ、本当に怒らぬのだな、悪魔との約束だぞっ”
アデルは満月の夜にだけ、自分に理力と呼ばれる力が宿る事を説明し、
その力で散歩しようと夜の空を飛んでいたと白状した。
”理力って超能力の事でしょ、あなたそんな力を持つ事も出来るのね”
”べ、別に隠していたワケではないぞ、窓から満月が見えたのだ”
アデルが理力を宿せる事が分かったのは良いが、ララの中では
その力を使ってもこの座敷牢から全員を助けだせるのか未知数で
しかもその為にまたアデルに代わる事が不安だった。逃げようとしたらしいし
「困ったわね、どうにか外部と連絡が取れれば・・・」
「それはここからじゃムリだと思う、見てみろよ
窓はあれ以外ないし、しかも高い」
外部との連絡を考えたいたがレニーの言う様に、この座敷牢からでは
不可能だ。魔力がないので飛翔魔法フロウウイングは使えない。
言霊使いとも考えたがギルド内だとマリアにしか送れず、しかも遠い。
※フロウウイング メイジのスキルで浮遊する事が出来る。
スキルレベルが上がるにつれスピードも上昇し
飛翔する事も可能だが浮遊中は継続して魔力を消費する。
”何じゃ、シンシアの所へ連絡を取りたいなら使い魔があるではないか”
”それが出来れば苦労しないわよ、あれだって魔力を消費するんだから”
ララの思考を読んでいたアデルは外部と連絡が取りたいなら
使い魔を送ればいいと言ったが、ララはそれも魔力が必要でムリと判断した。
”しょうがない、こうなったのもワシが散歩道を間違えたせいでもあるからな
理力を魔力に変換すれば、ワシの使い魔をシンシアへ送れるぞ”
「本当っ?そんな事ができるの?」
アデルの意外な提案と魔力を使ってシンシアの所へ使い魔を送れる事に
ララは驚いて声を上げてしまったらレニー達の視線が何故か痛い。
独り言を呟いたり、突然大声を出す危ない女の子と思われているのかも
”まあ、多少性格に難のあるヤツだが、ワシの使い魔では一番賢い”
それを聞いて、止め処ない不安が過ぎったララだが
いまはアデルの案に乗って使い魔をシンシアへ届けれる事に賭けた。
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。